親友に恋人を奪われた俺は、姉の様に思っていた親友の父親の後妻を貰う事にしました。
石のやっさん
第1話 此処は異世界じゃないよ、村だからね......
村の権力者の息子古馬正一が嫌な笑顔で俺に言ってきた。
「悪い、全員俺の女だ。親友」
「そうか、まぁ良いや」
正一とは幼なじみだが『いつかはやらかすだろうな』位は何となく思っていたんだ。
「親友」確かに、俺もそう思っていたが、此奴にはどうしようもない悪い癖がある。
それが父親譲りの女癖の悪さだ。
隣の村の裕福な豪農で、メロン農家の娘、東条芽瑠(とうじょう める)
隣の村の網元であり、南条水産の社長の二女 南条真理愛(なんじょうまりあ)
逆となり村の村長の娘 北条 恵子(ほうじょうけいこ)
この地域は閉鎖された地域で、嫁を貰うのは近隣の者から貰うという風習が色濃く残っている。
また、村社会のせいか、歳が離れた嫁を貰うと近隣の年寄りが口だしをしてくる。
若い子を嫁に貰えば『あんな若い子を嫁に貰うなんて』逆に年上を嫁に貰えば『あんな年上の嫁を貰って』と陰口を叩きまくる。
そんな昔からの風習が色濃く残っている。
かなり、閉鎖的な場所だ。
正一は村の権力者権蔵、古馬権蔵の息子だから、やりたい放題だ。
ちなみに俺こと今泉和也の家も『今泉家』という古くからある家柄ではあるが、元から古馬家の分家。 両親が死んで俺が当主であるが、農業から離れ、今では4店舗のスーパーを経営している。
正一は基本そんなに悪い奴じゃない。
村と言う中で考えたらそこそこ優秀だ。
だが、本当に致命的な欠陥がある。
それはさっきも語ったように『女癖の悪さ』だ。
尤もこれは正一だけじゃない。
親の権蔵からして古馬家の人間は女にだらしがない。
これは村だけでなく近隣の人間が知っている周知の事実だ。
また、正一は俺に対してマウントをとる癖がある。
これは俺に対してのみだ。
歳が近い男が俺しか居ないからな。
年上に対してマウント取れば『このガキが』と言い返されるからやりたくても出来ない。
村社会は年功序列が結構残っているからな。
俺は、これだけで此奴の全部は否定はしない。
確かに『友情』はあるのかもしれない……この村には男が二人しか居ない。
女の子と遊ぶ前は良く遊んだ。
だが、顕示欲と女関係には汚い。
そういうタイプだの男だ。
薄々こんな事をしそうだ……それは俺も解っていたんだ……
最近は良く俺以外で会っていたし、俺の婚約者である芽瑠とも仲良くしていたからな。
俺を除いた4人で良く居たよな。
だから、そうショックでもない。
だってそうだろう? 揉めても仕方ないし俺はこの村で商売を続けなければならない。
だが、一方的に俺が不利な訳でない。
この村は少し辺鄙な所にあるから、俺以外商売をしていない。
過去に有名なグループがこの地域に大型スーパーを作ろうとしたが、企画の段階で採算がとれないと言う事で出店しなかった。
今現在、俺のスーパー以外で買い物するなら車で20キロ以上走らなくてはならない。
この村は老人も多いから、うちの店は村では重要だ。
だから、古馬正一は権力者の息子で俺より立場が上だが、俺を本気で追い詰めたら相手も困る筈だ。
「この辺りの若い女は全部俺がやっちまったぜ。 誰か1人を正妻にして後は妾にでもするつもりだ……まぁ男として俺の方が上だった。そう言う事だ……恨むなよ」
「そうか……まぁそれじゃ仕方が無いな」
これで良い。
正一の狙いは解っている、ハーレムが欲しいんだろうな。
親がやりたい放題だったから自分も……そう思ったんだろうな。
その結果がこれか……
「おいおい、そう寂しい顔するなよ! 俺は古馬本家、お前は分家の今泉家、仕方ないだろう。まぁ解ってくれるよな?」
もう、やってしまったんだ仕方ないよな。
事後報告なんだから……
もう三人とも正一の女になっているんだろうな……
俺は婚約者だった芽瑠の目を見たが、彼女ももう昔の優しい目をして居ないし正一にもたれ掛かっている。
