第19話 アジト

 ―――――「なぁ、もう、自分を許してやれって」


 男の声がする。


 レナルドの声だ。


 レナルドは剣士を目指し、一緒に修行をした仲間だ。


「許すって……」


 セルティスはレナルドをじっと見ている。



「おまえは、守れなかったって、後悔してるんだろ? そして、今の仲間を守れるのか、本当は不安なんだろ?」


 レナルドはニヤリと笑っている。


 セルティスは黙っていた。何故、そんなことを言うのだろう?


「おまえは優しいからな。人のことばかりで自分は後回しだ。でも、もっと頼ってもいい。ホークを頼れ」


 レナルドはそう言って去っていく―――――

 

「!?」


 セルティスは飛び起きた。


(夢か……)


 セルティスは額に手を当てて、頭を整理しようとした。


「ホークを頼れ……か」


 セルティスは、何故、夢にレナルドが出てきたのか、ホークを頼れと言ったのか、考えた。


 その時だった。


 ホークが声をかけた。


「怖い夢でも見たか?」


 セルティスは首を横に振った。


 ベッドから起きて顔を洗う。


 冷たい水が気持ちよかった。


 頭を冷やしてくれる。


「ホーク、昨日はありがとう」


 セルティスはそれだけ言って、出かける準備をした。


 セルティスたちは、再びシオルの街を調べ始めた。


 すると、アジトらしきものを見つける。


 レビーはセルティスとホークの様子を見て、アランに話しかけた。


「あの2人、上手くいきそうなんだけどな。2人とも気づいてなさそうだしな」


 アランは頷く。


「そうなんだよな。なんでだろ」


そんなことを言いながら、アジトを見つけたセルティスとホークについていく。


 アジトはビルにあるみたいだ。


 ビルの中に入っていくと、そこは誰も使ってないようで、埃だらけだ。蜘蛛の巣も多かった。


 ガサガサ


 何かの音がする。モンスターかと思ったら、蜘蛛がセルティスの足元に現れた。


「うわっ!!」


 セルティスは逃げるようにして、蜘蛛から離れる。


 ホークは珍しいなと思いつつ、セルティスがホークの後ろにピッタリとくっついてきて、驚いた。


「えっ? セルティス、もしかして……」


 セルティスは呆然とした。


「……悪かったな……昆虫苦手なんだ」


 そう言って、すぐホークから離れる。が、蜘蛛はしつこくセルティスの周りをうろうろする。


「あっっ……!!!」


 セルティスは蜘蛛から逃げ回っている。


 その時、ホークが軽く踏み潰して、セルティスの目に触れないところに持っていった。


 アランもレビーもクスクスと笑っている。


 ホークはニヤリとしている。


「へぇ、セルティスも可愛いところあるじゃん」


「うるさいっ」


 セルティスは恥ずかしくなって、ズカズカと先に進んでしまう。


 セルティスはビルを隅々まで調べながら、何かの気配を感じとる。


 すると、


 真上からセルティスを狙って飛びかかってきた。


 セルティスは咄嗟に横に飛び、攻撃をかわした。


 コウモリ型モンスターだ。100匹くらいか。


 コウモリ型モンスターは、一斉にセルティスを襲う。


 セルティスは、ラグナロクで横なぎに斬っていく。


 炎がコウモリ型モンスターを包む。


 コウモリ型モンスターは、あっという間にセルティスに倒された。が、さらにセルティスに狙いを定めて襲ってくるモンスターがいた。


「っ!!」


 セルティスは反応が遅れた。それでも、冷静に対処しようと息を吐く。


 その時だった。


ハイスピードでセルティスの前に現れ、爪が肩を貫こうとしていた。


「!?」


セルティスの目には追えないスピードだった。もうかわすには遅い。

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