核の雨のち晴れ

雨宮 徹

核の雨のち晴れ

 少し長く眠りすぎたようだった。つけっぱなしのテレビからアナウンサーの声が聞こえる。



「今日の天気は核の雨でしょう。みなさん、今日もシェルターでお過ごしください」



 果たして、天気予報に価値があるのだろうか。数週間前に第三次世界大戦が始まり、核戦争になって以降、天気はずっと核の雨だ。つまり、俺はシェルターにこもるしかない。



 今日はライトノベルでも読んで暇を潰すか。しかし、シェルターにあるものだけで過ごすのには限界がある。食料の備蓄はあと一ヶ月が限界に違いない。そもそも、備蓄が尽きる前に、俺は自暴自棄になり狂ってしまうかもしれない。



 さて、今日はどこまで読み進められるかな。そう考えていた時だった。



 アナウンサーの手元にサッと臨時ニュースの原稿が差し出される。



「みなさん、臨時ニュースです! なんと、核の雨を止めるという大発明が開発されたそうです! そのロケットは明日空に打ち上げられ、核の雨を止めると同時に、地上の核汚染をも洗浄するそうです!」



 核の雨を止める発明! もし、それが本当なら、シェルターでの生活もあと少しだ。今日はゆっくり過ごして、明日に備えよう。





 翌日、俺はワクワクしながらテレビ中継を見ていた。



「いよいよ、ロケットの打ち上げ時間になりました。カウントダウンが始まっています!」



 アナウンサーも嬉しさのあまりに珍しく早口になっている。



 カウントダウンが終わり、ロケットが打ち上がる。そして、雲を突きつけると、数秒後に天から一筋の光が差し込む。久しぶりの太陽光。俺にとって、それは希望の光だった。



「みなさん、地上の汚染は数時間後に終わります。それまで、外に出るのはお控えください」





 数時間後。俺はシェルターの重い扉を開けた。地上への階段をのぼりきると、明るい日差しが辺りを包み込む。



 久しぶりの太陽。これほどまでに晴れが嬉しかったことはない。



 今回の核戦争で、政治家たちも懲りただろう。核戦争なんてバカバカしいと。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

核の雨のち晴れ 雨宮 徹 @AmemiyaTooru1993

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

同じコレクションの次の小説