四季 ~流れるときの中で~
呉根 詩門
序
僕は暴力的に吹雪く外に駆け出し、膝をついて声にもならない嗚咽を漏らし、取り返しのつかない現実という壁に完全に屈した。頬には、まるで無力な自分に対する罰のように凍てつく風が容赦なく叩きつけてくる。
「私のことを忘れないで」
聞こえるはずのない声、これからも聴き続けたいあの声と笑顔。僕の顔から流れるのは涙なのか、それとも雪なのか。僕の頬は汚れ切って、そして、救いを求めるように手を伸ばす。その指先を掴もうとしたものは、今となっては危うい彼女の面影だった。現実にはただ、宙を掠めるだけで心だけが先走っていくばかりだった。この小さい無力な僕は、激しい風の中に身も心も一緒にあっという間に埋もれてしまっていた。僕は全身からあらん限り力のすべてを使ってこの世のすべてという運命に向かって、必死に、そして、救いを求めるかのように
「神様、お願いです・・・もう一度・・・」
と、叫んだが、僕の声は風と共に荒れ狂う吹雪となって宙を舞っていた。
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