少年漫画的に現代を救って78年後に目覚めたら、学園上位で「おもしれー女」って言うポジションについてしまった話

うにとかに

第1話 世界を救って78年

 俺は世界を救った。

 中学三年生。高校への進学が決まり、来る高校生活に思い褪せていたあの日。

 塵魔(じんま)とかいう化け物に襲われ、なんかそいつらを倒し人々を守っている組織に出会い、亡くなったと思っていた父親が烏天狗とかいう妖怪だったことを知らされ...

 その後は人知れず戦いに明け暮れる毎日。高校なんて行けたものじゃなかった。

 

 数々の人々、そして妖怪と呼ばれている存在に出会い、別れ、死別し、実は太古の昔は妖怪と人間が共存してたとか、塵魔自体が、人と妖怪の協力のもとに生み出された兵器だったとか、それを異界とか言う空間に封じ込めたとか、さらには異界と現世を融合させ、世界を滅ぼそうとする大ボス的な存在があらわになったりとか...

 さらには大ボスの体は、大ボスに敗北した父が体を乗っ取られてたりと、まるで漫画のような話。

 そして世界が異界と融合しかけた、あわやその寸前、俺は大ボスの元までたどり着き、それまで出会った仲間たちの思いを乗せて、最後の一撃を叩き込み、現世と異界は融合することなく、世界は救われた。

 

 その後は人と妖怪、そしてそれらのハーフたちが共存する世界となり、行方不明、おそらくは大ボスと刺し違えて果てた俺の笑顔が青空に浮かび、「俺は見守ってるからな」的なエンドを迎えた...

 

〇〇〇


「...ここは!?」


 だが俺はとある病室で目覚めた。体を起こし、あちこちにさされたチューブやら点滴やらを引き抜く。

 病室にある鏡を見ても、最後の決戦の時に負った傷は消え去っていた。しかし。

 

「少し...成長している?」


 俺の体の中の妖怪の血が目覚めたとき、俺の体の成長は非常に遅くなった。だから15歳から始まった戦いが7年続いても、俺の外見は若々しいままだった。

 しかし、今の俺を見ると、明らかに当時より身長が伸びている。それでも高校生くらいにしか見えないが。

 これはつまり。


「にゃにゃにゃにゃ! 黒魔王、アヤタカ様がお目覚めですにゃー!」


 病室の扉から現れた二本足で立つ猫又。その猫又に俺は詰め寄った。

 

「おい、何年経った!?」

「あなたの決戦から78年が経過していますにゃ」


〇〇〇


 78年。俺が寝ている間に色々あったらしい。

 最後の戦いのあと、20年ほどで復興が進んだが、30年目にして塵魔を異界へ封じた楔(くさび)という術式がほころび、かつてよりは圧倒的に少ないが、また塵魔が現れだしたこと。

 今は人と妖怪が手を取りあい、塵魔への対策をしつつ、平和に暮らしていること。


「そして貴方はこう呼ばれていますにゃ。黒い羽を纏い、魔の力を持って世界を救った王、『黒魔王』と」


 どうも俺の存在は、一種の伝説になっているらしい。

 俺は78年前の戦いから十年後にでボロボロの状態で発見され、ずっと病院...もとい研究施設的なところに入れられていたとか。

 

「むろん、邪な考えはありませんにゃ。我々としてもあなたの体は研究しがいがゴホンゴホン。あなたの体から得られた研究データを、平和のために使いたいと考えていたにゃ」


 目覚めたあと、俺の体は徹底的に検査された。どこも異常は無し。


「かつてあなたと共に戦った方が、あなたに莫大な遺産を残したにゃ。それを使って好きに遊ぶといいにゃ。もうあなたは何にも縛られないにゃ。だから、変な気は起こさないでほしいにゃ」

「そっか、あいつが俺に」

「でも、最後に、あなたの力がどれほど残っているか、確かめさせてほしいにゃ」


 そうして案内されたのは、地下深くに作られた闘技場のような場所。そこには俺の他に、4人の人型のものが立っていた。

 4人のうち、2人からは妖怪の気配を感じる。

 

