第5話 皇子として2



 離宮での始めての晩、ベッドに入ると前世の飛行機事故の事を思い出した。


 結婚したばかりの妻、瞳とは結婚式の前に籍を入れて戸籍上は夫婦になっていた。


 結婚式が終わると披露宴はアメリカで行うために直ぐに飛行機でアメリカに向かったのだ。


 だがその飛行機の車輪が出ずに胴体着陸に失敗し機体は爆発して炎上した。


 俺は妻の瞳を庇って覆いかぶさると彼女は。


「死んでも来世で一緒になるわ」


 その言葉が最後で俺は意識を失いこの世界に転生したのだ。


 初夜も迎えず結婚したばかりの愛する妻の瞳は奇跡が起きて生きていれば良いが・・・・。


 こればかりはどうしょうもなく、瞳の生きている事と幸福を願うばかりだ。




 次の日、目を覚ますと侍女のアヤノが待機していたのか、部屋に入ってきて元気な声で。


「おはようございます! お目覚めですか。着替えをお手伝いいたします」


 そう言うと俺の寝間着を脱がせて裸にして着替えさせてくれている。


 物心ついた時から侍女が裸にして着替えさせるのは当たり前で、最初は恥ずかしかったがこれも皇子として当たり前の事なので今では慣れて侍女のなすが儘にしている。


 着替えが終わると食堂に行き食事を終わり食後のコーヒーを飲んでいると、執事のシモンが。


「リオン様、今日から剣の稽古を始めます。私は以前騎士団長をしていたので剣は私が教えます」


 シモンが騎士団長をしていたのは知っていたので。


「剣を習うのは初めてだが、宜しく頼む」


 庭にある訓練場に付くとシモンは今までと違い厳しい表情で。


「リオン様、今からは私が師匠で貴方は弟子です。皇族はいつ暗殺者や反乱者から狙われるかもしれません。自分の身を守る武術を会得して頂く為に厳しくしますが根を上げないでください」


「分かった。死なない程度に厳しくしてくれ」


 シモンが最初に剣の振り方の手本を見せてくれて、俺が見ていると何故かスローモーションに見える。


 シモンの真似をして剣を振るとシモンが。


「リオン様、剣を誰かに教わりましたか?」


「いや、剣を振るのは初めてだ。体力つくりは自己流でしていたが、シモンの真似をして剣を振り下ろしただけだ。おかしいか?」


 シモンは首を傾げながら。


「では、今日から千回剣の打ち込みをしてください」


 俺が剣の打ち込みを始めると最初は見ていたが宮殿の中に戻ってしまい。


 俺は千回と言われたが2千回剣を振り続けて終わると、側にいたアヤノがタオルを渡してくれて。


「シモンさんに言われた倍は剣を振りましたね。初めてなのに大丈夫ですか?」


 俺は5歳の時から前世の医者としての知識を使い骨の成長を妨げない体作りをしていた。


 そのお陰で見た目は細いが筋肉質の身体で10歳の今は身長が160cm体重55kgで同じ年齢の男子よりも大分大きい。


 剣の素振りが終わり少し休憩して体力作りの為に庭を走り始めると、アヤノも俺と並んで走り始めている。


 1時間ほど走ったがアヤノは信じられない事に最後まで一緒に走り、平気なので不思議に思い。


「アヤノは体力があるな。何か訓練をしていたのか?」


 アヤノは思いがけない事を話して。


「私の家系は代々皇帝の直属の諜報員の家柄で私は7歳から訓練を受けていました。この度、陛下よりリオン様を暗殺者から守るために侍女として配属されました」


 

いやー! 驚いたぜ!


 まさか可愛い顔をしたアヤノが諜報員の訓練を受けとは・・・・・・。


 そう言えば陛下には17人の皇子が生まれている。だが殆どが5歳になるまで病気で死んだが、何人かは5歳を過ぎてから暗殺者に殺されているらしい。


 次の日に剣の素振りをしているとシモンが大人の女性を連れてきて。


「リオン様、紹介します。この女性はS級冒険者で此れから魔法の指導をいたします」


 女性は此の世界では身長が高く175cmはあるメリハリのある体で目は少しきつく、長い金髪を後ろで括っている。その女性が。


「リオン様、初めてお目にかかります。アタシはS級冒険者のリンダと言う。この度魔法の教師として教える事になりました」


 少し怖そうなお姉さんだがS級冒険者と言えばこの大陸でも10人もいない実力者なので挨拶をして。


「余はリオンだ。よろしく頼む」


「剣の素振りを見ていたが訓練を初めてどのくらいだ」


「昨日から始めたばかりだ」


 リンダはシモンを見て。


「本当か?」


「本当です」


 リンダは何故か驚いているが俺は何故、驚いているのか分からなかった。


 俺が2千回の素振りを終えると最後まで見ていたリンダが。


 「リオン様がどんな魔法を使えるか調べる。最初は指から水を出すように念じて「「水よ噴き出したまえ」」と言いなさい」


 俺は王室の図書室で魔法書を読んでから毎日、魔力量を増やす訓練と人のいない場所で魔法の練習をしていた。


 指から水を出すのは簡単なので指から水を出すと水は物凄い勢いで吹き出しあたり一面が水浸しになったのだ。


 リンダは驚き慌てて。


「止めてー! な、何なんだ! それも無詠唱だと信じられん」


 シモンとアヤノも驚いている。


 リンダは次に火の魔法、風魔法、土魔法などを使えるか調べて終わるとため息をつき。


「ふうー! リオン様は化け物か。普通1つの攻撃魔法を使える者は100人に1人なのに水魔法、火魔法、風魔法、土魔法の4つも使えるとは・・・・・・S級冒険者のアタシでも火と水魔法しか使えないのに」


 俺は言語翻訳、鑑定魔法、空間魔法も使えるがこれ以上驚かしたくないので言わずにいたのだ。



 確かにリンダが言う通り、この世界の人間は魔法を使えるが大概の人は薪に火をつけたり、飲み水を少し出す生活に使う生活魔法が殆どで。


 戦いに使える攻撃魔法を使える者は一握りなのだ。見せた魔法は4つだが、本当は7つなので化け物と言って驚くのも無理がないだろう。



 強い魔法を使える人は俺と同じ青い瞳の人が多くその他の瞳の色の人は生活魔法だけの人が多い。


 だから貴族たちはできるだけ青色瞳の相手と結婚するのが普通だ。



 稀に青色以外の瞳の人の中にも強い魔法を使える人がいるらしい。



 結局、次の日から午前中は剣の訓練、午後から魔法の訓練をすることになったのである。

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