第二章:大ボス、ゴリアーテとの最終決戦 

「誰が、吾輩の眠りを妨げるのだー!」


 ボルケーノ山という活火山の内側に、灼熱の炎の中、マデラン星人の大ボス、ゴリアーテは叫び上げ出した。


「お前が、マデラン星人の大ボス、ゴリアーテだな」というアタック・マンが、頭上の相手の悍しい顔を見上げている。巨人体系のゴリアーテが身長十メートルを超える。ゲルゴーンの二倍以上の大きさだった。彼の頭から生えている禍々しい二本の角が、邪鬼を連想させる。


「貴様が、噂で聞くアタック・マンという奴か」ゴリアーテは聞いた。「新米ヒーローめ、どうやって吾輩の場所の在処を突き止めたのだ?」


「グライナー博士には、俺へマデラン星人の中ボスを全員倒せた場合、敵の対角線上の中心の位置を、お前が眠っていた場所だと教えてもらえた」


「グライナー博士が最近姿を見せないと思ったが、敵の地球人を味方だったのか、ただじゃ置かないぞ」ゴリアーテは言った。「それと、貴様は一見して平均並みのマデラン星人の実力しか持たない。地球人の貴様の実力が、どうやって、二十三人もの中ボス級のマデラン星人を倒せたのだ。マデラン星人の内にも、強敵な中ボス級の者たちでは、破壊力の高いものが多かっただろう」


「マデラン星人の中ボスたちは一撃でも当てれば、相手が塵と化す」アタック・マンは言った。「それほどの破壊力が獲得できなければ、お前たちの最強クラスは名乗れそうにないだろう。それはきっと、俺も凄まじい一撃に当たった場合も例外ではない」


「吾輩たちマデラン星人は、他の異星人に負けないものだ」ゴリアーテは言った。「従って、地球人一人など、吾輩の敵ではない」


「どう思うのもお前の勝手だが、俺の実力を舐めたりしない方がいいぞ」アタック・マンは言った。「確かにマデラン星人やらの最大の武器は、強烈な破壊力だった。奴らには波動砲やら火炎放射などの火力ならば存分へ発揮し出してきた。けれどもマデラン星人の中ボスたちが、その強靭な破壊力を平和へ利用している者なんて一体も現れなかった。グライナー博士では、そんなマデラン星人の有様が許せなかった。そして、俺にはグライナー博士の研究の成果から敵のマデラン星人の懐へ接近して戦う手法を学んだ」


「グライナー博士め、そんなことを想っていたのか……」ゴリアーテは呟いた。「余計な敵を作りやがって」


「この際だから説明してやる」アタック・マンは言った。「地球人の一人の俺が、マデラン星人との戦いを勝つ秘訣があった。グライナー博士では、前方の敵と俺の同じ位置が被されば、戦況も大いに移り変わり出してくると教えてもらえた。その場合、戦闘中へ他方面の位置のマデラン星人の攻撃技を使えなくすることができる。その攻撃が俺と戦闘中のマデラン星人を巻き添えしてしまうからだ。そこで、マデラン星人側が残された戦闘手段では限定されてくる。“一体ずつにしか、お前たちは俺に対して戦えない”。従って、マデラン星人は、戦闘中に俺の連続アタック攻撃へ対処してくる方法を、一体ずつ立ち向かうしかない」


「もし吾輩に貴様は倒されたら、誰か悲しむ者は残されてないのか?」


「俺は、特定の人間のために戦ってはいない」アタック・マンは答えた。「しかし、俺は地球上全ての兄弟姉妹のために戦っている。そこにあるのはただ、悪しきマデラン星人に立ち向かう使命と勇気だけだ。だから覚悟しろ、ゴリアーテ!」 


