異色のパーティ

振り下ろされた剣は障壁に命中する

しかし、障壁は壊れない


……重い一撃でも壊れないか、もう少し試そ


素早く連続で切り掛る

何度も何度も切り掛る、10回程度攻撃を加えた時ピシッと僅かに亀裂が入る

亀裂に剣を突き立てて力一杯押し込み砕く


「壊れた」

「剣で壊した……それも魔力無しで」


この魔法は破られない自信があった

複数回攻撃をしたとしてもそうそう破る事が出来ないと踏んでいた


「成程、このくらいかぁ」

「それで合格ですか?」

「着いてくる事は認めるけど無理はしちゃダメだからねぇ」

「貴女が言いますかそれ」

「私は強いから」

「えぇ、無理はしません。弁えていますので」

「それじゃパーティって事になるのかな?」

「私は冒険者では無いんですがまぁそうですね」


異色のパーティが生まれた

魔力を持たない剣士と天才と言われた少女


「冒険者にならないの?」

「丁度良いですしお金を稼ぐ手段は欲しかったので冒険者になります」

「それじゃギルドで登録しよう。丁度私も依頼達成したからギルドに用あるし」

「クロナさんは4級に上がれるんですか?」

「多分、討伐依頼以外に必要な物があるとは聞いた事ないな」

「スタートで6級でしたっけ?」

「そそ、それで3つ依頼を受けて達成すると5級になれる」

「3つですか」

「パーティの場合は仲間が受けた依頼の達成でもカウントされるらしいよ」


東の森を出てギルドへ向かう

何事もなくギルドへ着き受付に討伐証明用の素材を提出する


「確認終わりました。依頼達成です。条件が揃いましたのでクロナさんは5級から4級にランクアップとなります。次からは4級の掲示板をご覧下さい」

「漸く4級に上がれた……感動」


今まで上がる機会が来なかった

漸く4級に上がれちゃんと討伐依頼を受けられるようになった

そしてユイラとパーティを組んだ事で2人以上の依頼も受けれるようになったのも大きい


「すみません、冒険者になりたいんですが」

「名前を教えてください」

「ユイラです」

「ユイラさんですね。この水晶に手を置いてください」


机の上に大きな水晶玉を置く

ユイラが手のひらで触れる

すると何か水晶内に文字が現れる


「問題ありません。はい、これで登録は終わりです。冒険者ランク及び依頼の説明をさせて頂きます」


受付嬢は冒険者ランク、依頼の説明をする

ざっくりと冒険者ランクを上げる方法とランクダウンの条件、依頼の達成方法、未達成及び続行不可の際の行動を説明する

マトモに聞く冒険者はそう多くない

ユイラは真剣に説明を聞いてメモをする


……珍しい


説明が終わるまでギルドにある椅子に座って待機する


「以上で終わりです」

「分かりました」


説明が終わりクロナの元へ行く


「良く聞いてたね」

「むしろ聞いてないんですか?」

「最初は聞いてたけど……長過ぎて……」

「結構重要な事言ってましたよ?」

「一応大事そうなのは覚えてるから」

「分からなければ私が教えます。それで龍狩りはいつ行きます?」


近くの椅子に座る

小声で会話をする

聞かれても問題は無いが騒がしくなるのは目に見えている


「早いうちに行く予定だけどどうしようか」

「早い方が良いですね。早めに素材は欲しいので」

「王都からエルダス山ってどのくらいかかるの?」

「馬車で麓までが2日くらいですね。頂上は歩きでしか行けなくて問題無く行けたとして2日ですかね」

「往復で8日……討伐の時間も考えるともっと長いか」

「野宿する準備も整えておかないと行けませんね。馬車の手配も、それに向かう途中も危険ですし」

「馬車が襲われるからね。護衛は私達が出来るけど」

「骸龍が縄張りにしている事もあって強い魔物が闊歩していますから」


骸龍が居るせいで冒険者が下手に入れず魔物を狩れず魔物の巣窟となっている

そして魔物の楽園は弱肉強食の世界、戦いに勝ち強い者が残る

弱い魔物は淘汰されるか群れを成し強い魔物、強くなった魔物だけが残っている

危険度は普通の場所より高い


「向かってくれる馬車なんて用意出来る? 私操作は無理だよ」


金を貰ったからと言ってわざわざ危険な場所へ向かってくれる人はそうそう居ない

ほぼ見つけられないと考えた方がいいだろう

運が良ければ高い金を出せば連れて行ってくれるかもしれないが


「どうやって行く予定だったんですか?」

「徒歩」

「徒歩だと馬車の数倍掛かりますよ……最悪私が動かせます。最も戦闘には参加出来ないですが」

「戦闘は私1人で大丈夫、馬車を守って欲しい。壊されたら困るから」

「分かりました。それなら私にお任せを」

「準備……金集めないと……森の主分で足りる? あっ、そうだ半分、上手く割れないけど」

「私金あるので貴女が使ってください。倒したのは貴女ですしそれほど高い物で無ければ足りると思います」

「ならお言葉に甘えて」

「明日準備をしましょう。そして明後日向かいましょうか」

「そうだね。早めに行きたいし……4級にその山に行く依頼無いかな」

「無いと思いますよ」


4級の依頼が貼られた掲示板を見に行く

5級と違い討伐依頼が多い

順番に見ていくが見つからない


……4級には無いかぁ、残念、ついでに受けれれば報酬貰えると思ったのに


とぼとぼと先程座っていた椅子に戻る


「無かった」

「あの辺の討伐依頼は3級とかだと思いますよ」

「そっか……そうだよねぇ」

「今日の所は解散で明後日合流にします?」

「いや、遠出の準備って何すればいいか分からないから教えて欲しい」

「良いですが本当に1人でどうやって行く予定だったんですか……」

「腹が減ったら魔物を食えば行けるかなと」

「野生児ですかいや野生児でも魔物は多分食べませんね」


魔物を食べた事がある者は居る

飢えを避けるために食した冒険者などが

その殆どが不味過ぎて喰えた物は無いと言っている

稀に魔物食をする変人も居る


「美味しくは無いけど慣れた」

「どんな環境で……まぁ良いです。明日の朝8時にギルド前に集合しましょう」

「了解ー」


解散してそれぞれが泊まる宿に向かう

クロナの泊まっている宿は安宿、年季の入った宿

部屋に行きベットに寝転がる


……4級なったしもう少しまともな宿に変えれるかな。まぁまずは龍狩りに集中か、果たして勝てるのかどうか


「まさかパーティを組めるとは思わなかったなぁ」


初めてパーティを組めた

そしてそのパーティ最初の討伐対象は骸龍

他人が聞けば驚きより呆れそうな話


やる事をやって支度を済ませる

明日の朝は早い、明日に備えて早めに寝る

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る