第11話「無職転生」は実は転生ではなかった件

 なろう版で『無職転生』を最後まで読んで、その壮大な構想と巧みな世界観設定にうたれるのと同時に、分かってきたことがあります。

 はっきりしないのですが、どうやら主人公ルーディウスの転生は、過去へのタイムトラベル+転移らしいのです。


 物語の中盤、シルフィー、ロキシー、エリスと三人の妻を得てご満悦のルーディウスの前に、未来からの自分自身が出現します。

 年老いていますが確かに未来のルーディウスです。タイムトラベルの魔法を開発し、重大な危険を知らせに過去に戻ってきたのです。

 そして、ヒトガミの夢のお告げ通りにすると子孫を失うことになると警告して、息絶えます。魔力不足で、体の半分を未来に残してきてしまったからです。

 また、それまでヒトガミの暗示で敵視してきた龍神オルステッドこそ味方で、ルーデウスの子孫の協力を得て、ヒトガミによる世界破壊の企みを打ち砕くことになることも、わかったことでした。


 オルステッドによると、ルーディウス・グレイラットというこの世界での存在は、元のグレイラット家のルーディウスが死産になるところを、前の世界での34歳引きこもり男が事故死した瞬間に、異世界転移(召喚術と同じ原理で作動)と未来からのタイムトラベルとの複合術によって、魂だけが送り込まれたらしいのです。


 第4話で、『異世界薬局』の例をあげて、実は「転生」でなく、落雷によって子どもの魂が死ぬのと同時に、異世界から別の魂が転移してきたのだから、厳密には「憑依」というべき、と述べました。

 憑依とは、同じ身体で起こる、魂の入れ替わりです。

 同じ設定が、他にも、例えば『凶乱令嬢ニア・リストン 病弱令嬢に転生した神殺しの武人の華麗なる無双録』(南野朝風原作)にも見られます。

 これは異世界転生ではなく、同世界転生・転ものですが。

 死にかけている4歳の貴族令嬢を救うべく呼ばれた魔術師が、反魂の法を使って死んだばかりの武人の魂を入れて生き返らせる、というものです。


 それにしても、どうして「過去世の記憶を携えて転生した」というシンプルな設定の転生にせず、わざわざ「本来の体の持ち主である魂が死んで代わりに他人の魂が入り込んだ」という憑依型の転生にしてしまうのでしょうか。

 その謎は、次回に解き明かすことにします。


 

 

 

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