幼女TSしたのでダンジョン配信始めたらダンジョンクイーンって最強NPC扱いされてたお話。-NPCじゃないとバレたので有名配信者を目指します-
うにとかに
第一章
第1話 TS幼女化して半年が経ちました
「再生数27回ね」
1Kのアパートの中、俺は一人呟いた。
手に持っているスマホには、『チャンネル登録者:8人』の文字。そして画面には、俺が編集した動画である『ダンジョンの魔物解説#13』が流れている。
無料配布されていた3Dの男アバターを使い、ダンジョンで出会ったモンスターの倒し方、弱点を声有りで解説している。
とはいえ、その声はPCのボイスチェンジャーツールで変えたもので、今の俺とは似ても似つかない声だ。
ふぅ、と息をついて、床に寝ころぶ。自分の手を見つめると、そこには小さく柔らかな手。とても27歳の男とは思えない小さな手だ。
半年前のある日、俺の男という性別は過去形になった。
髪の毛の色も変わって、白髪に赤い瞳。身長も40センチ以上は縮み、中肉中背、一般男性だった面影どころか、俺の面影自体が無い。
家族にも友人にも信じてもらえず、職も失った。そんな俺がどこで生活費を稼いでいるかと言えば
「よし、ダンジョンに行くか」
ダンジョンの探索だった。
〇〇〇
「今の階層は地下84階...今日はこのあたりで録画するか」
薄暗いダンジョンの中、俺は中古スマホのスイッチを入れ、自分の姿が映らないよう、胸元のポケットに中古スマホを入れて配信を開始した。
配信、とは言っても、動画の素材にするための動画を撮影するだけだ。
俺の持っている撮影器具はおんぼろすぎて、長い動画を撮ると確定で動画データが壊れるという代物だ。だから配信を動画撮影用として使っている。
配信タイトルも【動画用】と付けているだけだ。
そして配信するのは、そのためだけではない。
『A様! 配信はじまりましたわ! 楽しみですわ!』
『お疲れ様です。先日の動画とても良かったです。今日も中層ですか?』
『お、配信やってんじゃーん。てかまたお嬢様コメント沸いてんじゃん草』
確認用のタブレットで配信を見ると、そこにはコメントがいくつか。
たった8人の登録者しか居ないチャンネルだが、マニアックな内容が受けたのか、こうして配信に来てくれる人が居る。
俺が動画作成を続けているのも、これが理由だ。この姿になって、全ての繋がりを失った俺にとって、こうしてコメント上でも話せる相手というのは嬉しいものだった。
ちなみにAと呼ばれているのは、それの配信用の名前。そのままエイと読む。俺の本名である【アキト】の頭文字を取った適当なものだ。
『配信主:はい、今日も中層です。今日はバイオリザードの討伐動画を撮影しようかと』
配信中、俺は必ずコメントで返信している。第一に誰かにバレるが怖いこと。そして何より、俺の戦闘スタイル上、隠密行動が第一だからだ。
『ふぁっ!? バイオリザードとか☆4つモンスですわ! さすが強いですわ!』
『地下1階から踏破チャレンジ配信すれば伸びそうなのにね』
『毎回一体倒して配信終わりなんだよな』
俺の戦闘スタイルはアサシン系。それも飛び切りの一撃確殺スタイル。失敗すれば逃げの一手。そして色々な都合上、倒せるのは1ダンジョン1体だけだ。
そしてひたすら隠密行動を同じ階で続けて二時間。ついにバイオリザードを見つけた。
両手の親指と人差し指をくっつけ四角を作り、遠方に居るバイオリザードの頭を枠の中央に入れて、心の中でつぶやく。
(バレットマーク)
すると、バイオリザード頭に、FPSゲームの狙撃カーソルのようなマークが浮かんだ。
これが、俺が持つ能力、バレットマークだ。
『うわ、バイオリザードにめっちゃ近づくじゃん』
『こいつ耐久高かった気がする。対策は遠距離攻撃じゃないの?』
『まったく、あいかわらず無謀ですわね。でもそんなあなたが素敵ですわ』
じり、じりとバイオリザードに近づく。近づきながら、俺は小型の銃を取り出した。
デリンジャー。もう骨董品レベルの銃。シングルデリンジャーと呼ばれる一発しか撃てない銃だ。
『やばいやばい近すぎだって』
『なんでこの人毎回こんな近づくの』
『ふっ、それはこの方が最強の†覇気†を持っているから...ですわ!』
『お嬢様うるさい』
近づく理由は簡単だ。一発外したら終わり。金が無くて単発の銃しか持ってない。生活がかつかつで弾も1発買うのがせいいっぱい。
だから出来るだけ深い階層に戦わず潜り、ドロップの多そうな魔物を倒す。
そうして近づいていると、バイオリザードがこちらに気づく。幸い、バレットマークは魔物には見えないらしく、たったいま俺に気づいたようだ。
その距離は1メートルも無い。この距離なら、頭に当てられる。
引き金を引き、銃弾がバイオリザードの頭に当たると同時に、バイオリザードの頭が吹き飛んだ。
『やっば...バイオリザードも一撃か...』
『さすがですわ! とんでもないバケモノ銃を扱ってるに違いありませんわ!』
『魔法でカスタムしてるのは間違いないな』
化け物銃どころか安物の骨董品なんだけどな...
バレットマーク。研究してわかったことは、マークの部分に攻撃を当てると、威力が飛躍的に伸びること。頭や心臓、その他魔物の弱点にマークを付けて攻撃すると、一撃に近い致命的なダメージを与えられる。
頭を吹き飛ばされたバイオリザードは塵となって消え、その場にはいくつかクリスタルが転がった。
今や俺たちの生活に欠かせないエネルギー源であり、俺の生活を支える戦利品だ。
『何で伸びないんだろうな』
『地味だから』
『それはそう。てかこれ動画用の録画代わりの配信らしい』
さて、バイオリザードの側まで近づく動画も撮れたことだし、配信は終わるとしよう。
では今日の配信はここまでにします。ありがとうございました、とコメントで打ち込む。
『おつ。解説動画期待してる』
『お疲れ様ですわ! 次回もお待ちしておりますわー!』
『お嬢様熱心なファンで草』
にしても、こんな登録者8人のチャンネルを好きになってくれるなんて...自分で言うのもなんだけど、物好きも居るもんだなぁ。
そうして俺は撮影用のスマホを持ってきたポーチにしまった。
『待って待って、この人配信きり忘れてる』
『おーい、気づいてないんかな?』
『ミュートにはなってる。配信切るボタンと間違えたパターンか』
さて、目的も達成したし、さっさと帰ることにしよう。
と考えていたら、上の階から地響きが。
他の探検者だろうか。確か上の階はモンスターハウスがあったな。来るときは避けたが、ある程度強ければ従来はボーナスステージのようなものだし、誰か足を踏み入れた可能性もありそうだ。
帰還の魔法で帰ることも出来るが、あれサービス料取られるんだよな...仕方ない。上が騒がしいが、徒歩で帰ろう。
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