第18話 感染症
波乱軍を征伐したアルド皇太子が戦地の後始末を終わりリマ皇都に凱旋したのは、戦いが済んで1か月後だ。
凱旋した時はリマ皇都の住民が総出で出迎え、街にはお祝いの横断幕が張られ紙吹雪が舞い大歓迎ぶりだ。
見ていると、馬の上で歓迎する住民に手を振るアルド兄さんは顔色が悪く気分が悪そうで心配だ。
皇宮に着いた時はふら付いて俺が駆け寄り支えて。
「アルド兄さん大丈夫ですか?」
「大丈夫だ。少し疲れているだけだ」
それから1人で歩いて元気そうにしていたので長旅で疲れていたのだと思ったのだ」
だが祝勝会の準備をしていると戦地から帰ってきた数百人の兵士たちが、高熱が出て嘔吐して苦しんでいる。
アルド兄さんも高熱を出し嘔吐を繰り返している。
俺は前世が医者なので何らかの感染症は分かるが、高熱だけならインフルエンザかも知れない。
顕微鏡がないので嘔吐を繰り返すのは何の感染症か調べられない。
患者は毎日増え続け多くの死ぬ人も出ている。
感染するので俺は陛下に言い、非常事態宣言と外出禁止令を出して住民を家から出ないようにして、戦地に行った兵士たちを隔離した。
その一方で離宮の薬剤室で熱と嘔吐に効く薬草と疲労回復を混ぜて、ポーション作りを始めた。
俺がポーション作りをしていると、リズが駆けつけて驚いている俺に。
「私にも手伝わせて下さい」
俺は外出禁止令が出ているのに思わず大きな声で。
「今どんな感染症が流行して死人も出ているのが分からのか! 感染したならどうするのだ」
見るとリズはこの世界にないはずのマスクをしていて。
「大丈夫です。塩水でこまめにうがいをして手洗いもしてマスクをして感染予防はバッチリです」
俺はマスクを指差し。
「マスクと言う言葉と何故、感染症の予防に効くと誰に教わったのだ」
リズは
「しまった」
と言い黙ってしまつた。
暫くしてリズは。
「すみませんでした。えーと・・・・黙っていましたが私は両親にも話せないことがありまして・・・・えーと・・・・やっぱり話さないといけませんか」
リズが前世の西洋の諺を知っていて、今度はマスクだ。どうやらリズも地球の世界の記憶を持っているみたいだが無理に聞くと嫌だと思い。
「今は話さなくて良いが、結婚する時までには話してくれないか」
「はい、気持ちの整理がついたなら正式に婚約するまで話します。約束します」
「分かった。両親には許しを得て此処に来たのか」
舌をペロリと出して。
「エッヘヘー、両親は反対しましたが無理やり出てきました」
見た目は綺麗でお淑やかな令嬢だが無鉄砲でお転婆なお嬢さんだと思ったのだ。
そう言えば前世の妻の瞳も美人だったが子供みたいなところがあり、お茶目で結構お転婆だった。
リズが持ってきたカバンからマスクを出して。
「はい、此れを付けてね。離宮にいる皆にも渡してくださいね」
何と手作りのマスクを500枚も渡してくれたのだ。
それから俺のポーション作りを手伝い質問をしてポーション作りを学んでいる。
その晩にアルド兄さんの容態が急変したとの連絡があり、急いで駆け付けたがすでに亡くなっていた。
俺はポーションを効くか試さずに早く届ければ良かったと後悔したのだ。
通夜の席で小さい時に俺を高い、高い、をしてくれた事や遊んでくれたアルド兄さんを思い出し涙が止まらなかった。
葬儀はこんな状況なので簡素に行われ寂しかった。
俺の作ったポーションは感染症の熱は下げたが余り効果はなく死亡者は皇都の住民が2万人にも上ったのだ。
外出禁止と手洗い、うがいを指導し1年後には感染症の流行も収まり正常な生活に戻ったが、自分の無力さを痛感して、この世界の医学を進めなければと誓ったのである。
当然、皇太子が亡くなったので次の皇帝になる皇太子に誰がなるのかで争いが起きないか心配だ。
順番から言えばイルマ第2皇子だが政治には関心がなく芸能や芸術に力を注ぎ女遊びが好きな変わり者で到底、皇帝には向いていないだろう。
やはり以前はダマス公爵と組んで問題を起こしたがウイル第3皇子が1番有力候補に違いない。
最も決めるのは陛下で陛下も今年で69歳になるので周りが早く皇太子を決めろとうるさいだろう。
俺は皇帝になる気はないが争いがなく無事に次の皇太子が決まれば良いと思っている。
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