第十一章 西船津(にしふなつ)を覆う〈影〉

幕間 その一

登場人物紹介ですよ「チッ!」(増女と文吉)



☆読者の皆様、外法衆の増女と……


「ピッ、ピッ♪」


 文鳥の文吉ぶんきちが、第十一章前半に登場する主な登場人物達とこれ迄の粗筋を紹介します。


 聴いていただけたら占いのお代はいりません。

 但し、どんな結果になっても恨みっこなしですよ……。



※本項は登場人物の紹介と前章までの粗筋を記載しています。

 若干のネタバレを含む場合がありますのでご了承ください。


 本項の情報は、作中の一九二〇年八月時点のものです。



◆ 主な登場人物 ◆



◇ 宮森みやもり 遼一りょういち ◇


 魔術結社九頭竜会くずりゅうかいに入会させられてしまった青年。

 皇太子 瑠璃家宮るりやのみやの命を救った功績により、幹部の地位を手に入れた。


 宗教儀式や古代文明に造詣ぞうけいが深く、好きな煙草の銘柄はゴールデンハット。


 御霊分みたまわけの術法で人格を切り替える事ができ、人格を切り替えた際は〘うら 宮森〙などと呼称される。


 外吮山そとすやまの闘いで死亡したおり、禁断の魔導書〈死霊秘法ネクロノミコン〉をインストールされ蘇生を果たす。


〈ショゴス〉と融合した事により、〈深き者ディープワン〉の形質が発現した。


☆〈死霊秘法ネクロノミコン〉をインストールされたり〈ショゴス〉と融合させられたりと、しっちゃかめっちゃかにされてる御人おひと

 今章の里帰りで、完全な先祖返りを果たすみたいですね。


 それにしても人格切り替えをあんな方法で使うなんて、彼の機転には脱帽だわ……。



◇ 〈ラニクア・ルアフアン〉 ◇


深き者ディープワン〉でありながら、〈ダゴンとハイドラ〉の精神支配を受けない稀有けうな存在。


 九頭竜会のやり方に反発し、同胞の救出に尽力じんりょくする。

 宮森とは元々同盟関係を結んでいたが、それを超えた友情を育むまでに。


 旧文明の事をある程度知悉ちしつしており、およそ二百数十年前に起こった〘小終末しょうしゅうまつ〙の顛末てんまつを宮森に伝えた。


☆彼も〈深き者ディープワン〉の例にもれず、人間態になれるらしいですね。

 随分と見目麗しい姿になるようだけど、二百歳をゆうに超えてらっしゃるみたい。

 おきなが解剖して、彼の若さの秘密を暴いてくれないかしら。



◇ 大槻おおつき 太三たいぞう ◇


 九頭竜会に囲われていた元土木作業員の中年男性。

 通称はハンチョー。

 部下思いなので伊藤 達からも慕われていた。


食屍鬼グール〉襲撃事件の際に重傷を負ったが、九頭竜会の治験に参加させられ鬼鮟鱇おにあんこう型〈深き者ディープワン〉として復活。


 九頭竜会のやり方をこころよく思っていない〈深き者ディープワン〉のひとりで、〈ラニクア・ルアフアン〉らと共に地下競艇場を襲撃した。


 治験の際、同じ施設で知り合った雌性しせい深き者ディープワン〉と意気投合し夫婦となる。

 ちなみに、妻の名前は杏子あんず


 夫婦共に鬼鮟鱇型の〈深き者ディープワン〉なので、いちじるしい体格差がある。


☆〈深き者ディープワン〉は人間ヒトとの交配を望む者が多いみたいだけど、あの夫婦は違ったようですね。

 きっと、運命の相手だったんでしょう。


「チッ、チチッ……」


 あらあらまあまあ、文吉がくじを引っ張ってきたわ。

 どれどれ、番号はと……。



◇ 〈はぐれ深き者ストレイディープワン〉 ◇


 九頭竜会その他の魔術結社や、魔術師の支配下に置かれていない〈深き者共ディープワン〉と、それらの支配から脱したい〈深き者共ディープワン〉の事。


 これまでに判明している主な個体は、〈ラニクア・ルアフアン〉と大槻 夫妻。


☆今章ではこいつらが大活躍します。

 水中での機動や戦闘は勿論もちろん、生命力の強さや個体ごとの固有能力も厄介ですね。


「ケケケケケ!」


 やっぱり文吉も警戒してるわ。



◇ 宮森みやもり 家の人々 ◇


 養子である宮森 遼一の里親一家。

 続き柄は遼一を基準とする。


■父・春政はるまさ

■母・秋子あきこ

■兄・冬児とうじ 夏美の兄

■姉・夏美なつみ 冬児の妹

■祖父・年隆としたか

■祖母・月江つきえ

■義姉・伊佐子いさこ 冬児の伴侶はんりょ

■甥・隆文たかふみ 冬児と伊佐子の子で、睦江の兄

■姪・睦江むつえ 冬児と伊佐子の子で、隆文の妹


☆宮森が養子というのは、最初から調べがついてたんですよ。

 でも、どこから貰われて来たのかが良く判らなかったんです。


 父の春政は札付ふだつきとして有名だったから、めかけのひとりやふたりいてもおかしくないでしょうし、人身売買の線もありますものね。

 それでも出てこなかったという事は、九頭竜会以外の力が働いていたと思うよりないでしょう。



◇ 宮森の実の両親 ◇


