第23話 エルフは占いができるらしい

商業ギルドのマスターヨニールに聞いたところ、鐘は街に魔物が侵入した事を知らせるものだそうだ。


また、街の上空には結界が張られているそうで、飛行型の魔物の侵入を検知するらしい。魔物ではない鳥などは検知しないらしいので、魔力量を測定しているのだろうか?






それからしばらくして、俺はまた街へ行った。


空から侵入すると騒ぎが起きると学習したので、今回は壁抜けする事にした。


街の外壁の、門から死角になる場所に降下して、壁の裏側を空間魔法で走査スキャン


障害物がない場所を確認して、転移する。壁の中に転移したくないからな。


おっと、どこかの家の裏庭に出てしまった。家主が椅子を置いて寛いでいる。


一瞬目が合った気がしたが、もちろん認識阻害の魔法は掛けているので、家主が反応する事はなかった。


認識阻害を掛けているとは言え、次はもう少し広い範囲を精細に走査スキャンしてから壁抜けする事にしよう。


そっと家主の脇を通り、玄関から表に出る。【認識阻害】がしっかり仕事をしているので、家主は気づいていないようだ。俺はもうすっかり猫なので、人間に興味がないので問題ないが、この魔法、覗き趣味の奴が身につけたらヤバい事になりそうだ。


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再び商業ギルド。門番は前回と同じ人物で、俺を見るなり身分証を出すまでもなく中に招き入れてくれた。


「これはカイト様、いらっしゃい」


「ええっと、マスターロデス、だったかにゃ」


「はい、覚えて頂いて光栄です」


「前回来た時は居なかったにゃ」


「ええ、申し訳ありませんでした。ちょっと領主様に呼ばれておりまして。ヨニールに対応するよう命じておきましたが、失礼などございませんでしたか?」


「大丈夫にゃ。というかロデスさん、あんた、随分偉い人だったらしいにゃ?」


「偉くはないですが、一応、商業ギルドのトップという事になっております。先祖が商業ギルドを立ち上げた人物だと言われております」


「へぇ。そのお偉いさんが、にゃんでこんな辺境に来てるにゃ?」


「それは、どうやらあなたのせいのようですよ?」


「どういう意味にゃ?」


「実は …家族の中に占いができる者がおりまして。このあたりに大儲けできる星回りが来ていると言いましてね。チャンスを逃さないために、私がやってきたというわけです。実は我が一族は、代々占いを利用して商売を成功させてきたのですよ」


「ほえ、そうにゃ。それで、なんで俺が関係あるにゃ?」


「はい、カイト様との出会いこそが、その占いに示されていた商機であったと、私は確信しております」


「そ、そうにゃ…。まぁまた魔物の素材売って欲しいなら出すにゃよ?」


「是非! カイト様の売って下さる素材は、この周辺では手に入らないものばかりですから。とても高く売れるのですよ」


「そういえば、オークションはどうなったにゃ? 高く売れたにゃ?」


「ええ、それはもう。例えばキングデビルべアは、カイト様から買い取らせて頂いた金額の百倍の値段で隣国の商人に落札されました」


「百倍か。儲かってよかったにゃ」


「怒らないのですか?」


「なんで怒るにゃ?」


「いえ、百倍はさすがに儲け過ぎです。これでは商業ギルドがカイト様を騙して不当に安く買い取ったと誹りを受けてもおかしくはない。そこで、売上の九割をカイト様にお返ししたいのですが、小金貨でそれだけの枚数を集めるのが難しく、もうしばらくお待ち頂きたいのです…」


「べつにいらないにゃ。安く買った商品を高く売れる場所に持って行って儲けるのは商売人としては当然の行為にゃ」


「さすがカイト様です、商売についても精通しておられるのですね。ですが、それで甘えるわけには行かない事情もございまして」


「事情?」


「はい。一度きりの取引ならばともかく、商業ギルドとしては、今後も末永くカイト様と取引をさせて頂きたいと考えているのです。そこで、契約を変更させて頂きたいのですがいかがでしょうか? 前回の取引も含めて、“買い取り”ではなく、オークションへの“出品代行”とさせて頂きたいのです。商業ギルドは手数料として、落札金額から一定の割合の金額を頂き、残りはすべてカイト様にお支払いするという契約です」


「んー、でもそれだと、オークションが終わるまで金が入らにゃいのでは?」


「はい、そうなりますが…。それに関連して、カイト様にもう一つお願いしたい事がありまして…」


「なんにゃ?」


「カイト様は金貨での買い取りをご希望されていますが……受け取ったお金をどうされるおつもりですか?」




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