女剣士セルティス

綴玲央(つづりれお)

1章 セルティスと仲間たち

第1話 女剣士セルティス

 グロリアルという賑やかな街が一変したのは急激だった。


 数分前までは人が溢れ、ショッピングや散歩などで楽しんでいた。人々の笑顔が絶えなかった。


 なのに、今は荒れている。


 建物は建物は破壊され、人々は次々と倒れていく。


 人々の悲痛な叫びが響いた。


 街を襲ったのは、人間型のモンスターだ。人間に飛び かかり噛み付く。


「逃げろー!!」


「きゃあああ!!」


 逃げ遅れて食べられてしまう人間もいた。


「ママぁ!!」


 少年の泣き叫ぶ声。少年の泣き声が人間型モンスターに聞こえてきた。


 人間型モンスターは何匹いるのだろう。100匹はいるだろうか。


 その1匹が泣き叫ぶ少年の方に向かってくる。人間型モンスターは少年に噛みつこうと飛びついた。


「助けてー!!」


 少年が叫んだ時、人間型モンスターは倒れた。


「怖かったな、あたしから離れるなよ」


 人間型モンスターを睨みつけて言った。


 その声は女性だ。


 女性の名をセルティス・ガーデンという。


 金のウェーブのかかったロングヘア―。ヘッドバンドをして前髪が垂れないようにしている。


 瞳の色はターコイズグリーン。


 セクシーで美人系の女剣士だ。

 

 少年は、セルティスにしがみついている。


「よく頑張ったな。あとはあたしに任せな」


 セルティスは剣を構えた。セルティスの剣はラグナロク。朱玉しゆぎょくがはめ込んである。この朱玉から炎を発生させることができる。


 セルティスは周りを見て、ざっと確認する。


「ざっと100匹くらいか」


 フーッと息を吐くと、ラグナロクを大きく振る。ラグナロクは炎の剣と化し、一気に100匹くらいの人間型モンスターを倒した。

 少年の顔がパァーッと明るくなった。


「お姉ちゃん、凄い」


 セルティスは少年の頭を撫でて、笑顔を向けた。


「もう、大丈夫だ」


セルティスが去って行こうとした時、少年の母親らしき人物が声をかけた。


「あの……」


 セルティスは振り返る。


「最近、物騒だから気をつけてな」


 優しく言った。

 

 母親はお辞儀をする。


「ありがとうございます。あのお名前を」


 母親が尋ねる。セルティスは少し困惑した。


「名乗るほどの者じゃないよ」


 背を向けて、バイバイと手で合図した。



母親と少年はまたお辞儀をして、セルティスの背中が見えなくなるまで見届けた。

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