 二十五年前、九頭竜会との戦いで命を落としたとされる。


☆二十五年前に九頭竜会が決行した龍籠浦やのうら襲撃……。

 その時はまだぺーぺーの私も駆り出されて大変だったわ。


 当時は瑠璃家宮るりやのみや 派なんてなかったから、多野たの 教授とも一緒に戦ったんですよ。

 それが今じゃ内輪もめ状態。

 ほんと、どうなっちゃうのかしらね。



◇ 大悪尉おおあくじょう ◇


 外法衆の二代目隊長。

 ロマノフ王朝を打倒するためロシアに渡っていたが、現隊長のテンバ・シローが深手を負ったため来日。

 その正体は、ロマノフ王朝に取り入り内部崩壊を引き起こしたグリゴリー・エフィモヴィチ・ラスプーチンその人。


 夢幻座ではひげ団長として自ら舞台ステージに上がり手品を披露している事からも、意外とノリのいい性格をしているようだ。


 催眠術と認識阻害術の大家でもあり、戦闘でもその能力を遺憾いかんなく発揮する。


☆二十五年前の龍籠浦襲撃を仕切ったのは、外法衆初代隊長だったんです。

 けど、その後にふらりとどこかへ行っちゃったんですよ。

 で、大悪尉が二代目隊長に就任しました。


 それにしても初代隊長、あんな置き土産を置いて行かなくても良かったんじゃないかしら……。



◇ 増女ぞうおんな ◇


 増女面ぞうおんなめんを着けた外法衆正隊員。

 外見は熟年女性。


 夢幻座では中東風の民族衣装を着て占い師を演じていた。


 柔らかい雰囲気と言動でカウンセラーとしても一流。

 警戒されにくい事を利用し、一般人を吊り上げるのが主な役割。


 彼女の占い自体はインチキだが、能力は今のところ未知数。


 白文鳥の文吉ぶんきち(おそらくオス)を飼っている。


「あらあらまあまあ」が口癖。


☆なんなのよこの解説文は。

 外見は熟年女性、だなんて失礼しちゃうわね。

 外見だけじゃなく内面も成熟してると言って欲しいわ。


 私より何倍も長生きしてる玉藻たまもが若さを保ってるのは羨ましいけど、熟女には熟女の魅力があるってものよ。


「ギュ〜、ギュ〜」


 ほらね、文吉も解ってくれてるみたい。



◇ 賢徳けんとく ◇


 賢徳面けんとくめんを着けた外法衆正隊員。

 外見は小柄な若年女性。


 夢幻座では青鼻道化ブルークラウンふんし、動物芸で観客をかせていた。


 軽い身のこなしと鍛え抜かれた体術が武器。

 又、哺乳類を自在に操れる。


☆待ちに待った賢徳ちゃんの登場ね。

 橋姫はしひめに次ぐ怪力な上、身のこなしは中将に迫るものがあるわ。


 読者の皆様の中には、獣達と心を通わせる少女なんてロマンチックだな、なんて思ってらっしゃる方もいるのでは?

 でも私だって、文吉と心が通じ合ってるんですよ。

 断って置きますが、術で無理やり従わせているなんて事はありませんから……。



◇ 役場の男性職員 ◇


 佐賀県鹿島町かしまちょうの村役場職員をしている年配男性。

 本名は【甘利あまり 好造よしぞう】。


 実は大昇帝 派の下っ連絡員で、宮森の監視任務に就いている。


 いわゆる御当地銘菓ごとうちめいかのピーアール担当。


☆今回は賢徳ちゃんとの繋ぎをやってもらったわ。


 それにしてもこの人、甘い物ばかり食べてるわね。

 糖尿病予備軍確定だと思うけど……。



◆ 前章までの粗筋 ◆


 九頭竜会の姦計により、愛する女性ひとと闘い、そして失う事となった宮森。

 その際彼は、〈深き者ディープワン〉としての覚醒を果たす。


 宮森が愛する女性ひと……寅井とらい ふじ との別離を仕組んだ瑠璃家宮は、宮森を幹部に昇進させた上で帰郷をうながした。


 瑠璃家宮は、遠い昔にこの地上を去った想い人の生まれ変わりが宮森だと確信。

 彼を再び手に入れんと、宮森のはく堕天だてんさせようと画策する。


 帝都を旅立ち寅井 ふじ の故郷参りを終えた宮森へ、瑠璃家宮の娘であるていが誘拐されたとの報せが舞い込む。

 そして彼にも、ラスプーチンの魔の手が迫っていた……。





☆今章では遂に宮森の出生の秘密が明らかになります。

 その衝撃に、読者の皆様は耐えられるかしら?


 もちろん私を含めた外法衆のみんなも大活躍しますから、見逃さないようにしてくださいね。


「ピピピ!」


 あらあらまあまあ。

 期待してるのね、文吉。


 ちょっとハードル上げすぎちゃったかも知れないけど、そこはご愛嬌という事で。


 ではこれより、第十一章前半部開始となります。



 二十五年前の惨劇、それは……(文吉の持って来た籤を読み上げる)。


 八十二番。

 火、発しておうに天に連なるべし。

 新愁しんしゅうふるあやまちをく。

 千里の外を求めんと欲せば。

 渡りをもとめて更に舟無し。


 因果なものね……。



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