着席
路草藍
第1話
「やっぱり、すごく綺麗な声をしているね。私の後ろにきてもらおうかな。」
中学最後の合唱祭に向けて気合の入った女子と、つられるように練習に励む男子。ここぞというときに団結力があると評判のこのクラスに、私は未だ馴染めずにいた。パート別にそれぞれピアノを囲みながら、パートリーダーに従いソロ歌唱をしていく。この時間が早く終わって欲しいと祈ったが、神様はいない。自分の順番がきたので和を乱さぬように一節歌う。無遅刻無欠席、勉強が特別できるわけではないが真面目な生徒。それが私だ。歌い終わったところで、パートリーダーのリナがそう言った。ありがとう、と返してリナの後ろに立つ。里奈に促されて次の子が歌い始める。
リナはクラスのマドンナだ。綺麗な顔立ちをしていて、成績も学年で10番以内、芸術センスもあり絵画コンクールで入選もしていた。もちろん歌も上手いのでパートリーダー、教師からの信頼も厚いこのクラスの学級委員だ。まさに非の打ちどころのない優等生。これほど優秀なら、もうすこしいやなやつになってもよさそうなのだが、朗らかで親切な人だ。短所といえば、少しだけ運動は苦手だったが、そんなところもかわいらしかった。彼女を嫌いな人なんて居なかった。
「特別賞 3年F組」
舞台の上で嬉しそうに賞状を掲げる里奈へ拍手を贈りながら、このクラスでよかったと初めて思った。
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