一般通過JK、妖精の森に挑む

「こんにちは~。はい! 今日はダンジョン探索していくよ! どこにいるかわかる人いる?」


 ・めっちゃ森じゃん

 ・わからん

 ・わかった!

 ・妖精の森かな~


「正解! 妖精の森を攻略していくよっ」


 舞夜が訪れていたのは妖精の森と呼ばれるE級ダンジョンで、平原ダンジョンと比べると難易度は高い。


 とはいえこちらも初心者向きのダンジョンである。


 深い木々の間から差し込む、木漏れ日に光の粒子が照らされる様子はどこか幻想的なお面持ちがある。


「きれいなとこだね。なんか落ち着くな~」


 進み始めたところで、さっそく木影から突然現れたのはゴブリンだった。


 緑色の肌で子供くらいの背丈をしている。


 木製の棍棒を振り回しながら、舞夜に飛びかかった。


 舞夜は足さばきでゴブリンの死角に回り込む。


 側頭部に掌底の一撃。


 鈍い音とともにゴブリンは吹き飛び、そのまま消滅してダンジョンに吸い込まれた。


 ・相変わらず初心者とは思えんな~

 ・ナイスう!

 ・かっこいい!

 ・哀れゴブリン見せ場なしw


「エリゴブと違って柔いねー」


 手をぶらぶらさせながら、ゴブリンの感触を思い返す。


 気の操作スキルを使うまでもない相手だった。


 突進うさぎやスライムと違って、踏み潰して終わりとはできないが余裕を持って対処できるモンスターであることに変わりはない。


 時折現れるゴブリンを一撃でとどめを刺して進んでいたとき、舞夜はふと疑問をいだいた。


「一匹ずつ襲ってくるけど、複数で協力したりってないのかな」


 対処が楽な理由はそこにあった。


 囲まれたり、同時に襲いかかってくることは道中一度もない。


 ・言われみればたしかにw

 ・E級は集団で襲い掛かってくることはなかったはず

 ・味方がやられるの待ってから襲いかかってくるのシュールすぎてw

 ・D級からは敵がもう少し賢くなるよ


「そーなんだ。今は楽させてもらっちゃお!」


 ボス部屋の扉が見つかるまで、特に苦戦することもなく順調に進んでいた。


 現れるのはゴブリンだけで、持っている武器が異なるだけだった。


 ただどの武器も木製のうえ、肝心の使い手は振り回すだけだからほとんど代わり映えがないありさまである。


「あっさりボス部屋まで来れちゃったねー」


 ・安定感ありすぎてw

 ・この勢いでボスも倒そうぜ

 ・エリゴブ倒せる実力ならE級なんてちょろいもんよ

 ・ここのボスってピクシーだっけ?

 ・そのはず、ちなみにレアボスはピクシークイーン


「今日中にボスまで倒すよ! 早くD級挑戦したいしね~」


 舞夜はボス部屋の扉に手をかけ、一瞬戸惑う。


 初回のボス戦経験がレアボスだったこともあり、まさか2回目も、という嫌な予感も合った。


 緊張を表面に表さないように、勢いよく扉を開ける。


 ボス部屋は一面の花畑だった。


 色とりどりの花が咲き乱れる中、空中に浮かんでいるのは手のひらサイズの妖精、ピクシーだった。


 ・ちょっとレアボス期待してたw

 ・さすがにねw

 ・ただのピクシーか

 ・油断せずがんばれ!


 舞夜は構えを取って、観察に徹する。


 すると、ピクシーの正面に魔法陣が浮かび上がり、光の玉が発射された。


 弾速はドッジボールくらいで、舞夜にとっては見てから十分にかわせる程度。


 再びピクシーが魔法陣を形成するのをみて、素早く距離を詰める。


 走った勢いのままに振るった掌底は魔法陣を突き破り、ピクシーを捉える。


 パンッ、軽い破裂音とともにピクシーが弾け飛ぶ。


「あ」


 ・あ

 ・ひどい

 ・あ

 ・あっけなさ過ぎて草

 ・ボス討伐おめでとうww


「や、やったーうれしー」


 ・棒読みだぞ

 ・もっと喜んで

 ・本来ならすばしっこくて攻撃当てるのに苦労するはずなんだがw

 ・先読みしてた?

 ・たしかにピクシーが逃げた位置にぴったり当ててたな


「ドロップはポーションだね。ありがたく回収しますっ」


 ピクシーが落としたのは低級のポーションだった。


 擦り傷を回復する程度の回復力を持っている。


「というわけで! 今日の配信はここまで! いやー辛くてきつくて厳しい戦いだったね……」


 ・厳しい戦い(すべてワンパン)

 ・見どころさんどこ

 ・さくさくで楽しかったよw

 ・おつー

 ・おつかれさま!


「次の配信もお楽しみにー!」


 帰還の魔法陣をバックにやけくそ気味で舞夜は配信を締めた。

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