第9話 最高に幸せ
「美沙姉、本当にゴメン!」
「気にしないで良いわ」
美沙姉は笑顔で返してくれるけど……凄く無茶な事をしたのが解る。
良く考えたら、白い長襦袢を着て枕元に懐刀が置いてあった時点で気がつくべきだったんだ。
美沙姉も、経験がないって事に……
シーツについた赤いシミを見ながら自己嫌悪に陥っていた。
だけど、なんでだか解らない。
俺はこの目で美沙姉が抱かれているのを見た。
どう言う事なのだろう。
「え~と」
「この際だから、嫌な事も全部話した方が良いよね……」
「ごめん、無理して話さないでも良い……」
「ううん、こう言う事はちゃんと話しておいた方が良いと思うの、私は権蔵さんに抱かれていたのは本当……おもちゃのように扱われていたのは本当だわ……それは和也くんも見たでしょう」
「うっうん」
確かにこの目で見てショックを受けたんだ。
「殆どの厭らしい事は経験したわ。だけど、最後の一線だけは越えてないの。ううん、越えられなかったのが正しいのかな」
「どう言う事?」
「あのね、別れたからこそ言えるけど権蔵さんはインポ、不能だったのよ。やりたくても、やれない体だったの」
「そうだったんだ」
良かった。
美沙姉は汚れていなかったんだ。
「うん、だけどオモチャの様に扱われていたのは事実よ……最後の一線は越えて無かったけど、私の体には触られていない場所は無いし、逆に権蔵さんの体で私が触れて無い場所は無い位、厭らしいことも散々させられていたわ……だから私の体は決して綺麗じゃない。本当に和也くんは……それで良いの……私でよいの?」
「俺はそれでも美沙姉が良い。美沙姉以外は考えられない」
「そう……良かった。もし受け入れて貰えなかったら短刀で喉をついて死のうと思っていたの。ありがとう和也くん、私を受け入れてくれて」
大好きな美沙姉に死なれたらきっと俺は生きていけない……
「だって、俺は美沙姉が大好きだから、そんなの気にならないよ」
「そう、凄く嬉しいわ! ところで和也くんはいつまで美沙姉って呼ぶのかな? 夫婦になるなら美沙って呼んで欲しいわ」
「美沙……これで良い? だったら俺も和也君じゃ無くて和也って呼んで欲しい」
「和也……これで良いかな? なんだか恥ずかしいわ」
「うん、美沙」
「なぁに、和也」
今迄頑張って良かった。
まさか、こんな日が来るなんて思わなかった。
美沙が俺の横で微笑んでくれている。
それだけで凄く幸せに思えるんだ。
「美沙姉にそう呼んで貰って」
「和也……美沙姉になっているよ」
「美沙」
「和也」
やはり俺は美沙しか愛せなかったのかも知れない。
芽瑠といても、他のどんな女性と居てもこんなに楽しく感じたことは無かった。
「美沙、愛している」
「私も」
生きていて良かった。
人生で一番幸せだ。
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