家族の反応
夜。ボクは自室のベッドの上で目を覚ました。いつもの見慣れた部屋だ。パソコンやゲームもちゃんとある。
ああ、そうだ。やっぱり夢だったんだ。へんなゆめをみたなあ!
「おはようございます、リオンさん!」
「くたばれ邪神が!」
「開口一番それですか!?」
ちくしょう! やっぱり夢じゃなかった! このカス、やっぱり現実にいやがる……!
ボクの目の前にいるのは、女神アスティ。そして、お母さん。
「うえええ!? ママ上! ママ上なんで!?」
「落ち着いて、けんちゃん。あなたママ上なんて呼ばないでしょう」
「呼ばないけど……! いや勝手に入ってこないでよ! 鍵もかけてたはずなのに!」
「そこの女神様が開けてくれたけど」
「ほんっとクソ女神だな!」
「ごめんなさい!?」
ボクにもプライバシーがあるんだよ! 家族が来たからって勝手に開けられると困る!
アスティはどことなく申し訳なさそうな顔をしてるけど、どうにも信用できない。こいつはあれだ、人の心が分からないってやつだ。
「そんなことより、けんちゃん」
「あ、はい」
お母さんがじっとボクを見つめてくる。ボクは思わず居住まいを正した。とても真剣な顔をしていたから。
ちなみに家族からはけんちゃんと呼ばれることが多い。ボクの名前が健太だから。
「けんちゃん、なのよね?」
「あー……」
顔を触ってみる。もちもちほっぺただ。そして視点もいつもより低い。持ち上げてみた髪も銀髪。つまりは、あのまま。夢であってほしかった。
「健太です……」
「そう……。配信を見ていたから分かっていたけど、なんとも不思議なことになったわねえ」
「いつも思うんだけどどいつもこいつもボクの配信を見るのやめてくれない?」
ボクの配信は家族みんなが知ってるからか、暇な家族はよく見てるらしい。なんなら過去の配信の記録があればそれすらも見てるらしいから、正直ちょっと恥ずかしい部分がある。
もう開き直ってるけどね。気付いた時には手遅れだったし。
「晩ご飯にしましょう。ちなみにアスティ様、でしたっけ? いります?」
「いただきます!」
「少し遠慮しなよ……」
「リオンさんのご家族と仲良くなれるチャンスです! あわよくばこのまま公認に……!」
「少しはその欲望を隠せよ……!」
いや、家族が配信を見てたってことは、隠す意味もないんだろうけどさ! それでもちょっと気持ち悪いよ!
お母さんと一緒に部屋を出て、階段を下りてリビングへ。細長いテーブルがあって、すでにボクの姉弟が座っていた。お父さんは、多分まだ仕事だと思う。
「わ! けんちゃんほんとに女の子になってる!」
最初にそう言ったのは、姉さんだ。黒髪ロングの美人さんで大学一年生。姉さんはすごい勢いで寄ってくると、すぐにボクのほっぺたを触り始めた。むにむにと。
「わあ! ほっぺたもちもちだ……! かわいい! けんちゃんかわいい!」
「やめろよぉ……」
くそ、家族にはいろいろ心配かけてきてるから、抵抗しにくい……! うにゅおおぉ!
「アスティ様!」
「はい!」
「ぐっじょぶ!」
びっと姉さんが親指を立て、アスティも満足げに頷いて親指を立てた。
「グッジョブ、じゃない! 姉さんは弟がこんな姿になって何も思わないの!?」
「弟が妹になった程度で動じる姉がいるか!」
「普通は動じるんだよバカ姉!」
むしろ動じないあんたはなんなんだよ……! 受け入れるなよ異常事態だぞ!
そう叫んでいる間に、もう一人、弟が寄ってきた。短い黒髪の、結構かっこいい系の男の子だ。兄のひいき目もあるとは思うけど。ちなみに中学一年。
弟はボクをじっと見て、そして言った。
「俺、兄ちゃんになった……!?」
「落ち着け弟! お前までボケに回ったら兄ちゃんはとても困る!」
「兄ちゃんは俺だよ?」
「ちくしょうだめだこの家族!」
どいつもこいつも受け入れるのが早すぎる! あとこのままだと末妹の扱いをされそうだ! さすがに、長男としてのプライドがあるんだよボクにも! だから、弟! お前だけでも……!
「姉ちゃん、かわいい服を買ってあげないと。かわいそうだよ。妹は大事にしないと」
「そうだね! よっし、明日は大学をさぼって服を買いに行くぞ! 付き合え弟!」
「任せろ姉ちゃん!」
「任せろじゃないよ! 母さん! 堂々とサボる発言してるよ! 親としてどうなの!?」
姉弟だけだとこのまま突っ走りかねない。ここは保護者である母さんに引き締めてもらわないと……。
「あらあらうふふ」
「ぬあああああ!」
笑ってる場合じゃないんだよお! もうなんなんだよこの家族ちくしょうめえええ!
「いいなあ……」
アスティは羨ましがってるんじゃない! 全然良くないから! 変な家族だから!
誰か! 具体的に言うと父さん! 早く帰ってきて切実に……!
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