おとなしい君と激しい俺

@MikuNan99

第1話 ピンクとダークとホワイトな奴ら

ここはある少年の彼女の家。その家からは何やら異様な雰囲気が漂っていた。

ネット掲示板による書き込みによると、深夜その家の前を女が一人で歩いていると突然立ち止まり、家に吸い込まれるように入っていくらしい。そして二度出てくることはない。

「ここです。ここで僕の彼女が消えました...」

「うっわすっごいな!黒いやばめな妖気がプンプンしてるぜオルタ」

薄いピンク色の女は嬉しそうにもう一人に語り掛ける。

それを見て少年はムッとする。

「私汚れたくないからお願いね」「へいへーい」「本当に大丈夫なのか?(小声)」

黒く長い髪をなびかせた女は噂の扉の前に立ち、扉のドアノブに手をかける。

ガチャガチャ。ドンドン....。バァンッ!

「拒否られてやんのW」

「はあ」

黒髪女は扉の戸に今度は手を当てる。

「通さないならこっちから」

そう呟く女の手をもう一人の女がつかみ上げる。

「こういうのは社交性だよオルタちゃん。そんな怖い顔してちゃ、ドアのスコープ越しに見てるお相手さんもびびっちゃうよ!」

「じゃ。あなたが行け」

「そういうとこだぞ」

女はさっきコンビニで買ったパ〇コの片方をちぎり、ドアのポストに入れ込む。

そうすると開かずだった扉がギシギシと音をたて、開いた。

「なんでこれで開くのよ...。さっさと契約のしたほうが手っ取り早いわ」

「シェアハピ!ってやつだよ」

中の様子を確認。

なんということでしょう、玄関の向かう先はまるで黒いペンキでもぶちまけたこのようにまっくらではありませんか。

「ああ..!ユメちゃん!ユメミちゃーん!」

その闇に少年の不安はますます煽られていく。

「あら、これは」

「相当ため込んだもんだな...、とりま行ってくるわ」

「ユメミはちゃんは大丈夫なんですか!?」

「いちいちうるせえな!男なら強気に構えとけよ!チンコあんのかてめぇ!」

ピンク紙の女は玄関前に立ち、腕と首の骨を鳴らす。

「オルタは外を頼む。私は元凶を叩く」

そういうと女は闇の中へ消えていった。


家の中は異様だった。

扉を開けるとまた同じ部屋。

同じかと思うと血のようなものがべったりついていたりと。

同じ空間がコピーされそれが断片的につながっている。

まるで迷路のようだ。迷路とは必ず出口という終わりがあるからこそ存在する。

だから人は進むしかない。止まって考えだしたら、またすごく怖くなってしまう。

「うーん血の匂いはすんだけどな。同じ部屋ばかりで感覚が鈍る..」

そこで女はピコン!っと何かを閃いた。

「きゃああ!ここどこなの~!うわ~んかえれないよ~」

まるで幼女のような弱弱しいロリボイスを家の中で叫んだ。

ギシ..ギシ..。何かが近づてくる音が聞こえる。

そして どたどたと階段を猛スピードで降りてくる音に変わる。

こちらに近づいてくるのがわかり、次の瞬間には次に進むドアが勢いよく開く。

「子供の肉だぁ..ラッキー!」

そこから肉だるまのような化け物が飛び出してきた。

そいつは大きな口をあけ女に飛び掛かり、

「Me Too,,,( 強運だぜ... )」

女は負かってくる化け物を回し蹴りで吹っ飛ばした。

勢いよく転がりまわる化け物とコキッと首を鳴らす女。

「なんだ..この力は。貴様、まさか同類か?」

「え、いやいや違うって。あんたみたいな美食家じゃないよ、私サキュバスだから」

「サキュバスだと、まさか世間で噂されているあの依頼所のゼラか!」

「そうそう!」

ゼラはうんうんとうなずく。

「じゃあ 殺すね」 「ハッ、ほざけ!妖魔ごときが!」

化け物は自慢の大きな口で噛みついてくるがゼラはそれをヒョイヒョイかわす。

かわした動きに繋げ、手に鋭い爪を生やすと化け物の顎の肉を切り裂いた。

「あがぁあ!」

「おいおい、今まで食った分が無駄になっちゃうぜ。もっと頑張んないとなぁ!」

そして蹴りを思いっきり奴の歯にぶち込んだ。

壁にたたきつけられた化け物はもう動けないようだ。

「さ...最後に望みをきいてくれないか」

「いいぜ。言えよ」

懐からとりだした銃を化け物に突きつけながらゼラは応答する。

「おっぱいをもませてはくれないか。できればよう..」

「言うなわかった。とっとと終わらせろ」

ペタ。バン!

「....よし終わった。この野郎装飾品まで食いやがって」

その時だった。

突如、家全体がぐらぐらと大きく揺れ始めた。

「やっぱこの空間の迷路はこいつのしわざじゃねぇよな」


一方そのころ外では。

同じように家が大きく揺れていた。

「な、なんですかこの揺れ!?」

「念だよ。それも恨みのね」

「ね、ねん...?」

「今までこの家で食いちぎられた女性達の念の塊が今この家から解放されようとしてるのよ」

「解放されたらどうなるんですか?」

「簡単よ、この家みたいな現象が他の一般家庭でも起こるの。それも無尽蔵に」

すると家は一部が形を崩し、中から大きな人の形をした黒い塊が現れた。

アアアアアアアア!と咆哮を上げ、黒い体のいたるところには充血した目玉。

その一つがグリンと少年と女を見た。

ウギャアアアアアアアア!と再び咆哮を上げ、こちらに向かってくる。

少年は気を失いかけていた。

黒い怪物と少年の間にオルタは素早く入り込む。

そして空を見るように顔を少し上げ、呟いた。

「 かるた 」

次の瞬間怪物の体は一瞬で薄い紙のようにバラバラ切り裂いた。

その余波で周りにも大きな衝撃が走り、家もろとも怪物は完全に崩壊した。

「任務....完了ね」

「クールに言ってんじゃねぇ!私も中にいるんだからもう少し丁寧にやれよ!?」

「ごめんなさい、相手が恐ろしくてつい。それより早く帰りましょう」

「あ~まてまて、帰る前に少し」

ゼラは気絶している少年に近づき、安物のネックレスをそばに置いた。

「なあオルタ、こいつの契約は今回は保留ってことでいいんじゃねぇか?」

「は?じゃあ多々働きってこと?」

「ふっ...」

ゼラはポケットからジャラジャラと被害者達の装飾品を取り出し、オルタに見せる。

「これ全部売って飲みの足しにしよー!」

「でかした!」

そういうと二人はその場から離れていった。

少年と崩壊した現場を残して。

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