「芽瑠は何か言いたい事があるのかな?」
「私は……ごめんなさい。真面目なだけの貴方と違って、正一さんは色々と気遣ってくれるの、寂しかったの……ゴメンなさい」
俺は店を経営しているから、それなりに忙しい。
正一が暇なのは、親の仕事を手伝わないで遊んでいるからだ。
親の権蔵さんは正一に甘いから……まぁ暇はあるよな。
「芽瑠……それじゃ仕方ないな」
まぁ、そう言うだろう!俺と目を合わせないんだから……
ふと、メルの指に目がいった。
左手薬指には見知ら指輪がつけられている、これは多分正一が買い与えた物だろう。
俺のあげた指輪はもうしていない……そう言う事だ。
まぁ、もういいや。
他の2人も同じ指輪をしていた。
ハーレムに男は要らない。
そう言う事だが、本当にだいじょうぶか……
「一応、聞いておくけど? 芽瑠、お前は正一と不貞を働き、婚約解消を申し出て来た……それで良いんだな」
「……」
「別にもう良いよ。だが君の口から聞きたい。」
「ごめんなさい」
これは、あくまで事実確認だ。
「まぁ、正一は良い奴だ、幸せになれよ!」
なれるわけないが……これで良い。
「本当にごめんなさい、ありがとう」
「正一は良い奴だ……まぁ頑張れ……」
「ごめんなさい!」
「俺の事はもう良い……」
悲しい顔をしているが、そんな必要は無いのにな。
責任さえ、しっかりとれば良いんだよ。
「悪いな!全員が俺が良いっていうんだ!これもお前に魅力がないのが悪いんだぜ」
「そうか? まぁ俺の方はこれで良いよ」
正一は芽瑠が俺の婚約者として知っていて寝取った。
芽瑠と婚約したのは、この村で生きていく為に必要な事だった。
好きになろう、愛そう……そう努力した結果がこれだ。
俺じゃなく芽瑠と正一が原因で婚約破棄が出来る。
しかし、正一の女癖の悪さ……権蔵さんの息子だから仕方が無いのかな。
正一は勝ち誇った顔で俺を見ている。
思いっきり、俺を見下している。
このマウント癖もどうにかならないのかね。
大体、古馬家に生まれて、未来の跡継ぎ。
態々マウントなんて取らなくてもお前は生まれながらの権力者。
村の中限定ならお前は王子みたいな物だ。
馬鹿だな。
大体、芽瑠の事はそこまで好きな訳じゃない。
お前が他の二人を好きそうだったから、揉めない様に芽瑠を選んだだけだ。
まぁ良いや。
元から、こうなるかとも思っていたからな……
「悪ぃ」
「なんだか、ゴメンね」
「知っていて黙っていたのは謝るわ」
「貴方より!正一さんの方がごめん...」
4人の幼なじみが一斉にお別れの言葉を言ってくるが、まぁ仕方が無い。
まぁ良いさ、責任をとってくれればそれで良い。
「まぁいいや!」
「余り酷い事言うなよ 芽瑠!和也だって俺の親友なんだからな(笑)!」
「気にするな! 納得した。責任さえとってくれれば問題はないさ」
「「「「責任?!」」」」
「おいおい、芽瑠には指輪も渡したし、東条家には婚約の挨拶も済んでいるんだ。メロンの方も俺の伝手で都心のデパートで販売計画もある。それに、この婚約の立ち会人はお前の親の権蔵さんだぞ……俺が納得してもこれで終わるわけないだろう?」
「え~と……」
「あのな、正一……村での結婚は家同士の繋がりもある。それに姦淫は村の掟で重罪だぞ! だから権蔵さんも女にだらしなくてもそこは守っていた筈だ……その責任はとれよ」
「だけど、お前は結婚してないだろう」
「あのなぁ、これは法律じゃない、村の掟だ。どういう判断するかは村の重鎮が決める事だ。少なくとも東条家は俺に慰謝料を払う事になる。そしてお前はその責任を取る事になる。その話し合いが必要だ」
「あの……和也」
「芽瑠、婚約者が居ながら他の男に体を許した……その償いはして貰うよ」
ここは異世界じゃない。
村だ。
責任はとって貰うからね。
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