第6話 盗賊と女海賊6

 ジャックは仕事の依頼を受けて盗賊を、セイラは海賊仲間を殺した奴を捕まえるため、いつの間にか、一緒になって手掛かりになるものを考えていた。


 気がついたら夜になっている。


「もう、こんな時間か……」

 

 ジャックは時計を見て驚いた。


「あっ……」


 セイラもジャックの声に時計を見る。


「そういや、セイラ、飯食べてないんじゃないのか?」


「えっ……あぁ……」


「ほらっ、おにぎり」


「えっ?」


「やる。食べないと、力でないぞ」


「でも……」


「いいって。ほら、食べな。もうひとつあるから」


「ありがとう」


 ジャックはセイラにおにぎりを渡すと、もうひとつ、おにぎりを取り出した。


 どこでおにぎりを調達したのか、セイラは疑問に思いながら、一口。


「美味しい。おにぎり、どこで調達したんだ?」


 疑問をぶつけると、ジャックは笑顔を向けた。


「あぁ、お昼に飲食店に頼んで、作ってもらってたんだ。俺、家がないし、いろんなところ行くから、簡単な食べ物を常備してるんだ」


「そうなんだ」


「セイラもそうだろ? 船で過ごすこと多いだろうし」


「まぁ。でも、船で調理していたことが多いな」


「へぇ、料理するのか?」


「私はあまり料理得意じゃないから、作ってくれることが多いけど、簡単なものなら……」


「じゃあ、今度、作ってもらおうかな」


「はぁ? なんで?」


「食べてみたいから」


「なんで、私が……意味がわからない」


セイラはおにぎりを食べながら、ジャックに呆れていた。


 ジャックとセイラは、おにぎりを食べ終わると、再び、手掛かりが何かないか、考えた。


 ジャックは、セイラと真剣に手掛かりのことを考えていて、おかしくなった。


 いつのまにか、セイラも打ち解けている。


「あっ!」

 

 セイラが何か思い出したようで、急に声を上げる。


「どした?」


 ジャックは少し驚いた様子で、セイラを見る。


「いや、海に投げ出されたとき、2人の声が聞こえた。ひとりは聞き覚えのある……」


 言いかけて、セイラはハッとする。


「聞き覚えのあるって……まさか……」


 セイラは、額に手を当てた。


「どうしたんだ?」


 ジャックは再び訊く。


「キラ……かもしれない……」


「キラ……?」


 ジャックは聞き返す。


「私の仲間だ。ただ、海に投げ出されたとき、キラの声がしたような気がしたんだ。楽しんでいたような声が……」


「えっ……?」


「キラともうひとり……もうひとりとキラが笑っていたんだ……! 仲間の死を見ながら。もうひとりは……」


 ひとりごとのように、ボソボソと言うセイラ。


「セイラ?」


 ジャックは手を振って、セイラに気づかせる。


「あっ! キラと一緒にいた奴! もしかしたら、奴に剣を奪われたのか!!」


「なんだって?」


「確か……キラは一緒にいた奴のこと、イルっていってたような……」


「イル……!? イルって俺が受けた依頼人が言ってた盗賊……」


「えっ?」


 今度はセイラが聞き返した。


 ジャックは、手掛かりが繋がったような気がして、喜んでいた。


「セイラ! 一気に片づけられるかもしれないぞ」


 興奮してセイラの肩をポンと叩いた。


「えっ? どうしたんだ? 急に」


 セイラはキョトンとしている。


「あっ、悪い。ゆっくり休めないよな。回復したら、そのキラっていう奴とイルを探すぞ。そして、セイラの剣も取り戻そう」


「えっ……あぁ……うん……」


 目星がついたところで、ジャックとセイラは、落ち着いたのか、眠ってしまった。


 ジャックは、ベッドでうたた寝、セイラはベッドで体を起こしたまま。


 今日はいろいろなことが起こりすぎて、あっという間の1日だった。そのため、疲れてしまったのだろう。

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