残念系女子✘九条葉月のゆるい怪異考察
乙希々
第1話 九条葉月は張り込みたかった。
「──ねぇ〜、
「嫌です。私を巻き込まないでください。迷惑です。どうか一人で勝手に呪われてください。このオッ◯イお化け……、四ね」
「お、いきなりのディスり? もうセンパイ、悲しくて泣いちゃうよ〜。本当に本当に泣いちゃうんだからね〜。えーんえーん(ウソ泣き)、やーい、礼の貧乳──って、ちょちょ、ちょっと、へぶしっ!?」
ジメジメとした小雨が
とある地方のとある県立高等学校、その由緒正しき旧校舎二階の片隅にある備品倉庫──いいえ、ミステリー研究室にて。
私ことミステリー研究会初代会長、
「う、う、う、痛いよ〜(箱ティッシュでダラダラ流れる鼻血を拭きながらのマジ泣き)」
「仕方ないですね。そこでセンパイに泣かれるとマジウザいので、いちおうお聞きしますが、その野外活動とやらは、一体いつ何時どこで何をなさるつもりですか?」
ペラリと分厚い本を
だがそこがまた良い。
身長150センチもみたない黒髪おかっぱの幼女……こほん、かわいい後輩女子だし、実に最高だよね。狭い部室の片隅で体育座りをしている姿なんて、何処ぞの座敷わらしなの? きっと我らミス研を幸福に導いてくれるに違いない。取りあえず部への昇格をお願いします。南無南無南──。
「そこで不気味な笑みを浮かべてわたしを拝まないでください。心底キモいです。これから変態さんとして通報します」
昔ながらの黒カバンからゴソゴソと古びたガラケーを取り出す礼。
「いやいやちょっと待って!? それより課外活動の件よね! 副会長、よくぞ私に聞いてくれました!」
「勝手に自分を副会長に任命しないで欲しいです。それよりも早く
「言っての〝言〟の漢字きっと違うよね? それよりも聞いて聞いて──」
今回、私が企画した野外活動。
それはずばり、あらゆる都市伝説サイトで必ずと言っていいほど数多く噂になっている、
『あの世と繋がる公衆電話ボックス』についての検証だ。
このスマホ全盛期な令和の時代で、もはやその存在自体を維持するのも困難となった昭和の遺物──公衆電話。聞くところによると、その設置台数はピーク時の90年代に比べて、現在ではその約9分の1まで減少しているらしい。
私たちが住む街も例外ではなく、この周辺でも数少なくほとんど見かけなくなった。そこでふと気になり、市内に置ける今現在の設置数を検索したところ、その台数は数えるまでも無かったが──その中にかなりいい感じの場所に設置された公衆電話ボックスを私は運良く発見してしまった。
街から遠く離れた郊外の橋の片隅にある誰も彼にも忘れられたかのようにポツンと一台の寂れた公衆電話ボックス──うーん、これって如何にもって感じだよね!
しかも意味深に電話ボックスの全体像がオカルト掲示板に大きく貼られてるし、これ絶対に何かあるに決まっているでしょ!
「──ってことで、私たちミス研の出番だよ!果たしてその電話ボックスは霊界との入口なのだろうか? 勇気ある我々の運命は如何に──早速、今週の土曜日の夜から日曜日の明け方まで張り込みするよ! 何ならたくさんのお菓子を持ち込んでアツアツな恋バナで盛り上がっちゃう? それでそのまま二人で熱い夜を……ゲフンゲフン、ええっとね〜、名付けて心霊女子会〜♪」
「……………………………………………………………………………………………………………………………………嫌です」
「ええ〜、なんでかな? ねぇねぇ、だったら第二プランの心霊キャンプ……」
「うるさいです」
「んもう、こうなったら第三プランの──、」
「……いっぺん◯んでください」
◇
── 〜ミステリー研究会活動報告記録〜
今週末に予定されていた野外活動及び懇親会は一部会員都合により急遽中止となりましたのでご報告。
尚、今月発行予定の『第十三回 どんとこいオカルトミステリー』は以下の内容となります。
《怪奇 女子更衣室に現れた小さいオジサンの謎に迫る》
《死に戻り男子生徒独占インタビュー》
《旧校舎に顕現した座敷わらしの考察》
ミステリー研究会会長 九条葉月
◇
今回貴殿が提示された同好会報誌は一部記事の内容が不適切と判断し、発行は認められません。
尚、現在ミステリー研究会に所属されている会員数は一名のみです。至急正確の人数の開示をお願いします。
生徒会執行部
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