 そう言って、アタック・マンは、ゴリアーテの前方斜め右側から連続アタックに向かい出した。すぐさま、ゴリアーテの懐へ入り込み、連続の激突攻撃を決め込み始める。


「吾輩を、倒す、なんて、百年、も、早い」


「それはどうだろうか」アタック・マンは言った。「お前たちの弱点が、連続アタックだと判明したんだ。倒されるのは、お前たちマデラン星人の方だ」


「これも、すべて、裏切り者の、グライナー、博士の、せい、だな、許すわけ、に、は、いか、ない」


「グライナー博士は、銀河中の平和に貢献しようとした人物だ」アタック・マンは言った。「グライナー博士は俺にとって守るべき存在だ。彼はお前に倒させやしない。だから俺にはここへお前を生かしておけない」


「それ、も、いい、が、吾輩の、体力、では、大して、減らない、よう、だぞ」


 ゴリアーテの体力の減少は微々たるものだ。アタック・マンが攻撃し続けるところを疲れて気がゆるんだ場合、相手から隙を衝かれてくるかもしれない。


「確かに、このままだと俺は負けるかもしれない」アタック・マンは言った。「それだから今、俺が救援の思念を発した。何しろ激突戦法者は、俺一人きりではない」


 そこで颯爽と一人の女性が登場して、通り名をゴリアーテへ向けて叫んだ。


「私は、地球出身のアタック・ウーマン・ブルーよ、アタック・マン・レッドの応援に駆けつけたわ」


 真っ青な衣装に着飾った女性ヒーローの発言だ。彼女が共闘さえすれば、敵のマデラン星人の最終ボス一体を、二人掛かりの敵へ回したとして連続アタックによって圧倒していくことは容易いものだ。


「相手はマデラン星人のラスボスだ」アタック・マンは言った。「お前の賢明な参戦を歓迎する」


「そうと決まれば私たちで早速アタック攻撃よ!」アタック・ウーマンは叫んだ。「覚悟しなさい、ゴリアーテ、あなたは決して許されないわ!」


 そう言って、アタック・ウーマン・ブルーと名乗った女性ヒーローは、ゴリアーテの前方斜め左側から連続アタックに向かい出した。


「なん、だ、と、地球人の、ヒーロー、が、一人、では、なかった、の、か?」


 アタック・ウーマンの参戦で、ゴリアーテの体力は著しく減少し出していた。


 アタック・マンと、アタック・ウーマンのコンビは完璧であり、やられてばかりのゴリアーテとしては、劣勢で手も足も出せない。また、マデラン星人のゴリアーテにすれば、地球出身の標的は二人に増えたせいか、どちらに攻撃へ専念していくべきか定まらない。


「く、この、まま、やられ、て、たま、る、か、ぐひぇ、えぐ、だったら、本性を、見せつけ、て、やる、この、新米ヒーローど、もめー‼」


 突如として、ゴリアーテの身体全体から灰色の光が放たれた。


 アタック・マンと、アタック・ウーマンは、あまりもの強い輝きで目は細める。


 そこへ、ゴリアーテだった何かを、灰色やら大きな煙が包み込んでいった。それが吹き去ったら西洋映画や小説を出てくるようなドラゴンの姿が出現していた。更に巨大な相手は、漆黒の竜の姿であり、ゴリアーテだった頃の名残もない。


「お前がゴリアーテの最終形態か!?」


「ガオー!!」


「言葉さえも失ったか」  


 アタック・マンと、アタック・ウーマンは、警戒に身構える。今までのアタック攻撃手法は、今度の敵に通用するかは分からない。


「いくぞ、アタック・ウーマン・ブルー、覚悟はできているな?」


「ええ、もちろんよ、いくわよ、アタック・マン・レッド!」


 そう言い合って、二人が連続アタック攻撃を再開し出した。だけれど、そこにアタック・マンの視界の内へ、漆黒の竜から顔の表情を一瞬だけ不気味へ笑い掛けたように見え出してくる。相手はひるまずに、激しい熱光線攻撃へ準備の構えを取り出した。その瞬間、すかさず彼は大きい声で叫び上げ出していく。


