女の子にモテたいと願ったら転生特典として【魅了】スキルを貰ったから可愛い女の子……ではなく、魔物に使おうと思う

シャルねる

魅了?冷静?

 気がついたら、俺は何も無い白い空間に立って……無いな。

 視線は立ってる感じなんだけど、あれだ。体がないんだ。

 え? どういう状況? というか、なんで俺はこんな状況なのにこんなに落ち着いてるんだ?


『目が覚めたようですね』


 そんな疑問を頭……は無いけど、頭に思い浮かべていると、そんな声が聞こえてきた。

 頭の中に直接、だ。

 目が覚めたって表現でいいのか? 俺、体も頭も何も無いけど。

 というか、やっぱり俺はまだ冷静だな。


『単刀直入にお聞きしますが、あなたは転生か消滅、どちらを望みますか?』


 えーっと、何を言ってるんだ? そもそも、どうやって返事をしたらいいんだ?

 仮に頭の中で思うだけでいいのなら、どう考えても転生一択なんですけど?


『そうですか、では、あなたにスキルを授けます。どのようなスキルを望みますか?』


 普通に思考を読まれてるっぽいな。

 えっと、それでスキルだったか。

 ……うん。女の子にモテたいな。女の子にモテるようなかっこいいスキルでお願いします。


『では、あなたには魅了チャームのスキルを差し上げましょう。では、元気に生きてくださいね』


 え? いや、ちょっと待っ──




​───────​───────​──────




 そうして、次に気がつく頃には、俺は誰かのお腹の中から生まれたばかりの赤ん坊になっていた。


「カリン様、立派な男の子でございます。直ぐにノルド様を連れてまいりますね」


「えぇ、えぇ、お願いするわ」


 今世の俺の母親は産まれたばかりの俺を抱きしめながら、涙を流してメイド? にそんなお願いをしていた。

 言葉が分かるのは大きなアドバンテージだな。

 知らない言葉を一から覚え直しとかだったら、本当に地獄だった。

 というか、なんで俺は未だにこんなに冷静なんだ。

 あの空間だからだと思ってたが、もうあの空間にはいないし、転生だぞ? 俺だって男だ。もっと興奮するようなものじゃないのか?

 

「では、僭越ながら、私がお子様のスキルを確認させ頂きますね」


 そんな疑問を頭の中に思い浮かべていると、俺の父親……ではなさそうな白衣の男が入ってきた。


「あぁ、早くしてくれ」


 その男の後に、多分、俺の父親が入ってきて、白衣の男に向かってそう言っていた。

 ん? 待てよ? 今、スキルの確認って言ったか? ……俺のスキル、魅了だぞ? 不味くないか? 自分のスキルになってしまったものではあるけど、あんまり良いイメージは湧かないぞ? 魅了スキルって。

 

「では、鑑定」


 そんな俺の願いも虚しく、白衣の男は一言、そう言った。


 名前:ミシュレ・ヴィクトア

 スキル:冷静

 ユニークスキル(隠蔽状態):魅了


 すると、俺の目の前にそんな情報が現れた。

 ……何これ。てか、俺生まれたばっかりなのに名前があるんだな。……どっちが名前だ? ヴィクトア? ミシュレ? まぁ、どうせ時間が経てば分かるだろうし、それは別にいいか。


 それよりも、問題はスキルの方だな。

 冷静……このスキルのおかげで、俺はずっとこんなに冷静だったのか。

 それも分かった。次はユニークスキルの方だ。

 声に言われた通り、ちゃんと魅了だな。

 

 これ、別の意味でやばくないか? 

 よく分からないけど、隠蔽状態って書いてあるし、多分、見えてないんだと思う。

 つまり、今ここにいる人たちからしたら俺のスキルは冷静とかいうものだけだってことになるんだろ? めちゃくちゃ無能じゃん。いや、この世界のことを俺はまだ全然知らないから、案外普通の可能性もあるけどさ。


「チッ、やはり所詮は平民の子供か」

 

 あっ、やっぱり俺無能に見えてるっぽいわ。


「ま、待ってください! ま、まだ、魔法や剣の才能がある可能性も……」


「スキルが無いも同然の子供だ。そんなもの、あるわけが無いだろう」


 俺の母親の言葉にそんな返しをして、父親は部屋から出ていってしまった。


「……大丈夫、だからね、ミシュレ。私が、私がいるから」


 母親は普通にいい人っぽいことが唯一の救いか。

 というか、俺の名前、ミシュレの方だったんだな。

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