浮気されたくないなら。。。

エリー.ファー

浮気されたくないなら。。。

「浮気、されたくないんだけど」

「分かるよ。その気持ち、マジで分かる」

「どうすればいいの」

「要はさ、その人の最後の相手になれればいいわけでしょ」

「そう」

「殺せば」

「本気で考えてよ」

「いや、分かるよ。でも、本気で考えれば考えるほど、それが結論になっちゃうよね」

「いやいや、そんなことないでしょ」

「相手の、どういう所が好きなの」

「何が」

「何がって、そのままだよ。相手のどういう特徴が好きなの」

「え、カッコいい所とか」

「他には」

「まぁ、イケメン」

「他にもあるでしょ」

「背が高いし、優しいし、笑顔が可愛いし、あと、趣味がサーフィンで、仕事もできるし」

「そういう人って、その気になれば浮気できるわけでしょ」

「だから、そういう人にどうやったら浮気しないでいてもらえるか考えてるの」

「無理でしょ」

「無理って」

「だって、相手の自由を奪うってことだよね。それ、普通の人は了承しないと思うよ」

「そんなことないでしょ」

「いやいや、それが普通だって。自由に振舞えるのに、自由に振舞わないで下さい。基本的に、こちら側の都合ですけれど、どうぞよろしく。そういうことでしょ」

「まぁ、そうかもしれないけど。でもさ、世間的にも浮気ってよくないじゃん」

「どこの世間よ」

「どこって」

「それを気にしない社会に行っちゃったら、浮気することの罪悪感なんてなくなるから、結局、一番自分を自由にできるコミュニティに行っちゃうだけなんじゃないの。で、そのコミュニティにあんたは付いて行けるほど魅力的なわけ」

「では、ない」

「ていうか、浮気しないヤツなんて腐るほどいるじゃん」

「まぁ、いるけど。その、違うじゃん。そういうことじゃないじゃん」

「いや、そういうことじゃん。全部、そういうことじゃん」

「だって、それだと恋愛した感じがしないっていうか」

「浮気って恋愛の一部だよ。そんな当たり前のことも知らないの。浮気している側も浮気された側も恋愛してるじゃん。ちゃんと恋愛できてるよ、良かったじゃん」

「えぇ、そういうことじゃないからさ。そういう恋愛じゃなくてさ」

「要はさ、浮気されたくないけど、浮気できないような男とは恋愛したくないわけでしょ」

「そ、そう」

「じゃあ、浮気される前に殺すしかないじゃん。それか、浮気できないような不細工に整形させるか、仕事をやめさせて金銭的に依存させるか、もしくは、追い込んで鬱病にしたりパニック障害を発症させたりしてから誠心誠意支えて精神的に依存させるか、でしょ。たぶん、マジでこれくらいしかないよ」

「どれも大変そうなんですけど」

「じゃあ、殺そうよ」

「殺したら恋愛できなくなっちゃうじゃん」

「浮気してるって確定した時点で殺せば、もうこれ以上悲しまなくて済むでしょ」

「それは、浮気されてるっていう現実が生まれた上での対処法でしょ。そういうことじゃなくて、浮気されたくないの」

「付き合わない」

「え」

「付き合わないようにする」

「恋愛できないじゃん」

「好きな人が誰かと付き合ったら、直ぐに近づいて体の関係を持つ」

「どっ、どういうこと」

「浮気相手になれば、恋愛できるし、そもそも本妻じゃないんだから浮気されているわけでもない」

「それは、その。えっ、どうなのかな、それ」

「今のあんただよ」

「えっ」

「あんた、自分を本妻だと思ってるでしょ。違うよ、あんた、本当は浮気相手だよ」

「嘘でしょ」

「嘘じゃないよ。マジで既婚者だよ」

「いや、そんなわけないって」

「子ども、いるよ」

「そんなわけないじゃん」

「ゴールデンウィーク、会えなかったでしょ」

「うん」

「奥さんと子どもとピクニックに行ってたらしいよ」

「いやいや、ちょっと、ちょっと待ってよ」

「だから、浮気されてないよ。良かったじゃん」

「良くないよっ。全然っ、良くないっ」

「なんで」

「いやっ、だって、凄く単純でささやかで当たり前の幸せを願ってるだけだよ。浮気できるような男が、一切浮気せずにこっちを心から愛してくれて、かつ、自分は浮気相手側じゃなくて本妻側で余裕を持って恋愛を楽しみたいって、だけの話だよ。何がいけないの。変な望みじゃないよね。普通の恋愛をしたいって、そう言ってるだけなのに。なんで、こんなに傷つかなきゃいけないわけ。おかしいよね。なんで、こんなに社会ってこっちに厳しいのかな。ここまで傷ついてあげてるのに、それでも立ち向かって勇気を出して恋愛をしてるのに、浮気する男がいるなんておかしいよね。絶対に変に決まってるよね」

「たぶんだけどさ」

「うん」

「あんた、恋愛しない方が幸せになれるよ」

「いやいや、恋愛してる時が一番幸せなの」

「それ、勘違いだよ」

「そんなことないって」

「恋愛をしたいの、幸せになりたいの、どっちなの」

「えっ」

「どっちなの」

「まぁ、幸せになるために恋愛をしてるけど、確かに、今、不幸にはなってる。でも、恋愛をしたい気もするし、なんていうか、その」

「恋愛したいなら、浮気されるのも恋愛の内だから許容するべきでしょ。幸せになりたいだけなら恋愛以外の手段も取るべきだよ」

「なんで、そんなに厳しいことを言うの」

「これを優しいと思えないから、あんたって恋愛も下手だし、幸せにもなれないんだよ」

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