第9話
「……答える必要がありますか?」
俺はアリステルの回答に、ほぼ直感的にアリステルの保有する属性を確信していた。
パーティメンバーの中に、希少属性『太陽』『時間』、そして勇者属性である『黒白』がいる俺たちの前で、属性を隠す理由はただ一つ。
希少属性中の希少属性。すべての属性の上位に位置する属性。
「『根源』」
「……!」
「それが、あなたの属性ですね?」
アリステルが、秘密が見つかった子供のような表情になる。
「だからこそ、あなたはそこまでの覚悟を固めている……違いますか?」
「…………」
黙り込んで俯くアリステル。俺にはその姿が、駄々っ子のように見えた。
「新しい生き方を用意できるか、と聞きましたね?あなたがその特異な力を使う意思があるのであれば……我々の旅に、ついてきてください。あなたの力が必要です」
「…………」
「あなたの特異な力は政治の世界では無用の長物かもしれないが……俺たちの世界では、強力な武器です」
アリステルがはっと顔を上げる。
日々政治で無力感に苛まれていたであろう彼女にとって、自らの力が通ずるというのは強く惹かれる言葉なようだ。
俺はアリステルに手を差し伸べる。
「共に、来ていただけませんか?」
アリステルは王女のしるしであるティアラを外すとしばしそれを見つめ、床に投げ捨てる。からんからん、と乾いた音をたててティアラは転がると、さかさまになって床に倒れた。
「……口車に乗りましょう」
アリステルはそう言って俺の手を取る。
たおやかな手が俺の手をぎゅっと握った。
と、つかの間のすきを狙うように、ドオンと音を立てて部屋の壁が破壊される。
「シュン!」
アイリスがアリスごと俺を壁から退避させる。
煙が晴れると、そこには剣呑な目つきでこちらをにらむ勇者御一行様がいた。
「……誰かはわからないが……この王城に残っているということは、体制派か。その王女を渡してもらおう」
そう居丈高に言う、一行の先頭に立つ金髪の少年……『勇者』。
「悪いが、拒否させてもらう。何せ……反体制派なんでな」
俺は『心装』を抜き身のまま構える。
まさか反抗されるとは思っていなかったのか、勇者の顔が共学に染まり、やがて怒りに代わる。
「お前はこの城下町の状況を見ても何も思わなかったのか?人々は暗い顔をして、笑い声の一つもない。街は荒れ果てて汚れている!」
「お前こそ、後ろの景色が見えないのか?人々は躯に代わり、町は炎に包まれている陰鬱な景色が?」
「それは……!」
俺は勇者の目をしっかりと見て断じる。
「たとえお前が正しかったとしても……外から来た俺たちに、その正義を振りかざす権利はどこにもない」
サンから若干冷たい視線を感じるが、アリステルがいなくなったところで革命の趨勢には対して影響はないはずなのでノーカンだ。
「というわけで、勇者様。ここはお引き取りを」
「……力で解決するしかなさそうだな」
勇者はそう言って虚空から剣を召喚すると構える。
おそらく、あれが聖剣だろう。
「いくぞ、みんな」
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