序章 業火転生變(一) 新免武蔵 5
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夜の巷で三、四人にヤクの話題を出すと、すぐにジミーの居場所は分かった。
普通であれば三十半ばのおっさんには警戒するはずの若者たちが、鹿賀にはそんな素振りをまったく見せない。
それは彼の容貌があまりにも厳つく発散しているオーラが凶暴で、どうみても素人や警察関係者には見えないせいであった。
ジミーは半グレや不逞外国人で溢れかえっている、いかにも怪しい〝バロックGUN〟という名の店に居た。
「薬が欲しいってのはアンタかい」
暗いフロアにチカチカとした照明と閃光のようなフラッシュ、そして絶え間なく流れる煩い音楽の中に立っていた鹿賀は、後ろから不意に声を掛けられた。
振り向くと二十三、四歳の長髪に、サングラスを掛けた男が居た。
ボーイは〝凄い危ないヤツ〟と言っていたがどこといってほかの若者と大差のない、普通のワルにしかみえない。
「ああ、本当に手に入るのか。ここんとこ切れちまって、どうにも頭がおかしくなりそうなんだ。薬の種類はなにがある、金ならあるぞ」
そういって鹿賀はズボンのポケットから無造作に十万以上の札を取り出し、ジミーの目の前で振ってみせる。
「なにが欲しい、ヘロイン、クラック(コカイン)、MDMA、シャブ、何でもあるぜ」
ジミーはサングラスを外し、品定めするように鹿賀の全身を眺め回す。
醒めた虚無的な細い目をしていた。
〝こりゃ、ホントに危なそうなヤツだな。平気で人を殺しそうだ〟
鹿賀はそう思いながら、ニヤリと笑みを浮かべる。
ジミーの中に自分と同じ臭いを感じたのだ。
〝こいつぁ、あっさりと殺っちまうに限るな。
この時点で、すでに鹿賀の考えは決まっていた。
「シャブに決まってる、合成モンなんざガキのやるもんだ」
「ふへへ、この辺じゃ見かけねえ顔だな。あんたはぐれ極道のシャブ中かい、その年じゃ食うにも困ってるんじゃねえか。シャブ
からかうように言う。
「うるせぇ、お前になんの関係がある。金さえ払やあ文句ねえだろ、早く出しやがれ」
鹿賀が怒鳴る。
「しょうがねえ親父だな。気をつけねえと、アンタそのうち死んじまうぞ。ブツは別の場所にある、連いて来な」
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