エピローグ
夏休みが終わってから2ヶ月が経った。私たちは飽きもせずに、変わらない毎日を過ごしていた。少しは体力もついてきて、夜ご飯の支度を手伝えるようになったが、その分寝る前のそれが激しくなってしまい、単純に喜んでいいのか分からない。それでもそれを拒む気にはなれないのが恐ろしいことだった。
今、お姉ちゃんは買い物に行っていて家にいるのは私一人だった。前は普段の食事の買い物には二人で行っていたが、最近は私が行為の後、ぐったりして動けなくなっている間にお姉ちゃんが買い物を済ませる流れになっている。お姉ちゃんはできるだけ私を外に出したくないらしくそうしているのだ。
今日もお姉ちゃんにたっぷり愛され、しばらく動けずにいた。動けない間、忍さんに私たちの関係が知られたときのことを思い出していた。あんな風に忍さんにばれる予定ではなかったものの、いつかは言わなければいけなかったので良かったのかもしれない。いや、そんなことないか。結局お風呂での私の声は少し忍さんに聞こえていたようだったし、忍さんが帰る時もとにかく恥ずかしかった。他の人にそう言うことは言わないようにと釘を刺したが本当に大丈夫だろうか。
あれからもちょくちょく忍さんは家に来てくれる。もちろん連絡をくれるようになったから行為の最中に来るようなことはなくなったのだが、いつも来るぎりぎりまでお姉ちゃんにされるので困ってしまう。少し前まで人に言えないことをしていたので恥ずかしくて俯きがちになってしまい、忍さんにひどいことされていないか心配されてしまう、そんな日常だった。
ようやくある程度動けるようになったので、残っていた家事をすることにした。洗濯物の取り込みや掃除などが終わり一息ついていると、ふと考えてしまった。私、何かお姉ちゃんの役に立ってるのかな、と。お姉ちゃんが私のことを愛してくれているのはもう疑いはしないけど、ずっとかは分からない。このままじゃ、愛想を尽かしてしまうかもしれない。
そんな時、玄関の扉が開く音がした。お姉ちゃんが帰ってきたんだ。こういうことは一人で抱え込まないようにしようと約束したことを思い出し、お姉ちゃんに話す機会を探る。そうして、片付けなどが一段落したところで相談を持ち掛ける。
「私さこのままでいいと思う?」
「逆に何がだめなの?」
「このままじゃお姉ちゃんがいないと生きていけないの。いや、もう離れるつもりはないんだけどさ、お姉ちゃんに頼りっぱなしになっちゃう」
私が不安に思っているのに、お姉ちゃんはなぜか笑顔で『それでいいじゃない』と言ってくる。
「私だってお姉ちゃんを支えたいの。お姉ちゃんは私に何でもくれるけど、私はお姉ちゃんに何もしてあげられない」
そう言うと、お姉ちゃんは何も答えず立ち上がり、私の方に歩いてきて、そのまま私を正面から抱きしめる。
「貴方がいるから、私は頑張れるの。貴女が生きていてくれるだけで、それだけで私は嬉しいのよ」
「でもこのままじゃ、お姉ちゃんの負担が大きいよ」
「そんな風に思うのなら、そうね……華は私をずっと愛してほしいわ。そして、中学を卒業したら、家から出ないで私以外の人とは極力関わらないでほしい」
「卒業したらでいいの?」
「ええ、今そうしたらきっといつか後悔するでしょうから。卒業までの間によく考えてほしいの。ちゃんと納得できたら、その時は一生二人でいましょう?」
「……うん、分かった」
何かあった時のために、私も働いたりした方がいいのかと思ったけど、考えを改めよう。きっとそれは逃げだったのだ。だって、お姉ちゃんが失敗するとは思っていないのだから。私は、一人になっても生きられるように逃げる道がほしかったのだろう。だからそれはもうやめた。これからは何があっても、お姉ちゃんをずっと愛してずっと一緒にいよう。そう心に決めた。お姉ちゃんは『いい子ね』と言いながら、そんな私の頭を撫でてくれた。
「じゃあ、お姉ちゃんの期待に応えられるように頑張るね。今はお姉ちゃんがしてばっかりだけど、これからは私もお姉ちゃんを気持ちよくしてみせるから」
決意を固めてそう宣言すると、より強く抱きしめられる。流石に苦しくなったので、緩めてもらおうとすると、お姉ちゃんはパッと離れてまた私を持ち上げる。そのまま寝室に向かっていくので、慌てて抗議する。
「ちょっとお姉ちゃん。午前中もしたでしょ? あんなにしたのにまだするの?」
「そんな可愛いこと言われたら我慢できないわ。貴女が可愛すぎるのがいけないのよ」
訳の分からない理屈で私の抗議は却下され、今日もお姉ちゃんにされるがまま骨の髄までぐちょぐちょに溶かされてしまった。中学卒業したらこれが毎日になってしまうかもしれないことを思うと、幸せすぎて逆に怖くなってしまう。いつかは私もこんな風にお姉ちゃんを愛してあげたいな。
何とか気は失わずに済んだので、満足気な表情をして横に寝転んでいるお姉ちゃんに話しかける。
「ねえ、お姉ちゃん。今、幸せ?」
「もちろんよ。華はどうかしら?」
「うん? もちろん私も」
何度もやり直して、ようやく掴んだ幸せを逃がさないようにお姉ちゃんを抱きしめた。もう離したりしないし、離れたりしない。私たちは何も言わずに目を合わせると、少しずつ近づき唇を重ねた。それは初めてのときと何ら変わらない、何度やっても色あせることのない、甘い甘いキスだった。
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