スライムとヒュージスライム
出てくるのはスライムばかり。適当に手を突っ込んで、核っぽいものを抜き取って倒していく。ものすごく弱いね、スライム。有名なゲームだと確かに最弱だけど、普通に考えたらすごく強そうなのに。
「ちなみにこの世界のスライムが弱いのは、リオンさんのイメージに合わせたためです」
「おい」
『草』
『お前のせいじゃねーか!』
『かわいそうなスライムくん……!』
いや、待ってほしい。確かにボクのイメージかもしれないけど、そのイメージを植え付けたのはすごく有名なゲームだ。だからボクは悪くない!
『ところで、自衛隊と全然会わないな』
『さすがにどっかで会いそうなもんなのに』
「あー……。そうだよね。実際のところ、このダンジョンの広さってどれぐらいあるの?」
縦にはもちろんそれなりの深さがあるんだろうけど、今気になってるのは横の広さだ。小さいダンジョンなら、どこかで巡り会ってもおかしくないけど……。
「日本ぐらいならすっぽり入る大きさですかね」
「え」
『え』
『なんて?』
日本……日本!? しかも、すっぽり入るぐらいの大きさってことは、もっと大きいってことで……。なんか思ってたよりとんでもない広さになってない、ここ!?
「ちなみに、同じ入り口でもいろんな場所に繋がってます。逆にどの出口でも出る場所は同じです。なのでライバルとか気にしなくても大丈夫!」
「大丈夫、じゃないよ! え、それ、二層目とかどれだけ探しても無理じゃない!?」
「ご安心を! ボス部屋はたくさんありますから!」
「安心していいのかなそれは……!」
ダンジョンが意味不明すぎてもう怖い……! むしろそんなダンジョンを一瞬で作ったこの女神が怖い! やばすぎるって!
アスティに対してちょっとだけ恐怖心を抱いている間に、なんだかとても広い部屋にたどり着いた。学校のグラウンド程度の広さがある部屋で、その部屋の奥に大きなスライムがいた。あれが、ヒュージスライム、かな?
「来ちゃったよ……」
『ボス戦キタアアア!』
『はえー。でっかいスライムですね』
『スライムにねちょねちょにされるリオンちゃんが見れるわけですね』
「死ねお前ら」
「ねちょねちょリオンさん……。ぐへへ……」
「おいクソ女神、何想像してるのさ」
『草』
『やはり紛う事なき邪神』
『俺らが言うのもなんだけどやっぱこいつやべーわ』
知ってるよ。だからこそどうにかしたいけど、どうにもならないよ。
ため息をついて、大きいスライムを見据える。他のスライムみたいに核だけ取り出す、なんてことはまずできないけど……。だからこそ、どうすればいいんだろう。
「作戦を考えないと……。どうやって核を取り出すか……」
「え?」
「え? って、なにさ」
「いえ、だって……。魔法は使わないんです?」
魔法。あ、そうだ。そういえば、ダンジョンに入ると魔力を使えるんだっけ。いやでも、使い方が全然分からないんだけど……。
「どうやって?」
「え……。分かりません? 自然と理解できるはずなんですけど……」
「分からないけど」
「あれー……?」
あれ? じゃないよ。ハンデありで潜ってたようなものじゃないか。断固として抗議したい。
アスティは少し考えているみたいだったけど、あ、と手を叩いて言った。
「分かりました! 私が転移で連れてきちゃったせいで、習得タイミングを逃したみたいですね! うっかりうっかり!」
「言いたいことはそれだけ?」
「すみませんでした!」
思わず大きなため息をついてしまった。勝手に拉致しておいて、魔法を覚える機会すら奪われて……。ひどくない? もう帰ってもいいよね?
「帰っていい?」
「わーわーわー! すぐ対応しますから!」
アスティはそう言うと、指を軽く振った。するとすぐにボクの目の前に何かが出てくる。半透明のカードみたいなもの。ボクの名前と、魔力という項目がある。他は特にない。
そしてそのカードを手にした瞬間、魔力の扱い方がなんとなく分かった、ような気がした。このカードに触れると覚えられるってことかな?
「いわゆるステータスカード、というものです。ダンジョン内でステータスと言いながら出したいと念じれば、いつでも取り出せます」
『ステータス!』
『ダンジョンの王道キタコレ!』
『力とかスピードとかあるんですね分かります!』
「ないです」
『え?』
うん。確かに、ない。項目は魔力、ただそれだけ。
アスティが言うには、数値化できるのは魔力だけで、そしてそれだけあれば十分らしい。その魔力で身体強化とかを行うから、筋力よりも魔力が大事なんだとか。
もちろん筋力がある方がいいらしいけど、魔力の方がやっぱり重要度は上なんだって。
ちなみにボクの魔力は測定不能。杖のせいだと思う。何も言うまい。
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