一般通過JK、スラミー王国へ挑む with 美桜①

「こんまよ~」


 ・こんまよ

 ・こんまよ!

 ・こんにちまよまよ

 

「はい、今日はねスライムでリクエストの多かったスラミー王国ダンジョンに来てますっ!」


 ・俺がリクエストしたとこだ!

 ・どんなとこ?

 ・すげーのどかそうな景色だな

 ・スラミーっていうスライムっぽいモンスターが出てくるとこ


 舞夜がドローンのカメラを背後に向けると広大な草原地帯に、ゼリーのようなモンスターが点々としていた。


 種類は様々で赤や青、ピンクなど色鮮やかなスラミーがぽよぽよ跳ねている様子はまるで絵本の世界のようだ。


「そして! な、なんとゲストを呼んじゃいました! おいで~」


 舞夜が画面外に向かってちょいちょいと手をこまねくと、おずおずと現れたのは舞夜の後輩である美桜だった。

 

 緊張からかその動きは少しぎこちない。

 

「では自己紹介をどうぞ!」


「は、はじめまして……舞夜様の後輩の美桜と申します。

 この度は、憧れの舞夜様のダンジョン探索に同行させていただけるなんて光栄です……!」


 美桜の丁寧すぎる口調に、舞夜は思わず苦笑した。

 

「硬いよ! 硬いよ美桜ちゃん! もっと砕けた感じでいいよ~」


 ・めっちゃガチガチで草

 ・清楚系美少女キター

 ・おっ噂の後輩切り抜き師か!?

 ・様付けwww


「ま、そのへんは追々ね。それで今日来てもらったのはある悩みごとがあるんだよね?」


 舞夜の問いかけに、美桜は深呼吸して息を整えた。


「私っ、舞夜様のジョブを使いこなす姿に勇気をもらったんです!

 自分のジョブにずっと自信が持てなくて……。

 でも、諦めないで挑戦すれば舞夜様みたいになれるんじゃないか、って思って」


 ・わかる!ハズレジョブだとそれだけで気持ち折れる

 ・実際舞夜ちゃんに勇気づけられた人結構いるだろうな

 ・美桜ちゃんはなんのジョブ?


「えっと……。純魔師、というジョブです」


「私は聞いたことなくて美桜ちゃんに教えてもらったんだけどね。

 リスナーさんたちは知ってる人いるかな?」


 ・初めて聞いた

 ・名前だけ聞いたことある

 ・知らない

 ・俺が見てる配信者に純魔師の娘いたような…?


「ふむふむ、やっぱり知らない人のが多いみたいだね。すごい希少なジョブみたいだよ」


 このご時世、ジョブ名をネット検索すればいくらでも情報が出てくる。


 舞夜のジョブであるモンクもハズレと呼ばれながらも、習得スキルなんかはかなり網羅されている。


 だが、純魔師は使用者が非常に少ないとされ、ネット上にもたいした情報が載せられていない。


「私、レベル28なのですが、いまだに使えるスキルは1つだけなんです。それが純魔力操作と言います」


 レベル20を超えてスキルが一つだけというのは異例だった。


 すべてのジョブに共通することではないが、基本的に5レベルごとにスキルを覚えるのが一般的である。


 例えばモンクの場合、初期スキルが気の操作、レベル5で治癒(微)、レベル10で気配察知など。


 美桜の純魔師に関しては初期スキル以降、新たなスキルが全く芽生えていないのである。


「えっ! 私の倍くらいあるじゃん! 完全に探索者として先輩じゃん!? 美桜先輩って呼ぶしかないよもう」


 ・立場逆転してて草

 ・高校生で28は冗談じゃなくすごい

 ・やっぱりなんか見たことある顔立ちなんだよな…

 ・レベルもすごいがスキル一つだけってのもやばい

 ・ツッコミどころ多いわw


「あ、いえ違うんです。

 幼馴染でパーティを組んでて、私はほとんど役に立ってないと言うか……」


 うつむきがちな美桜はつぶやきはどこか悲しげだ。


 自信のなさが、その言葉の端々からにじみ出ているのを舞夜は敏感に察した。


「パーティではさ、そのスキルどんなふうに使ってるの?」


「攻撃手段がないので魔力譲渡の役割でしか扱えてないんです」


 ・さらっと言うけどやべーわ

 ・ダンジョン内で魔力の回復手段あるのはでかい

 ・あれ?回復アイテムなかったっけ?

 ・あるけど高位ダンジョンでしか出ないしマーケットのはクソ高い


「魔力0だからピンと来てないけど……コメント見る限りだと優秀なスキルなんじゃない?」


 美桜は小さく首を振る。


「でも、みんなが身体張って戦う中、私だけ守られているだけなので。

 無理なのはわかっていても、舞夜様みたいに自分の力でモンスターを倒せるようになりたいんです!」


 美桜の瞳に強い決意の炎が灯っている。

 

「おっけい! そしたら相手はたくさんいるし色々試してみよ!」


 舞夜は草原でぽよぽよ跳ねるスラミーを眺めて笑った。


 舞夜の迷いのない晴れた笑顔に釣られるように、美桜も自然と微笑んでいた。


 根拠なんてないのに、どうにかなると思わせる不思議な力。

 

 美桜は舞夜のそんなところに惹かれたのだった。

 

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