ダンジョン原付旅

あに

第1話 覚醒


「うおっ!やばいやばい!」

 俺が住んでる地区に地震が突然やってきた。スマホのアラートが鳴り響く中、俺はなんとかテーブルの下に避難する。

 すると床が無くなり俺は落下した。


「いててて、マジかよ…」

 真っ暗の中スマホのライトで照らすが、ここがどこなのかわからない。

 いやいや地下空洞なんかあったらまずいでしょ?アパートに帰ったら慰謝料貰わなきゃな!


 にしてもどこだよここ?体感的に結構落ちたぞ?

 今は夏なのに少し肌寒い。

 先の方に光る物があるのでフラフラと寄って行くと光る球体だった。

 台座がしっかりあって、その上に乗っている。

 触ってみるとようやくこれがなんなのか分かった。


 ダンジョンコアというもので脳内に情報が流れ込んでくる。


「ぐぅっ!なんだこれ!」


 俺の頭は割れそうに痛いのだが手が引っ付いて離れない。そのまま膝をつき台座にしがみつくように我慢していると、ようやく頭が痛いのが遠のいて行く。

『始まりのダンジョン突破者1人目、これよりボーナススキルを与えます』

「な、なんだよ!」

 頭がまた激しく痛みだし、ボーナススキルとやらが入ってくる。


「…ぐ、ググ」

 この頭の痛みが尋常じゃない。

 痛い痛い痛い痛い…

 

 冷や汗を垂らしながら痛みに耐える。

 ようやく痛みがなくなりふっと体の力が抜けた。

 すると球体から手は離れてその場に座り込む。

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、」

 なんなんだよ一体、って分かったけどこれはないだろ!


 汗を手で拭いもう一度触れると、

『出口に出ますか?』

「…はい」

 ダンジョンコアは消えてしまった。

 そしてようやく外に出られた俺は外の変わりようにゲンナリしてしまうのだった。


 電信柱はあっちこっち向いておりなんとか電線は切れていないが、道路は陥没したり隆起したりしている。家も倒壊してるところすらあり、ここが元の俺が住んでいた街なのかと言う実感が湧かない。


「こりゃ、やばいだろ」

 とりあえず裸足でいる事もあり、家に帰ろうとするがここがどこかわからない。


「あ、ここか」

 近くのコンビニがあったのでようやくここがどこだか分かった。


 歩いてアパートまで帰る途中で車が事故っていたりしたが、俺も助けて欲しい方なのでガン無視で突っ切って行く。

 ようやくアパートに着くとなんとか持ち堪えているので今のうちに部屋にあるものを持ち出さないといけない!


 一階の自室に入ろうとするが鍵をかけているのを忘れていた。

「げっ!まじかよ!…しゃーないか!」

 ベランダ側に回るとガラスを石で割って鍵を開けると中に入る。


 とりあえず着替えると財布とスマホ、家の鍵には車と原付の鍵もついているのでそれをポケットにしまう。それからバッグに食べ物を入れてタオルやら入れて行くが、途中で思ったがスキルが使えるのか?


「収納」


「おぉ!」

 冷蔵庫ごと消えた。

 頭の中には入っていることがわかるのでサッサと家のものを収納して行く。

 収納し終えたら外に出て車を収納し、原付で近くのコンビニに行く。

 ここは千葉の片田舎なのでコンビニの駐車場が広くて助かるな。


 もう親もいない俺みたいなオッサンはこれからどうするべきかな?会社が休みの日でよかったが、会社潰れんじゃねーか?

 それにしてもスキルってのはいいもんだが、何をどうしたもんか?


 

 まぁ、後でいいかとスマホをしまいヘルメットを取ってコンビニに入ると、ここも大惨事だったみたいだな。

「い、いらっしゃいませ、すみませんが今は」

 と店員の子と店長らしき人が2人で陳列している。床に散乱しているのはもうダメだろうな。

「あぁ、分かったよ」

「申し訳ありません」

 と外に出て自販機のあるところに行くかと、原付を走らせる。

 自販機はやっていたのでアイスコーヒーを買い、飲みながら街の景色を眺める。


「…こりゃ大変だな」


 時計を見てみると昼の2時だな。

「…さてこれからどうするかな?」


 とりあえず避難場所に行ってみるか?

 いや、混雑してそうだし行ってもな。


『グギャ』

 えっ?緑の体で子供みたいな…ゴブリン?

『グギャアアァァァ!』

 とりあえず飲んでた缶を投げつけると剣を取り落としたのでそれを掴むと斬り倒す。

 今までいたゴブリンが消滅して黒い石のようなものを残して消えた。剣はそのまま俺が持っている。

「は?へ?なんだったんだ今の?」


 ゴブリンだったよな?しかも剣を持って襲ってきた!夢じゃないからやっぱあのダンジョン?


 と今度は豚頭の二足歩行はオークか?いやいややばいでしょ?

 ってこっちに気付くの早いよ!

 逃げるが追いつかれそうになるので立ち止まって迎え撃つ!

 あっちは棍棒を振り下ろそうとしているので避けて腹を斬り首を落とすと消滅したが剣が壊れた。

「えー、剣弱いよ!」

 棍棒が落ちていたので棍棒を持つとこれがまた重い。石も落ちていたのでそれも一緒に収納に入れる。

 今のうちに、ステータス!

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 米本 夏ヨネモト ナツ 42歳

 レベル2

 職業 冒険者

 スキル 剣術極

 ユニーク 収納 幸運

 称号 ダンジョン攻略第1号

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 スキルの剣術極って、俺は剣なんか触ったこともないのにな。さっきはしょうがないけど。

 しかも第一号ってホームランじゃあるまいし。

 それよりこれからどうすんだよ?

「キャアァァァァ」

「あぁ、こりゃ本格的にやばいな!」

 原付を出してエンジンをかけるとその声の方に向かう。

「ゴブリンじゃないか!ウオォ!」

 “ドンッ”っと追突するとまた剣を落としたのでそれを拾ってトドメを刺しにいく。

「は、はぁ、無事?」

「は、はい!」

 って、さっきのコンビニの子か。

「あれ?コンビニは?」

「さ、さっきので時間がかかるからって言われたので帰ることになりました」

「そうか、そりゃそうか」

 

 一体どうなってんだ?

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