05 廃神社探検
あくる日。
朝からよく晴れて気温も上がる中、
目指す神社は山の中腹、この山道を三十分ほど登った先にあったはずだ。
「うひー、大丈夫これ? かぶれる植物とかないよね? 毒のある虫とかいないよねー?」
早々に
だが――それも無理からぬことと言えた。
神社へと続く道は整備された登山道ではなく、せいぜい獣道に毛が生えた程度。
過去の記憶を頼りになんとか進んではいるものの、倒木や急斜面が次々と行く手を阻む。
「うわあ! 服に泥ついてるー!!」
「――
「はーい……」
こんな山の中に人がいるとも思えないが、ここで誰かと出くわすというのも何かと面倒だ。なるべく目立たず、静かに行動するに越したことはないだろう。
「それにしてもこの道……もっとどうにかならなかったのかな。少なくとも神社である以上は参拝に訪れる人だっていただろうに」
「俺たちが知らないだけで、もっとちゃんとしたルートがあるのかもな」
「
「……うん、大丈夫」
しかし――それが言葉通りの意味でないことを
昔から、
「少し、休憩するか?」
「する! 休憩!! する!!!!」
猛烈な勢いで返答したのは――
「――お」
先に声をあげたのは
「あそこ、どうだ?」
ここから二十メートルほど先、山道の脇に開けたスペースがあるのが見える。
「――ほら
「ん、ありがと」
ちょうど木陰となった部分に地面から生えるように突き出ている石。その上に腰を下ろすと、
半分ほどを一気に飲み干したところで、
「飲み物、持ってきてないの?」
「あ、いや……うん」
「……飲む?」
「ひぃえっ!?」
思わず、声が裏返る。
それは……すなわち間接キスなのではないか。お決まりの展開ではあるが、間接キッスなのではないか。
今日ここへ来てよかった。水を持っていなくてよかった。ここで休憩を取ることに決めてよかっ――
「――ほら。開けてないの、もう一本あるから」
「……ですよねー」
凍った状態で持ってきたのだろう。中には氷が溶け残り、飲んだそばから体の熱がすっと引いていくのがわかる。
木々の隙間を抜ける風が、汗ばんだ肌に心地いい。
「ねえ
「もう近いよ。だいぶ歩いたからね」
「しっかし当時の俺たち、子供の足でよくこんなとこまで来てたよなあ」
誰に向けるでもない
「子供だからこそ、じゃないかな。あの頃はこの山全体が遊び場みたいなものだったし」
「――それは
「…………」
無言で立ち上がった
「いって!」
二発、三発……止まらない蹴り。誰も止めようとはしない。
「いって! いってっ!!」
たまらずその場を離れる
「あ!
こうして休憩はなし崩しに終了し、一行は再び神社を目指して歩き出した。
「……そろそろ、だよね?」
「ああ」
数分も歩かないうちに、周囲に見覚えのある風景が広がり始めた。
「ここを曲がれば――」
道が大きくカーブしている場所を抜けると、その先に廃神社が姿を現した。
二本の大杉に左右を挟まれて、ひっそりと建つ神社。
建物自体は以前とさほど変わらない様子が見て取れるが、周囲の緑は当時よりも濃く感じられる。
「やっとだーー!!」
事実、目的地が視認できたことで一気に元気が湧いてくる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます