お陰様で熱も下がり元気に職場に逃げております。

明鏡止水

第1話

こんばんは。

明鏡止水です。

みなさんは親を殴ったこと、人を殴ったことがあるでしょうか。

私は実はあります。当時は父でしたが向こうが一枚上手で腕で防がれました。

今回は母です。


また母に臭いと言われています。

でも部屋には金色の特別なファブリーズとカモミールの香りのする消臭元が置いてあります。

私の部屋は古い衣服や小学生の頃から買っているNARUTO72巻とか進撃の巨人全巻とか、とにかく古い本の匂いもするのです。

グッズの祭壇が中途半端だし、部屋には入られたくないのでもしかしたら母のいう通り、臭いのかもしれません。

でも、仕方がないのです。服と本は洗ってあっても部屋を掃除しても消臭剤やファブリーズを駆使しても部屋の匂いは仕方がないのです。それくらい、本が古い。カビは生えていません。


「くさい、くさい、くさい、くさい」


私はとうとう耐えきれなくなりました。


姪と甥が泊まり、朝から母が一人で孫の面倒を見ながら収納や玄関の掃除をし、孫たちが素直に手伝っていたそうです。

父と障害者のきょうだいは趣味の電車の撮り鉄に行っていました。


私は疲れて昼過ぎの1時まで寝ていました。


きちんとした娘で叔母ならば、姪と甥の面倒を見つつ、母の掃除を手伝うものでしょう……。


しかし、私はNetflixでまじっく快斗がみたいなあ、と思いながら部屋に篭り続けました。スマホじゃなくてテレビで大きく見たい。

まじっく快斗が全話見られて初めて100万ドルの五稜郭が楽しめる気がする。

そう思いながら朝の四時からずりずりずりずり。


やがて昼に一階へ降りた時、母に心底憎いというように

「やっと起きた……」

と言われた時。


私はキレました。

姪がいようが甥がいようが関係ない。

大きな足音を立てて二階へ駆け戻り、扉を、せめて姪や甥が近くにいないことを確認してから挟んだ者の指を切断するかのごとく勢いで強く閉めました。

ちょうどその時に父が帰ってきました。


私がしばらく部屋にこもっていると、母が私の服を部屋に運び込み

「くさい」

と言ったのです。

限界でした。

雄叫びをあげて近くの消臭元を部屋の扉を開けて窓に叩きつけました。

割れてしまえ!!

しかし、我が家の窓、意外に頑丈。

消臭元がぽかーん!! っと窓に当たり廊下へスライディングしていきました。

姪も甥もいるのに何をしているのか。

一体何をしたの。なんの音。

母がおばあちゃんぶります。女ぶります。

母、姪、甥が部屋までやってきます。

「おれ、いく……」

私の尋常ではない狂気に触れてはならない幼稚さを感じたのか、甥が逃げていきます。姪はどうしたの? と幼いのに事態を把握しようと聞いてきます。


それからは膀胱もいっぱいなのにトイレにも行かず、風呂へも入らず、部屋からとにかく出ず、夜の八時まで何かを感じていました。


私は耐えきれなくてまた古い100均で買った薄くなったマジックや真新しいマッキーで、今度は二階の壁に「人殺し!!」、「死ね」、「臭い」と書きました。


人殺しの意味は人の心を臭い臭いと言って殺す母に、死ねは特に誰に死んで欲しいわけでも自分に言っているわけでもないですが、言われたらショックだと思うので強い言葉だと思ったのか書きました。

臭い、は言われて辛いから書きました。


このまま部屋に腐っていたら私のゴールデンウィーク最終日と(仕事で関係ありませんでしたし新しい職場にやっと一ヶ月いられて疲れが出て病み上がり)休日が踏み潰されたようだ。

私は思いが暴走して窓にも人殺し!! やめろ、と書きました。

やめろは母に対して全てやめろという懇願と怒りでした。仕事を辞めて腑抜けてしまえ。お金が稼げず苦しんでしまえ。頑張ることをやめてしまえ。私に独特な言い方で鬱憤をぶつけるのをやめろ!!


