青春したいDKは、美少女JKを認めない。
酒向ジロー
第1話 体育館裏で男二人が・・・・・・
季節は夏を目前に控えた六月、梅雨の気配を感じさせる湿度の高い日々は多く学生たちの悩みの種になっていた。
体の不調、セットした髪型の乱れ、野外の運動部による不満などなど、大多数の学生から嫌われるこの時期はどこかネガティブな言動が、どことなく僕の体は機嫌が良さそうだった。
おそらく僕の属性は水であり、こういう湿気の多い日は体調がよくなるのだろう。
なんてことはさておき、僕は今、どういうわけか体育館裏の人気のない場所でクラスメイトに壁ドンされている。
「好きだっ!!」
突如として体育館裏に響く大きな声に、周囲にある木々にいた鳥たちが騒ぎながら飛び立っていった。なんなら遠くの方でどこかの飼い犬が「ワンワン」吠えている声も聞こえた様な気がした。
ともあれ、今しがた「好きだ」と口にしたのは、とても美しい顔立ちをしたクラスメートの「来栖くるすダンテ」君だった。
青みがかった癖のある黒髪と、男らしく育ったのど仏から発せられる声は、体中に響いてくるほど気持ちの良い声だった。
身長も僕より大きく、このまま包み込まれてしまうそうなほどに思える体格差を感じていると。来栖君は恥ずかしそうに顔を背けながら再び口を開いた。
「なんで、お前はなんでわかったんだっ」
「え、なんでって何の話かな来栖君?」
「いや、だからさ、なんで俺がその、好きなことを・・・・・・」
何やら口ごもる来栖君は、そのまま黙り込んでしまった。しばしの沈黙、体育館裏に響くのは鳥のさえずり、どうやら再び木に戻ってきたらしい。僕はその声にぼーっと聞きほれた。そうしていると、来栖君が三度口を開いた。
「『とざんぶ』のことだっ」
その単語を聞いただけならば普通の人は、登山?部活の話?という疑問が頭に浮かぶことだろう。しかし、僕にはその言葉がある種の隠語的なものであり、彼の言いたいことが手に取るように分かった気がした。
「うん、来栖君のリュックについてるピッケルの形をしたキーホールダー、あれって美少女が登山をするアニメ『とざんぶっ!?』の公式グッズだよね」
「ほ、他には」
「他って、なに?」
「他には、何か気づいたことはあるか?」
「うーん、来栖君が今白シャツの下に着ているTシャツのイラストは、討伐アクションゲームの「スカイビーストハンター」に出てくる武器でしょ、かっこいいよね」
「そうだっ、他にはっ」
幾度となく何かを確認してくる来栖君は、これが最後とでも言わんばかりに僕に体を寄せながら真剣な顔つきで見つめてきた。
「あとは、間違ってるかもしれないけど・・・・・・」
「大丈夫だ言ってくれっ」
「左手薬指に着けているシルバーリングは、ラブコメアニメの「絶対好きになんてならないっ」に出てくるツンデレヒロイン「銀名竹かぐや」をイメージしたペアリングだよね。確か公式の限定生産グッズで超レアで高価な奴だったと思うんだけど」
「そそっ、そうだぁっ!!」
ついに来栖君は僕の肩をつかんできた。そして、何を思ったのか彼は僕を思いきり抱き締めてきた。
「え、ちょ、あの」
「心の友よ~~~」
まるで、どこかのガキ大将の様な言葉を口にした来栖君は、しばらく僕を抱きしめてきていた。その力は強く、わずかに痛みを感じるほどのものだった。
はてさて、一体全体どうしてこんなことになったかというと、それは数分前にさかのぼる・・・・・・
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青春したいDKは、美少女JKを認めない。 酒向ジロー @sakou_jiro
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