山の神グレーマン

乙島 倫

第1話 洞穴暮らし

 気が付くと私は洞穴の中で暮らしていた。

 洞穴の中には電気、ガス、インターネットどころか、トイレも風呂すらなかったが、意外と快適であった。いつ頃からはわからないが、私にも家族がいた。

 妻との間にはたくさんの子供ができていて、家族を養うために洞穴の外に出て食料を調達するのが私の役目だった。

 洞穴から出ると、そこはいきなり断崖絶壁であった。山はほぼ地面に垂直に立っていたのだ。その山肌を慎重に降りると、やわらかい地面にたどり着くことができた。

 その岩山は、遠くまで何個もの山が連なって山脈となっていた。

 私は、その山と山の間の谷間に行き、辺りを見渡した。あった。食料だ。

 今日の食料は『どうやら』肉のようだ。なぜ、『どうやら』というかというと、私が見つけることができる食料は、だいたい原形をとどめておらず、腐敗しかかったものがほとんどだからだ。腐敗していたとしても関係ない。これしか手に入らないからである。

 私はこの腐敗した肉の塊を手にすると、また、家族の待つ洞穴へと戻っていった。

 私たち家族の生活に余裕はあまりなかったが、それでも私たちは幸せだった。

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