「説明しますにゃ! この方々は各国の最強退魔師ですにゃ。左の老齢の男性は武者、進次郎! 日本最強の退魔師に40年間居続け、引退してなお最強と呼ばれる方ですにゃ! その次は中国よりやってまいりました、竜の力を宿して戦う女性、ダイリンさんですにゃ! 次はアメリカからやってきた、聖職者でありつつ最強の吸血鬼として名高い、レックスさんですにゃ! 最後はお隣の国からやってきた、純粋な破魔の力では世界最強格と名高い、イ・ミレ様ですにゃ! さぁさぁ遠慮はいりませんにゃ! この方たちと全力の戦いを! よーい、スタートですにゃ。にゃああああ!?」


 スタート、そういわれた瞬間、俺はわずかの力で全員を吹き飛ばした、竜の力だとか、武者の切り払いとか、なんか色々防御策を講じたみたいだが、そんなのも含めて、命を奪わない程度の簡単な魔力破で全部吹っ飛ばした。

 

「い、一瞬ですにゃ...いきなり本気とはさすが黒魔王ですにゃ」

「1%も出してないんだが」

「まじですかにゃ」


〇〇〇


 その後、俺は解放され、かつての仲間が残してくれた遺産のうち一つである豪邸...ではなく、小さなマンションの一室に住み始めた。俺の好みだ。

 あの猫又も俺の世話係...おそらく変なことを考えないかの監視係としてついてきた。

 各国の強者とか言うやつらを吹っ飛ばしてから、どうも猫又含め、なんかえらい奴らも俺の機嫌を伺うようになったらしい。

 最初は俺の目覚めを公表するつもりだったらしいが、あまり目立つのは嫌だったから公表はやめてもらうように掛け合った所、すぐに了承してくれた。

 

 俺はというと、暇な毎日を送っていた。かつての激闘の毎日が嘘かのような、平和な毎日。

 そんな中、俺はニュースで時折、塵魔による事件の存在を知り、そして塵魔を退治する者が対魔師と呼ばれていることを知った。

 

「俺のこの力、人のために使えないかな。俺も対魔師になりたい」

「わかったですにゃ! 早速最上位のSSクラス対魔師として認定を...」

「いや、いいよ。俺は俺の実力で這い上がる。生きなり最上位的なのに行ったら、反感買いそうだしな」


 そうして対魔師になってから一か月。活躍に活躍を重ね、目立ちすぎだと思って力を抜いた時には時すでに遅し。俺はSSランクの第三位まで上り詰めていた。

 

〇〇〇


「そういえば高校生活を送ってなかったな。失った高校生活を送りたいもんだ」

「わかりましたにゃ!」

 

 そうして編入させられたのが、名井斗学園(ないとがくえん)。


「きゃー! 夜(ナイト)クラスの方々よー!」

「なんて麗しいのかしら!」

「きゃー! こちらを見てくださいましたわー!」

「あ! あの方は最近編入された、最近頭角を現してきたというアヤタカ様ですわ!」

「なんて勇ましいのでしょう! あの手で一体どれほどの塵魔を屠られたのでしょうか!」

 

 俺は頭を抱えた。

 なんでもこの学園はとんでもない金持ち学校。昼クラスと夜クラスに分かれ、昼クラスは完全に女子のみ。夜は男女混合だが、男の割合が多い。

 そして夜クラスは、最上位のクラス。現役かつ最上位の退魔師が所属しているらしい。そのうち大半が妖怪か、半妖だ。

 

 帰宅し、俺は自宅でも頭を抱えていた。

 

「何がご不満ですかにゃ?」

「身分を隠して普通の学生生活送りたかった。ちょっとキャーキャー言われるのも昔憧れたが、今となっては疲れるだけだ...」

 

 それに、別に俺は顔が良い方じゃないのに、なんであんなキャーキャー言われるんだ。


「あれですにゃ。あまり顔が良くない設定だった主人公が、漫画が長期化すればするほど漫画家の手癖でどんどんイケメンになるあれですにゃ」

「よくわかんねぇ」

「まぁ、多くの戦いを超えた貴方からは、きっと強さ的な何かがあるんですにゃ。きっとそれに惹かれるんですにゃ」

「わかんねぇ」


 でも、普通の学園生活を送りながら、対魔師をするってのも難しいのかもしれないな。


「あーあ、せめて面白い友達でもいればなぁ」

「学園の方はお気に召さないですにゃ?」

「夜クラスはなんか高尚な感じの奴多くてなじめないし、昼クラスは女子ばかり、それもお嬢様的な人ばかりで、なんというか、対等に話せる奴が居ないんだよなぁ...そうそう、女子であれば、この前あったあいつらとかなら...」


 俺が目覚めてから4か月。その間に出会った、ちょっと興味深かった3人が居た。

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