第14話 ビル


「じゃあな」

「うん!」

「あの!ありがとうございます」

 男の子と手を繋いでいる少し痩せた男は顔が優しくなっていた。

「しっかりな!」

 とまた原付で走り出す。

 少しの余裕があれば人は人に優しくできるのだから。

「ラーメン食いたくねぇ?」

「ハハッ、食いたいな、どっかでお湯を沸かそうか」

「だな!」

 と走って行き適当なところでお湯を沸かしカップ麺を啜る。

「あー、沁みるわぁ」

「だな、久しぶりに食うと美味いな」

 たったこれだけのことだ。それだけで心が満たされる。

「よし!ごっそさん」

「早いな、もうちょっとかかるぞ」

「いいよ、ゆっくり食いなよ」

「おう!」

 陰になっている場所だが暑いのには変わりない、風が吹いてるのできもちはいいけど、やっぱり暑いな。

 

 ラーメンを食い終わるとまた東京に向けて進む。

 

 小一時間進むとアキラから、

「誰か来る!」

 と声がかかる。

「止まろうか」

「おう」

 と待っていると横のビルから男が走って出てきて俺らにビックリしていた。

「た、助けて下さい」

「何があったんだ?」

「豚、化け物に追われて、ひ、ひぃ」

 と出てきたのはオーク。

「オラァ!」

 ドロップになって消える。


「何でこんなところに?」

「いまいるコミュニティが食糧難で探しに出かけたのですが1人はぐれてしまって」

「そうか、そのコミュニティは近いのか?」

「は、はい」

「なら送って行こう」

「あ、ありがとうございます」

 と言う男の顔がニヤリとしたのを見逃すことはない。


 着いて行くとあるビルに入って行く。

「着きました。ちょっと待っててください」

 と中に入って行く男。

「戦闘になるな」

「そうだな、本当嫌になる」

「どれくらいいそうだ?」

「20人くらいかな?」

 と喋ってると出てきたのは武装した集団だった。

「よぉ!そのバイクを置いていけ、後食料とその剣もな!」

「だろうと思ったよ」

「あ?」

「サンダーショック」

「「「アババババ」」」

「な!」

「お前はこっち!オラ!」

 制圧は簡単だった。

 縄で縛って動けないようにする。武器も奪って収納。

 中に入ると、女が3人裸でいたので服を渡してやる。

「こ、この!ひとでなし!」

「殺してやる!」

 と殴る蹴るを繰り返している。


 中を探ると食料があったのでそれを収納に入れて奥に入って行くと。

「なんだおまえら」

「親玉発見ってか!」

 扉にかかっている拳銃に手をかけようとしたのでサンダーショックで動けなくして縄で縛る。

 拳銃は収納に入れる?

「もう1人追加だ」

 女達は棒を持って殴っていたので死んでる奴もいるかもな。

 親玉のスペースにあるものを探り武器になるようなものを収納して行く。

 外に出ると女も疲れたようで息を荒くして膝をついている。

「少しは落ち着いたか?」

「は、はい、ありがとうございます」

「いや。こいつらはそれだけのことをしたのだろうからな」

 ボコボコになって動かない男たち。

 まぁこのままでいいだろう。

「ここら辺はモンスターがくるのか?」

「はい、来ます」

「ならあとはそいつらに任せればいい、どっちから来るかわかるか?」

「あっちから」

「なら行くぞ」

「え?」

 女はびっくりしたようだが、

「お前たちを戦えるようにしてやるから」

「は、はい」

 と言ってモンスターのいる方へ歩いて行くと、ゴブリンが徘徊していた。

 倒していきビルの間にあるダンジョンを見つけると、

「後ろにいろよ?で着いてきて」

「はい!」

 と言ってダンジョンの中に入って行くと石造のダンジョンだ。中に入って倒しながら進むと石碑を見つける。

「これに触って」

「はい!」

 と3人が触るのを見届けると、

「私は剣術です!」

「私は槍術」

「回復魔法でした」

 と3人が言う。

「なら武器を渡すから3人でゴブリンを倒してみて」

 と武器を渡す。

 女の方が強いと言うがあんな状況にあったのに今はイキイキとモンスターを倒している。

「あ、扉が」

「その奥は俺らがやろう」

「だな」

 扉を入るとホブゴブリンなのですぐに終わる。剣をドロップしたので渡した剣と交換してやる。2階層はオークだ。

 最初に倒し方を教え、また戦ってもらう。

 肉を落としたので食べれることを教えると持って行こうとするので普通のバッグを三人に渡して中に入れてまた倒して行く。レベルが10になったようで回復魔法の子も剣術を覚えたらしい。剣は渡してあるのでこれで問題ないだろう。

 夕方までレベル上げをしてビルに戻る。

「あ、あのこんなにしていただいてありがとうございます」

「いいよ、これからが大変だから頑張れよ!」

「はい!」

 と言って別れようとすると着いてこようとするので、

「俺らは今からまた旅しながらこの方法を教えて回るから、お前達はさっきみたいな奴らに捕まらないようにして、同じような境遇の人たちに教えてあげてほしい」

「でもお礼もしていないので」

「いい、体は大事にしろ」

「はい!あ、あの連絡先だけでも」

「わかった」

 と連絡先を教えておく。

 空きビルは沢山あるので大丈夫だろう。


 男達がそのあとどうなったのかは知らない。

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