そのまま私は一階へ行き、統合失調症の薬を飲んでから母に臭いというのをやめろ、と言いました。


母はチラリとこちらを見てから

「言いたいことはそれだけ?」

とまたテレビを見ます。


姪と甥は帰っていました。


私は母に近寄り寝ている母の胸ぐらを掴んで持ち上げます。上半身が宙吊りになる母。

しかし、左手で持ち上げ右手で張り倒そうとしましたが、いかんせん、重くてそれ以上持ち上がりません。それでも尚、私は右手を振り上げて母の横っ面を引っ叩かねばなりません。

すると、晩酌していた父が止めに入ります。初めは動かずに

「止水! やめろ!!」

と声をかけます。

尚も私が母を左手で吊るしていて、右手を出そうとしたところで

「止水! こっち見ろ! やめろ!!」

と言います。

母は下からビールを飲んだ赤い顔と血走った目でねめつけてきます。

私は父に止められ受け止められ、顔を大きい両手で覆われて、そこで辛くなり泣き出してしまいました。

「臭いっていう……」

いじめられているみたいで、辛いのです。

服が臭い。

体が臭い。

部屋が臭い。

全部臭い。

通りがかっても臭い。

つらい。

つらい。

泣きました。

もう、父しかわかってくれません。

「自分で風呂に入れるようになっただろうが! いいんだよ、気にしなくて、そうだんべ?! 働けて、好きなものも買えて、気にしすぎなんだよ!」


辛くて父の焼酎のボトルを引き寄せて一気飲みしようとしたら止められて「俺の焼酎どうする気だ?!」、「やめろ、極端なんだお前は!!」としばらくジンロを二人で取り合いました。

「薬飲んだんべ? やめろ!」


収まりません。


今度は冷蔵庫にある母が気まぐれに買ったアルコール3%のチューハイを一気飲みします。

さすがに父も止めません。3パーですから。

飲み切ったものを流しにぶちこんで二本目にビールを取ろうとしたところで止められました。泣きながら飲んで泣きながら止められ泣きながら説得されます。

「そんなんなるんじゃまた入院だぞ! それか◯◯(母の名)とお前は離れて暮らさせる!! その代わり、地獄だと思えよ!! この家は無いと思え!!!!!」

いっぱいいっぱいの私を抱きしめ、父はまた俺が昔みたいになってもいいのか? 俺だって我慢してるんだ、なんでそんなに気にするんだ、ほら、鼻をかめ、とティッシュをよこしてくれます。

唸りながら何度も母に飛びかかろうとしましたが飛びかかったところでどうしたいのかわかりませんでした。

しばらくテレビを見ていた母はのそのそと和室に布団を敷き寝始めました。

あいつの顔に熱いポットの熱湯をかけてやりたい、そう思うも、自分が寝ている時にされたら嫌だからやらない、一番使わない一番長い出刃包丁で刺してやりたい、でも度胸がないからやらない。


統合失調症で幻覚と妄想に陥った時に側に家族かわかってくれる人がいないと困る。もう嫌だ。でも家族を憎いと思い、暴れたらそれも入院だと脅される。


私はそんなに臭いのか。私はそんなに怠け者か。

私はそんなに母を一発も殴れないのか。

私はそんなにだめなやつか。


泣きながら、思い出し泣きしながら、臭い臭いと言われることを辛く思いながらこの文章を打っている。


生まれてこなければよかっと、と思ったのは子供の頃だった。同時に死ぬのも怖かった。


LINEで父から壁と窓の落書きは消せ、次はない、とメッセージが来た。母ももう私には何も言わないという。そんな言葉を何度も信じたのに言われる。


母を、ころそう。


殺す気なんてないし、殺意も全くないけれど、なんとか母を殺せないだろうか。


父と衝突している時は父の死を願った。


私は、自分の死も他人の死も祈ってばかりだ。


それでも、私がまだ殺していないのは、

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お陰様で熱も下がり元気に職場に逃げております。 明鏡止水 @miuraharuma30

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