「やばい、避けろ、アタック・ウーマン・ブルー、お前の身は狙われ出している!」


 彼女が真横を反射的へ飛んだ。すると、漆黒の竜の口の中から吐かれるカーキ色の熱光線は炸裂していく。それから彼女は思わず背後に振り返る。一瞬にして、彼女の後ろの光景は、熱せられた溶岩のように溶けかかっていた。


「クッ、なんて破壊力だ、ボルケーノ山そのものを消し去ってしまいそうだ」アタック・マンは言った。「それに、相手は最終形態で防御力が格段と上がっているのかもしれない。決して一筋縄ではいきそうにない」


「アタック・マン・レッド、私たち二人では、まだあの竜に対抗は難しいんじゃないかしら?」


「そうだな、仕方ない、あいつを呼び出すか」


 そう言って、アタック・マンが再び思念を飛ばした。すると、待ち望んでいた人物はすぐにひょっこりと表れ出した。


「へーい! 俺の呼び名は、アタック・キッズ・イエローだ! みんな、よろしくな!」 


 真黄色な衣装に着飾った少年ヒーローの発言だ。彼が共闘さえすれば、敵のマデラン星人の最終ボス一体の最終形態を、三人掛かりの敵へ回したとして連続アタックによって圧倒していくことは容易いものだ。


「せっかくだから、三人で例のあれやって置こう」


「よし、やろう!」


「いいわよ、行きましょう」


 三人は威勢のいい声で演出した。 


「アタック・マン・レッド!」


「アタック・ウーマン・ブルー!」


「アタック・キッズ・イエロー!」 


「「「三人そろって、アタックファミリー‼」」」


 ジャキーンッ‼


「普通の家族では、ありません」 


「ガオーッ!」といってアタック・マンの付け加えた説明を、漆黒のドラゴンが理解もしていない。


「父さん、俺は一体、どうすればいい?」


「アタック・キッズ・イエロー、父さんのことは、アタック・マン・レッドと呼んで頂戴」


「分かったよ、それで、どうさ?」


「ようし、お前はあの竜の背後から連続でアタックして欲しい」


「アタック・マン・レッドとアタック・ウーマン・ブルーは、それぞれ斜め前の右と左からアタックするわ」


「お前はマデラン星内でも最強の少年、アタック・キッズ・イエローだ」アタック・マンは言った。「お前が手伝ってくれたら御の字だ。そうすれば、あの竜を倒せるだろう。よろしく頼むな」 


「うん、皆のためにも頑張ってくるよ」


 そう言い合って、アタック・マンは、敵の前方斜め右側、アタック・ウーマンは、敵の前方斜め左側、アタック・キッズは、敵の背後に専念して身構えた。どの地点でも、ゴリアーテだった竜は反撃できない位置だ。


「いくぞ、皆、アタック攻撃、開始‼」


 アタック・マンの掛け声で、三人は立て続けに突撃した。三人同時に竜の姿のゴリアーテの体躯へ向かって、アタック攻撃を炸裂し出した。


「ガオー、ガ、グガ、ゲ、ガグ、ゴ、キ、シャ、オガー!?」


 一方、まともに竜のゴリアーテでは反撃することができない。先程と状況を打って変わっており、竜のゴリアーテの背後から攻撃してくる者が新しく加わった。そのため相手の竜は、アタック・キッズの増援の影響により、破壊の反撃は行えない状況のようだ。アタック・キッズは、素早い身のこなしで竜の尻尾も物ともせず避けながら突進していった。


「ギッギッギッ」という竜の姿のゴリアーテが、呻き声を上げる。


「グワァァッア‼」


 そして、とうとうゴリアーテが断末魔を上げて倒れ伏した。


「やったぞ、お前たち! よくやった‼」


 マデラン星内のアタックファミリーが、ボルケーノ山の火口付近からハイタッチを交わし合った。


 倒された漆黒の竜の姿は、黒い塵と化して風に吹き去って消えていった。

 

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