松蓮企画

芽生えの湿原／月枝しすず(ゲッシシスズ)

　水面が、波打つ。

　湿地の中に立った。薄暗い森に囲まれた場所だ。

　少女は髪を濡らす。不思議な植物を両手で抱えた。アーティチョークのような蕾が固く閉じる。

　根が絡まり合った。湿った大地の上で根を握りしめる。水は冷たくひんやりした。

　少女は小川に足を浸けた。蕾を眺める。唇にそっと当てた。

　彼女の手のひらは黒く汚れていた。根が土をかすめる。遠くでフクロウが鳴いた。

　湿地は静かだ。辺りの霧が薄れ始める。少女は草むらに座り込んだ。

　湿った大地に両足を埋めた。風が静かに彼女の髪を揺らす。蕾を抱き締める手が微かに震えた。

　水辺に枯れた草が見える。水鳥が岸に沿って飛び去った。少女はアーティチョークのような植物を胸に押し当てる。

　根は冷たい。しっかりと絡み合っている。森の奥から鳥のさえずりが聞こえた。

　湿地の匂いが鼻をついた。少女は鼻先を掻きながら蕾を見つめる。花弁の隙間から淡い光が漏れていた。

　根がゆっくりと脈動する。彼女の足元の水が揺らいだ。少女は蕾を傾ける。

　花弁の先がわずかに開いた。そこから薄い光が水面を照らす。冷たい風が湿地を包む。

　彼女は髪を耳にかけた。蕾に近づく。森から低いざわめきが聞こえた。

　少女は蕾を覗き込む。根が彼女の指先を絡め取った。花弁が淡い光を放った。

　辺りが一瞬明るくなる。風が強まった。彼女のスカートがひらひらと舞う。

　蕾の根は彼女の手に絡みつく。花弁はゆっくりと開き始めた。少女は口を開けて見つめる。

　蕾から濃い紫の花が顔を覗かせた。少女は蕾をしっかりと抱える。根はさらに彼女の手に絡みついた。

　森の木々がざわめく。彼女は蕾を顔に近づけた。湿地の水が波立つ。

　少女は立ち上がった。小川に足を踏み入れる。蕾を胸に押し当てて小川を渡った。

　彼女の足跡が水面に残る。鳥の鳴き声が遠くに響いた。湿原の奥で光が瞬く。

　少女は蕾を抱えたまま奥へ進んだ。湿った地面がぬかるみ彼女の靴が泥に埋まる。

　彼女は蕾を握りしめた。花弁がさらに開く。木々の間から月が覗いた。

　少女は息を呑む。月の光が蕾に映り淡く輝いた。根がゆっくりと解ける。

　彼女は蕾を胸に押し当てた。湿原の中心に立つ。彼女の足元で水が揺れた。

　冷たい風が彼女の髪を撫でる。蕾がわずかに震えた。花弁がすべて開く。

　花弁の奥から淡い光が漏れた。少女は蕾を顔に近づける。冷たい空気が彼女の肌を撫でた。

　森の奥で何かがざわめく。彼女は蕾を見つめた。湿原の水面が波立つ。

　少女は足を踏み入れて奥へ進んだ。蕾を胸に押し当てる。花弁が光を放った。

　風が彼女の髪を舞い上げる。森の中で枝が折れた音がした。少女は立ち止まる。

　蕾を握りしめて振り返った。何も見えない。水面に花びらが一枚落ちた。

　湿地に霧が立ち込める。少女は蕾を抱えて歩き続けた。根が手から解けて水に広がる。

　彼女は蕾を見つめた。花弁から光がこぼれる。森の中で風が鳴った。

　少女は蕾を顔に近づける。根が彼女の指先に絡まった。淡い光が彼女の顔を照らす。

　森の奥で鳥が鳴いた。水面に月の光が反射する。少女は小川に足を踏み入れた。

　蕾を胸に抱きしめる。根が彼女の手に絡みついた。風が水面を揺らす。

　湿原の奥で光が揺れた。少女は蕾を抱えたまま歩き続ける。冷たい風が彼女の髪を撫でた。

　森の中でフクロウが鳴く。水面が波立った。花弁の奥で光が脈動した。

　少女は蕾を胸に押し当てる。根が彼女の指先に絡みついた。彼女は水面を見つめる。

　森の中で風が鳴った。湿地の奥で何かがざわめく。少女は立ち止まった。

　蕾を握りしめて振り返る。森の中に何かが見えた。光が瞬く。

　湿原の中心で立ち尽くした。蕾が微かに震える。根が彼女の手に絡みついた。

　花弁がゆっくりと閉じる。風が水面を揺らした。少女はゆっくりと息を吸う。

　蕾が完全に閉じた。彼女は水面を見つめる。

　森が、静まり返った。