第22話 魔法使いの独り言
魔法使いに会ったのです。
あのとき、星光る夜に、僕は魔法使いと会ったのです。
その魔法使いは、僕の願い事をひとつ叶えて消えました。
魔法のような、不思議な夜でした。
嘘つきと言われました。
魔法使いなんているわけがないと、そう言われました。
でも、居たのです。魔法使いは本当に居て、僕の願いを叶えていったのです。
彼は、僕のヒーローだったのです。
嘘つきと言われました。
何度も何度も、そう言われました。
そうして誰も、僕の言葉を信じなくなりました。
悔しくて悔しくて、泣いた月の見えない夜に、僕は悪魔と出会いました。
僕は、見返したかったのです。
あの流れ星のような奇跡が、嘘ではないと証明したかったのです。
あの日、僕は、自分の名前と引き換えに、花の名前を貰いました。
浮かれた僕は、これで証明できると、信用を取り戻せると、呼び出したみんなの前で魔法陣を描きました。
歪で、下手くそで、読めもしない、楕円の魔法陣でした。
気付いたら、僕以外はみんな、倒れこんでいました。
痛い、と。
友達だった誰かが、立ち上がれず、すすり泣いていました。
暴発したのだとわかったのは、もう少し大人になってからでした。
魔法使いに成ったのです。
あの時、星陰る夜に、僕は魔法使いに成ったのです。
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