第2話

「おはよう、千冬。本日も長峯君と仲良く登校?」


「なんだいその含みのある言い方は。ご近所なだけですが……」


 教室に入ると、ニヤニヤしながら肘をつつかれる。隣の席の彼女とは高校生になって初めて出来たお友達で、早くも名前で呼び合う中になりました。とても可愛らしいお顔をしている彼女は、はるちゃんこと美晴さん。

 可愛い女子高生とはこういう方をいうのだ。適度なスカート丈に適度な着崩しに、適度な髪型。う〜ん彼女にしたい!


「ふうん? でも購買、今日も行くんでしょ?」


「うん。今日はあっちが奢りです」


「いつもお弁当持ってきてるのにねえ? 千冬と毎日購買行って」


「足りないからと言ってたです」


「それこそ、お弁当の中身増やしてもらえばいいのに、毎日購買行くより。お弁当毎日持ってきてるのにさ。やっぱ口実だって。千冬と一緒に行く為の」


 可愛いし彼女にしたいけれど、私はこの手の話題は何か気恥ずかしいから苦手です! こういう話がお好きな所も女子高生ですね!


「いや、購買のパンが美味いから弁当とは別に食いたいと言ってたです」


「何か変な敬語になってるよ〜? 毎回わかりやすく動揺しちゃって可愛いんだから! やっぱ二人両想いだと思う!」


 戸惑っているだけです! 長峯とはそんなんではないです! 幼馴染なだけです!

 ていうか泣かしたし昔。あっちも私をいじってたからな。お互い大人になったんだよ。


「いやいや、お互い成長しただけだよ。あいつは私をめちゃめちゃにいじってからかってたし、私はそれにムカついて泣かしたし」


「幼馴染からの……う〜ん王道。王道こそ良いみたいな所あるわよね」


「あの、話を聞いて?」


 そんな話をしていたら、チャイムが鳴った。どうにもはるちゃんは私と長峯をそういう括りにするきらいがある。恋バナ好きよな。取り敢えず話が途切れて安心。

 先生が教室に入ってきた。よし、昼休みまで頑張ろ。



 眠たかった授業を潜り抜け、遂にお昼休み。わざわざ迎えに現れた長峯と教室を出た。見送ってくれたはるちゃんすごい笑顔だったな……。 


「何食う?」


「メロンパン買ってー。焼きそばパンとカレーパン自分で買うから」


「はいよ」


 比較的早く来れたので人はそこまでいなかった。目当てのものを買って、私達は教室へと戻る。私は自分の席へと座り、長峯は私の前の席に腰掛ける。前の席の人は、長峯と委員会で一緒らしい。


「さあ食べよ食べよ。ハァン、はるちゃんのお弁当今日も可愛い。足りるの?」


 隣で広げられたはるちゃんのお弁当は、今日も小さくて可愛い。


「私あんまり食べれないからさー。千冬こそ足りるの? いつもより少なくない?」


「今日、ばあちゃん来るんだってよ。いつも会ったその日はまず喫茶店とか店に入るから控えてると見た」


 はるちゃんの疑問に答えたのは私ではなく長峯。どうだ合ってるだろと言わんばかりの得意顔が小憎たらしい。ちげぇわと言いたいところだけど大体当たりです。


「長峯君、よく知ってるねぇ」


 またはるちゃんの含み笑い。人の事で何故かドヤってた長峯は恥ずかしくなったのか、はるちゃんの視線から逃げるように顔を背ける。


「べ、別に? 昔からこいつわかりやすいし、俺もこいつのばあちゃんに誘われてご馳走になった事あったから、特にそんなこいつに詳しいとかないし」


「何を焦ってんだよお前は」


「うるせえ!」


「仲良いよね、二人」


 そう見えますかね? 錯覚だよはるちゃん。

 まあ長峯の言ってる事はその通りだ。学校帰りとか、待ってくれてるおばあちゃんと一緒に店とか行くし、たまたま一緒に話しながら歩いてた長峯をおばあちゃんが「相変わらず仲良しなのね。一緒にいかが?」と誘ったのも本当だし。 


「もう一緒に食事はしてるのね……」


 深い意味はないですよ美晴さん。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る