義妹になつかれすぎている俺。彼女が出来たとウソをついたら激しく病んだ。

かなたろー

第1話 俺、義妹に彼女ができたとウソをついた。

 キーンコーンカーンコーン!


  学校のチャイムが鳴ると、俺は大急ぎで教室を出る。

 俺の名前は、壬生みぶ流斗りゅうと、これといった特徴もない、一般ピープルだ。


 一般ピープルの俺は、全力疾走で下駄箱に向かう。今日こそひとりで家に帰るんだ。けれど。


「はぁはぁ……おにぃ! 偶然だね一緒に帰ろ! はぁはぁ」


 俺の下駄箱の前で、絶世の美少女が、偶然をよそおって息を切らして立ちふさがっている。

 義妹のリコだ。


「はぁはぁ……ねぇ、いいでしょ?」

「……わかったよ」

「わぁい! やったぁ!!」


 俺が、しぶしぶと承諾すると、リコは満面の笑顔で俺の腕に絡みついてくる。リコの程よく膨らんだ胸のやわらかな感触が腕伝いにつたわる。


 リコと兄妹になったのは今から一ヶ月まえ、父親が再婚をしてからだ。

 新しいお母さんは、ルーマニア国籍で、超がつくほどの美人さんだ。

 そして美人の母親をもつリコも、超がつくくらいの美少女だ。


 サラサラの腰まであるブロンド、透き通るような白い肌。二重でちょっとだけツリ目の青い瞳。ハーフだからだろう、彫りが浅くて主張しない鼻と、つややかなくちびる。

 スラリと伸びた手足と、程よいくびれのあるスタイル。

 一分のスキもない、完璧の美少女だ。


 リコが転向してきて一ヶ月、我が校の並み居るイケメンが告白を挑むも玉砕をつづけていた。

 

「ねぇねぇ……おにぃ! 今日は何を食べたい?」

「別になんでもいいよ」

「もぅー、そんなの作りがいがないよ!!」


 結婚してすぐ、両親は長い長いハネムーンに旅立った。写真家である親父とジャーナリストである母さんの仕事を兼ねた世界周遊は、再来月までに及ぶらしい。


 そんなもんで、家に帰るとリコとふたりっきり。俺へのイチャつきも、日を追うごとにエスカレートをしている。


「そうだ、一緒にお風呂入らない?」

「な、ななななんでだよ!!」

「だってぇ、ふたりで入れば水道代とガス代が浮くでしょ?」

「いやいやいやいや、いくらなんでもそれはマズイって!」

「えー」


 リコは上目遣いでふくれっつらをする。

 ぐ……か、かわいいじゃないか!!


 危うく意識を持っていかれそうになるが、俺はぐっと堪える。

 両親がハネムーンから帰ってきたら、子ども同士が付き合ってました。だなんて、

親父に何をいわれるかわからない。


「ねぇ、おにぃ」

「なんだ?」

「うふふ、だーいすき! リコ、おにぃのお願いなら何でも聞くからね♪」


 ぐ……かわいい。可愛すぎる。

 って、ダメだダメだ!!

 このまま誘惑され続けたら、俺は近いうちに絶対に超えてはいけない壁をこえてしまいそうだ!!


 なにかいい手は……そうだ!!


 彼女いるってリコに告白するのはどうだ??

 もちろん、本当は彼女なんていないけれど、 そうウソをつけば、リコもここまでベタベタしてこないだろう。

 よーし、善は急げだ!!


 俺はウデに絡みついたリコを強引にひきはがすと、真正面からリコを見つめる。


「リコ! 大事な話がある!!」

「え? なに、なに??」

「実はさ、俺、彼女ができたんだ」

「……え?」


 リコの顔が、みるみると青ざめていく。ぐ……めっちゃ罪悪感。

 でもこれは、リコのためでもあるんだ。俺は心を鬼にして話をつづける。


「だ、だからさ、人前でベタベタするの、もうヤメにしてくれないか。か、彼女に申し訳ないから」

「……………………………………………………うん……わかった」


 リコは、うつむくと、ちいさくちいさくうなづいた。

 ほっ、なんとか信じてくれたようだ。これでもう、リコが甘えてくる事はないだろう。


 そう思っていた。でも、リコの愛の重さは、俺のはるか斜め、いやいや、直角90度上をいくものだったんだ。



■次回予告

 おにぃの彼女いました宣言に激しく落ち込むリコ。

 相手は一体何者か!? リコはこっそり流斗りゅうとを見張ることに……。

 お楽しみに!!


――――――――――――――――――――――――――――


 最後までお読みいただきありがとうございます。ずっと書きたかった義理の妹モノに挑戦です。お話を考えていたら、なぜだかヤンデレっぽくなりそうですが……。

 少しでも「おもしろそうだな」と思われましたら、フォローや★★★のご評価をいただけますと幸いです。執筆の励みになります!!


 よろしくお願いいたします。

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