第22話 まさか、騙されたにゃ?!
「あ……」
やっちまったか?
……ま、いっか。
どうやら街の上空には、おそらく空を飛ぶ魔物を警戒してだろう、結界が張られていたようだ。
その結界を割って俺は侵入してしまったようだ。
すると、街の中心部のほうから鐘が鳴り響き始め、街の人は家の中に避難。衛兵や騎士が街中を走っていく様子が見えた。
空から魔物に侵入されたと判断し、対応に出てきたのだろう。
「……」
俺は気付かなかった事にして、商業ギルドへと向かった。
【認識阻害】の魔法はまだ切っていないので、俺の事は誰も気にしない。
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商業ギルドに着き、認識阻害の魔法を切ると、ギルドの門番がいつのまにか目の前に居る俺に気づいて、少しだけ混乱したように見えた。
【認識阻害】は、見えなくなるわけではない。見えているが、意識されないだけなのだ。元から見えているので、転移のように何もないところから突然現れたようには見えない。
だが、目の前に来るまで警戒していなかったというのは、責任感の強い門番であれば気にする事かもしれない。
門番には悪いことをしたか?
…まぁどうでもいいか。
俺はVIPカスタマーカードを門番に見せる。
門番は丁重に俺を中に入れてくれ、急いで担当者を呼びに行ってくれた。
すぐに受付嬢に応接室に案内され、お茶が出された後、恰幅の良い中年男性がやって来た。
『初めまして、当ギルドのマスター、ヨニールです』
「……マスター?」
「はい、そうですが?」
「おかしいにゃ。前回会ったロデスという男はマスターと呼ばれていたにゃ……まさか、偽物に騙された?!」
「いや、それともお前のほうが偽物の可能性もあるか…?」
「ああ、いえいえ、違います、すみません。私はこの街のギルドのマスターですが、マスターロデスは、マスターはマスターでも商業ギルドのグランドマスター、いわば、全商業ギルドのトップのお方です」
「全商業ギルドのトップ? …それって、すんごい偉い人にゃのでは?」
「ええ、そうです。実は私も直接お会いしたのは今回が初めてでして。まぁ神出鬼没な方なので、どこに現れるかは読めないのですが」
「何か重要な用事があって、わざわざこんな辺境の街までいらっしゃったようです」
「へぇ……ま、どうでもいいにゃ」
「金の用意はできているかにゃ?」
「はい、マスターロデスから承っております」
ヨニールが合図すると、袋が数個乗せられたワゴンが運ばれてきた。
「すべて小金貨にてご希望という事だったので、このような量になってしまいました。いや、集めるのに苦労いたしましたよ。できたら今後はギルドに口座を作って振込という形にさせて頂けると助かるのですが…。ギルドカードがあれば全世界のどの商業ギルドでもお金は引き出せますので便利ですよ?」
「無理にゃ。ギルドカード持ってないし」
「すぐにお作り致しますよ? 簡単にできますので…」
「遠慮しておくにゃ。ギルドカードを作るという事は、商業ギルドに所属するという意味にゃろう? 俺はどこかの組織に所属する気はないにゃ」
「…左様でございますか。しかし、これだけの金貨、持ち運ぶのも大変だと思いますがどうされる……おお!」
俺は金貨の入った袋を【収納】してしまう。一瞬で消えた金貨にヨニールが驚いている。
「これは…収納魔法がつかえるのですね? なるほど…これが賢者の力ですか」
ちなみに小金貨で要求したのは、街で買い物をしたときに大金貨を出したらお釣りが出せないと言われたからだ。
街の庶民の店では正直、小金貨でもお釣りが厳しい事もあるらしい。とは言え、銀貨や銅貨で用意しろというのもさすがに枚数がとんでもない事になるので、小金貨で妥協したのだ。
すぐに収納したが、きちんと枚数が揃っているかももちろん確認済みだ。偽金貨でないか【鑑定】を使ってみたのだが、その際、袋の中の金貨の枚数まで表示されたのだ。これは便利だ。
その後、俺は倉庫に行って素材を収納から出して納品してやった。
「…はい、確かに。契約通りの数量素材が揃っているのを確認いたしました」
「他に何かご入用のモノはありますか? カイト様のご注文であれば最優先で用意するように申し使っております」
「んー、じゃぁ、スパイスが欲しいにゃ。街の市場で売ってるスパイスは全部買ったけど。この街にないようなスパイスが手に入ったら教えてほしいニャ」
「スパイス、でございますか。分かりました。世界中の商業ギルドに連絡をして、あらゆるスパイスを取り寄せましょう」
「頼むにゃ」
よしこれでカレーも作れるようになるかも?
「あ、もっと魔物の素材がほしければ出すにゃ。いるにゃ?」
「おお、それは是非……と言いたいところですが…、今納品して頂いた素材の処理が終了しないと、次にはとても手が回りません…」
「処理?」
「素材を解体して、その後オークションに掛けて売ります。今月末に王都でオークションが開催されますので、そこに運んで売る予定です。それが終わらないと、実は次の代金の用意ができない状況でして…」
「正直、金貨で支払えとなると、なかなか大変なのです。ギルドに口座を作って頂ければ、数字の処理だけになりますので、いくらでも取引は可能となりますが、いかがで~」
「ああ、いいにゃ。こっちは別に急がないにゃ。じゃぁ処理が終わった頃、気が向いたらまた売ってやるにゃ」
ちょっとがっかり顔のヨニール。
「…あ、そう言えば、なんかさっき鐘が鳴ってたけどあれは何にゃ?」
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