龍の子、美味なるご飯を食わんと欲す。
こはる
ちまきがたべたい!
第1話 王様、反抗期
「して、
国王が執務する宮殿・
肥え太った男は、震えあがりながら、「ございません」とうずくまる。
「ええ、主上を害し奉ろうとしたのはこの私でございます!!」
四十手前の男は整っている口の端をつりあげた。
珠理は十五歳の国王。女だが、衣服に頓着しないので男装している。派手な衣装を着て断罪している男は珠理の父親。「国父」とよばれる執政・
断罪されているのは、大貴族の一人、魏寧。
昨日、散歩中に屈強な男に襲われかけた。幸いことなきを得たが、その際、屈強な男は拷問で魏寧の名を吐いた。
父の執政はその日の夕方に魏寧を捕らえた。それで、今日の朝からここ、龍政殿で魏寧を尋問している。
しかしながら、珠理は父の行動にむかついていた。もう十五なのだし、いい加減自分で政務をとらせてほしい。父は「まだ十五だ」と反論するが。
――魏寧は、私を殺そうとしてたわけじゃないと思う。
確証があるわけではないが、なんとなく魏寧のつぶらでかわいい瞳を見るとそう思う。
だというのに、父は勝手に話を進めてしまった。
「では魏寧、さらにとくと調べるゆえ、――禁軍右将軍、これへ」
「は!」
禁軍右将軍が前に出る。魏寧を、俵を担ぐようにひょいと担ぎ上げ、どこかへ消えてしまった。
やや猪突猛進な珠理は「やっぱ言おう」と思い、父に向かって反論した。
「父上!」
「どうしました、主上。あと、公の場で『父上』はおやめください」
「……執政、魏寧は悪い人のようには見えなかった。つぶらでかわいい瞳をしていたから」
父はそれを見て、目眩がしたように目をまたたかせ、そのあと失笑した。馬鹿にされた気分がする。
「主上、なりませぬなあ。もう、ちゃんと調べました。お聞かせしましょうか。魏寧は数カ月ほど前、ある程度の自分の配下を野に放ち、信用できる配下だけを残した。武器を輸入した。また、北部の鉄が取れる鉱脈から、鉄を急いで買い付けている。塩も買い付けている。屋敷からは大量の武器と、主上暗殺計画の概要が書かれたぶあつい冊子が置いてありました。というかあの男、頻繁に妓楼に出入りし、『国王の珠理と龍主の
まるでかばいようがない。だが、珠理はかばうために頭を働かす。反抗期だからだ。
「しかし!」
「しかしもなにもあったものではありません。奴の謀反はほとんど事実です。これから詳しい話を聞きます」
父の言葉に、珠理は逆らう言葉を持たない。それが悔しかった。反抗期だからだ。
――ああ、父上のよく回る舌と頭を封じたい!!
珠理は王の礼服、
父が追い打ちをかけた。
「主上、
もともとこの国は龍が治める国だった。しかし、龍たちは人と交わるなかで腐敗した。周囲を頻繁に襲うようになり、乱倫を繰り返し、賄賂など日常茶飯事だった。
となれば国は破綻寸前となる。それを変えたのは、禁軍左軍将軍の瑛傑の英断だった。彼は謀反を起こし、愛人であった王国の末王女との間に儲けた自分の子たちのうち、姉を玉座につけた。さらに弟を「龍主」とし、祭祀をとりおこなわせた。そして自分は実権を握った。
国は見る見るうちによくなっていった。
反面、国王の珠理は十五歳になり、この時期の娘の常として、父親を見るとどんどんと腹が立ってたまらなくなっている。
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