合コン行ったら魔法使いがいた
七転
第1話 合コン行ったら魔法使い(?)がいた
魔法。
現代日本に暮らしていて、この存在に憧れなかった人はいるのだろうか。
小説やマンガ、アニメなどファンタジーで描かれるそれは派手で豪華で鮮やかで、夢を叶えられるものがほとんどである。
一般社畜の俺が魔法に憧れていたのは何年前だったか、まさかこんな形で目にするとは思ってもみなかった。
眠れないのは、魔法を見たからでもその神秘に意識を持っていかれたからでもない。
単にあの挑戦的な表情に心の一部を確かに奪われてしまったからだ。
遡ること数時間、俺は友人に連れられて合コンに参加していた。
なんでも2対2で会う予定だったところ、先方が1人追加で連れてきてくれるらしいとのこと。
たまたま定時退勤予定だった俺に声がかかったって訳だ。要は人数合わせ。
久しく彼女なんていない、というかプライベートで女性と話すなんていつぶりだろうか。
金曜日夕方の繁華街。普段は真面目な顔して働いているであろう大人たちが、今だけは少しだけ気を弛めて往来を闊歩している。
連れられて入ったのは建って日の浅いビル。エレベーターも新築の匂いがする。
「今日ってどんな人が来るんだ?」
一応同僚に尋ねておく。俺は2人が楽しく飲めるようサポートしなければ。
「社会人で俺の妹の知り合いらしい、3人とも美人らしいぞ。期待しとけよ幾野〜!」
肩をばしばしと叩いて楽しそうに話す彼。というか妹いたのか。
俺たちを乗せた鉄の箱はすいすい階を上がっていく。
やがて軽快な音とともに扉が開くと、そこには薄暗いお洒落なイタリアンが待ち構えていた。
もうお相手は到着しているようで、挨拶もそこそこに中へと入った。
テーブルには軽いおつまみと乾杯のスパークリングワイン。
この小鉢だけで1,000円弱するんだから資本主義ってすげぇよな。
男性3人女性3人で向かい合って座る。
ワインを口にしながら自己紹介。確かに3人とも顔が整っていて、金曜日の夜だというのに疲れを感じさせない。
自己紹介は粛々と進んでいくが、一際目を引いたのが対面に座る彼女。
「月ヶ瀬です。普段は……デザイナーやってます」
透き通るような白い手を動かしてペンで何かを描くフリをする。
見間違いだろうか、一瞬パチパチッと静電気が彼女の周りを弾けたような気がした。
左肩に流した髪はつやつやと輝いて、まるで星座を映したかのようにレストランの照明を反射している。
指をくるくると回すと、グラスに入ったマドラーがひとりでに指に合わせて動いている。
たぶんその瞬間は俺しか見ていないだろう。
「内緒ね」
しーっと彼女は人差し指をぷっくりとした真っ赤な唇に当てる。
ウィンクしながらこちらを見据えた目には、まるで漫画やアニメのエフェクトのように星が散っていた。
◎◎◎
こんにちは、七転です。
はじめましての方ははじめまして、そうでない方はいつもありがとうございます。
設定が空から降ってきたので書いてみました。
ゆったりもたもた続けていければいいなぁと思います。
3作品同時更新なんてできるんか……?
どうぞよろしくお願いします!
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