白き塔の守り人と少女ハルカの物語
せいじぃ
第一章:白い塔と少女
天を突くように聳え立つ「白い塔」は、雲の海に浮かぶ孤島のようだった。
その姿は、まるで神々の住む領域へと続く梯子のようであり。塔は、その純白の壁に太陽の光を受け、水晶のようにきらめきを放っている。
その光は、ただの輝きではなく、何世紀にもわたる時の流れを経てもなお、変わらぬ美しさを保ち続ける塔の、静かなる力強さと哀愁を映し出しているようだった。
塔の遙下方には、かつて栄えたであろう街の廃墟が広がっている。その姿は、今では雲の向こうにぼんやりとした影を残すのみ。かつての賑わいや活気は、今や塔の静寂と対比され、過ぎ去った時代の物語を語っている。
「白い塔」は、その荘厳さと美しさで、かつての栄光を静かに物語っているかのようだった。
塔は上に行くほど細くなり、その頂点は天を突き刺す剣のように力強くそびえ立っている。
その塔の唯一の住人は、12歳の少女ハルカ。
彼女の髪は夜空のように深い漆黒の色をしており、塔に吹き抜ける風になびく。
その瞳は、星のように輝く明るい藍色をしており、好奇心に満ちた眼差しで世界を見つめている。
肌は、まるで塔の壁と一体化しているかのように白く透き通っている。
彼女の世界は、この塔と、マザーと呼ばれる見えない声だけの存在。
マザーの声は常に優しく、塔のどこにいても語りかけ知識と教育を与えてくれる。
しかし、ハルカは自分の存在とこの塔の意味に疑問を抱えていた。
毎日、塔の窓から眺める世界は雲に覆われ地面は見えない。
彼女には、塔の外に何があるのか、どんな生命が息づいているのか、知る由もない。
時折見せる寂しげな表情は、彼女が抱える深い孤独と、外の世界への憧れを物語っている。
マザーは言う、「世界は滅び、今存在するのは君一人だけだ」と。
塔の眼下に広がる雲に隠れ、微かに見える廃墟と化した街並みを見ながらも、ハルカはその言葉を信じきれずにいた。
いや、信じたくなかったのだ。
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