第29話 人


 足立区からも橋が落とされていて通れなかったのでまた回り道だな。

 とりあえず川沿いに沿って上がっていくとようやく荒川を渡れる橋があり板橋区に入った。

 街は閑散としているがモンスターはいるな。

 とりあえず夜になったので道路の真ん中に車を出して交代で見張をしながら夜を明かす。

「起きて!誰か来た!」

「ん、ん!誰だ!」

「す、すまないが何か食い物を持っていないか?」

「人にやれるほどないぞ?」

「な、ならその女でも」

「お前は何言ってんだ?」

 アキラも起きて戦闘体制になる。

「い、いいだろ!こんな時なんだ!飯か女が寄越せよ!」

「ふざけんなっつーの!」

「いだぁ!」

 暗くてよくわからなかったが、警察か?

「お、お前らこの服見てもなにかわからないのか!」

「とりあえず警察も信用できないんだな」

「ふ、ふざけるな!これは公務執行妨害だぞ」

「いやいや、そうはならないよ」

「は?」

「お前はここで死ぬんだからな!」

「や、やめてくれ!死にたくない!」

「お前はなんなんだ?警察か?」

「…」

「おい!聞いてんだろ!」

「警官が死んでたから服をもらっただけだ」

 と男の顔を見てみれば血が固まっている。返り血か?

「何人殺した?」

「ち、違う!殺してない!」

「じゃあなんで返り血でそんなになってるんだ?」

「チッ!くそっ!撃つぞあぁあぁ!」

「撃つぞって言ってから撃ってたら間に合わないだろ?バカだな」

「いでぇぇええ」

 腕を斬り落としたんだからさぞや痛いだろうな。

「この拳銃空っぽだ」

 とアキラが言っている。

「はぁ、1人は絶対殺してるな」

「まぁいいや、もう悪さできないだろ」

 ヒールを唱えると傷が塞がる。

「お、俺の腕が!」

「ないな。お前はそれで暮らせよ」

「く!くそっ!覚えとけよ!」

「もう忘れるよ」


 なんかここら辺荒れてるな。昼間は閑散としたとこだと思ったのにな。


 朝になり簡単な食事で済ますと原付で動く。

「あっちに沢山の人がいるけど?」

「だな。いってみるか」

 ビルの中に人が沢山いる気配がする。

 バリケードはないな。

 中に入ってみると皆が必死に拝んでいるのは男だ。

 ここは宗教みたいだな。


 はぁ、弱い心に漬け込んでみんなは助けを求めてるんだろうな。

「なんですかあなた方は?入神のかたですか?」

「いや、俺は神は信じてるがこれじゃないからな」

「そうですか」

「帰るぞ!」

「きええぇぇぇ!」

“ザン”

 ナイフを持った女が襲ってきたので腕を落とした。

「あがががが」

「こえぇよ」

「さっさと抜けるぞ」

「ちょっと待ってよ」

 と言って外に出る。


 窓からみんなが見ているので恐怖だな。


 ここは早く出て行こう、宗教に入ってる人間をまともに戻すのは俺には無理だ。


 他にもいくつか回ってみるとそのほかの支部だな。流石に気持ちが悪いので進むことにした。

 254を走っていけば東京の方に行けるだろうと走っていくとモンスターが多くなってきたので一度Uターンする。

 流石にあれだけの数を相手にどこまで続くかも分からないのは厳しいな。

 またマップを頼りにルートを決める。

 下に向かって走ってみる。

 あのモンスターはどこからきているのかだがダンジョンが近くにあるのか?

 

 一応回る様に走るとなんとか抜けた様でビルを横目に走っているとSOSの字が目に入った。止まってみると何やら叫んでいる。

 しょうがないので行ってみるとバリケードにモンスターがウヨウヨしているな。

「サンダーインパクト」

『グギャ』

 潰れて消滅していく。

 こっちに気付いたモンスターを3人で倒していく。

 片付いたのでバリケード越しに大丈夫かを聞いてみる。

 バリケードが少し開くと、女の人が抱きついてきた。

「あ、ありがとうございます」

 と出て来るのは女だらけで男がいないな。


「ありがとうございます。私はこの会社の社長で笹目雪ササメユキと言います。どうお礼を言っていいか」

「気にするな、別に通りがかっただけだ」

「これだけ女ばっかだと困っただろ?」

 とアキラが言うと、

「そうなんです。バリケードもなんとか作って」

「そうか、みんな飯は食べてるのか?」

「一応非常食はあったのですがもうないです」

「電気は通ってるのか?」

「はい、なぜか電気は通ってますが」

「なら炊飯器に米と肉と…」

 と出していき、

「これでまず腹一杯食べれるだろう」

「ど、どこからこんなに出したんですか?あ、もしかしてラジオで言っていた不思議な力ですか?」

「聞いていたなら話が早いな。そうだ、飯を食ったらダンジョンに行こう。俺らが連れていくから」

「はい!さぁ、みんな動くわよ!」

「「「「はい」」」」

 と言ってご飯を炊いてカレーを作っている様だ。

 俺たちは外にいて缶コーヒーを飲みながらこの街を見ている。

「うーん、人が少ないなぁ」

「だねー、ビルの中にポツンポツンって感じだけどどうなってんだ?」

「そうなの?このビルみたいにバリケードしてるみたいだけど」

「もしかしたらラジオを聴いてダンジョンに行ってくれてればいいんだがな」

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