フューズド・ワールド。〜迷宮の天使〜

猫野 尻尾

第1話:異類婚姻譚(いるいこんいんたん)

俺の住む世界はふたつの世界が融合しちゃった世界。

人間界と天上界。

ここには俺たち人間と神様に天使たちがいて仲良く暮らしている。


最初にそんなことが起きたのは俺が生まれるずっと昔のこと。

天と地が融合した時はみんなパニクったみたいだ。

だから、お互いの思惑もあったし環境、風習が違うから統制がとれないってこと

も起きたらしい。

だけど、人間は人間、神様は神様の世界と、それぞれの統治を分けることで

お互い認め合い世界は協力し合う様になった。


だから、今は均等を保って平和が続いている。


俺の通う高校にも同級生に天使が半分くらいいる。

そのなかで女性の天使が三文の二、残りは男の天使

性格は女性の天使は甘くて「優しい」男性の天使はしょっぱい「冷たい」


で、俺の家の隣に住んでるのが天使の「ネンネ」

「ネンネ」はガキの頃から兄妹みたいに育った仲のいい幼馴染。

同い年だけど俺の妹みたいなもの。


ネンネの背中には天使特有の羽根はない・・・もう地上に降りてくることも

ないから生まれた時に外科手術で取ってしまってる。

俺にとっては人間の女も天使の女も同じ。

人間だから天使だからって偏見はない。


「で、俺の名前は「東野 絵伝 《ひがしの えでん》」」現役高校二年生。


ネンネとは同い年だから俺と同じクラスにいる。

一緒に仲良く高校にも通っている。

お互い好き同士だけど、俺はネンネがあまりに近すぎてそれが家族に対する

愛なのか恋人に対する愛なのか、よく分からないでいる。


ネンネは俺のことを恋人だと思ってるみたいだ。

だから顔を合わすたびにハグされるし、チューもされる。

俺もそういうコミュニケーションは嫌いじゃないからネンネの好きにさせている。


ネンネも他の女性の天使と同じで甘々・・・っていうか純粋なんだろうな。

人を疑うことを知らないし、なんでもすぐ信じてしまう。

優しくされると、すぐその人を好きになっちゃう癖がある。


僕がいつもそばにいてブレーキをかけてないと、騙されて悲しい思いを

することにもなりかねない。

でも、そういう純粋な気持ちはなくさないで欲しいとは思うね。


この間もクラスのイケメン君に告られて嬉しくて「いいよ」って言った

らしい・・・。

だから俺はそいつの素行を調べてみた。

そしたら、とんでもないヤリモク、ヤリチンなやつで、ネンネみたな寝んねは

即、食い物にされてしまうに違いない。

散々もてばれて捨てられるのがオチだ。

下手すると仲間を集めて・・・・ああ、想像したくない。


「ネンネいいか、あいつはよめとけ」


「なんで?」


「あいつは周りの評判がめちゃ悪い・・・とんでもないやつなんだ」

「だから誘いに乗っちゃダメだからな」


「だってネンネには優しいよ」


「ネンネだけじゃなくて女なら誰にでも優しくしてんだよ」

「どっちにしてもあいつはダメだからな」

「デートに誘われても断るんだぞ」


「だいいち俺がいるだろ?」


「そうだね・・・大丈夫・・・私もバカじゃないから」

「そんなに私のことが心配?」


「あたりまえだろ?・・・心配に決まってるだろ?」


「絵伝は口だけだもんね」

「今までデートに誘ってくれたこと一度もないもんね」


「それはさ・・・普段から一緒にいるからだろ?」

「改めてデートに誘うほうがわざとらしくないか?」


「可愛い彼女を放っておいたら虫がついちゃうよ」


「今以上にどうしろって言うんだよ?」


「子供の時からずっと一緒にいるんだから普通の恋人より長く付き合ってる

んだよね、ネンネと絵伝って・・・長すぎるくらいだよ」

「天上界ならとっくに他の男子の天使と結ばれてるよ」

「このまま絵伝がなにもしないままなら私の未来は迷宮だよ」


「このこと前から言おうと思ってたの」


「おれに?・・・俺にネンネのこと誘えって言うのか?」


「待ってるんだよ、私」


「そりゃまあ、俺は男だしネンネは女だから意識しないって

言ったら嘘になるし、その・・・エッチは考えなくもなかったけど・・・」


「いいのか?」


「だから、さっきからそう言ってるでしょ?」

「私は絵伝を待ってるの・・・私を迷宮に落とさないで」


ってわけで今の世の中、人間と天使のハーフやクォーターなんて珍しく

ないけど・・・我が家もご多分にもれずハーフの赤ちゃんが生まれた。

ネンネは未熟なまま母親になって俺は立派な「自分でそう思ってる」父親になった。


いずれはこうなることは薄々感じていたことだけど・・・。


俺とネンネの子供の未来のためにも人間界と天上界が融合したこの世界が

平和を保っててくれることを願うばかりだ。


おしまい。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

フューズド・ワールド。〜迷宮の天使〜 猫野 尻尾 @amanotenshi

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