第2話 盗賊と女海賊2

 リドルの街を探し歩くジャック。


 こんな真夜中に人などいない。いるとしたら、悪さをするような人間だ。


 まともな人間ならば、寝ている。


 といっても、ジャックも、真夜中に歩いているのだから、怪しい者だと思われても仕方ないのだが。


「ふわぁぁぁぁ~」

 

 ジャックは大あくびした。


「眠いっ!!」


 誰もいない中、ひとりで叫ぶ。声が響く。


「どうせ、リドルの街に着くまでに時間かかりそうだし、今日は寝よう!」


 そう言って、木の陰に隠れて、木に背を預けて座り込む。


 腕を組んで、顔を伏せて目を閉じる。


 しばらく、幼いころのジャックと盗賊仲間が、家族のように食事をしている場面が頭に浮かんでいた。


 しかし、数分後には完全に眠りについた。


 目が覚めたとき、既に日は昇っていた。


「んん~!!」


 のん気に背伸びをしてストレッチをする。


 辺りを見回して、河へと向かう。顔を洗うためだ。


「身だしなみは、ちゃんと整えないと、女の子にモテないしなぁ」


 他の人から見たら、何言ってるんだ、この人はと変な目で見られるだろう。


 ひとりで、女の子にモテない、なんて言っているのだから。


 河の水で、ガツガツと大雑把に顔を洗った。

 

 予想以上に冷たくて、身震いする。


「冷たっ!! こんなに冷たいとは……まぁ、おかげで目が覚めたから、いっか」


 ジャックは気を取り直したところで、リドルの街を探す。


 ジャックが依頼された仕事は、リドルの街に潜んでいる盗賊を捕まえること。


 ジャックは、盗賊でも、罪のない人間から物を盗むことはしないし、盗むのは、自分が不利な状態にあるときだけだ。


 普段は物を盗むことはしない。


 だが、ときには人の命を奪って、物を強引に奪っていく盗賊たちのせいで、ジャックも巻き込まれてしまうので、大迷惑だ。


「人助けするほうなんだけどなぁ……バカな盗賊たちのせいで、本当にメンツが丸潰れだよ」


 ジャックは呟く。


 そんな盗賊たちを排除することが、ジャックの仕事。


 パブで仕事の依頼を受けつける。


 お互いに条件が合致すれば仕事開始。


 ただ、中には、タダ働きさせられることもあるから、これだけでは食べていけない仕事だ。


 それでも、人助けをすることによって、その人たちが喜んでくれることが嬉しい。だから、この仕事を続けている。


 結局、あまり人もいなかったので、ほとんど、勘で、リドルの街に向かっていた。


 これが当たっていたらしい。


 看板を見ればリドルと書いてある。


「あぁ、ここなんだ」


 リドルの街は華やかで賑わっている。観光地みたいだ。


「へぇ……随分と賑わってるなぁ」


 お店もたくさん並んでいて、目移りする。

 

 飲食店からアイテム、武器屋まで様々だ。


 突然、グーッとジャックのお腹が鳴る。


「そういえば、何も食べてないな……」


 ジャックは何か食べようと、飲食店を物色した。


「ここ、良いじゃん」


 その飲食店は海を眺めながら、食事ができる。


 ジャックは迷わず、海を眺めながら食事ができる飲食店へと足を運んだ。


「いらっしゃいませ、お決まりになりましたら、声をおかけくださいね」


 高校生くらいの女の子が笑顔で声をかけて、水をくれる。


「おぉぉ」


 席に着くと、すぐに海が広がっていた。


 透き通った青色の水が日光を浴びて、光っている。


 しばらく海に見惚れていた。


 綺麗な海だ。


 ジャックは、高校生くらいの女の子店員に声をかけられ、ハッとする。


 完全に海に見惚れて、食べることを忘れていた。


「あっ、じゃあ、ステーキお願いします」


「わかりました。海、綺麗ですよね。ここの海は他の海とは次元が違うと感じますよね」


 女の子店員は、そう言ってメニューを下げた。


 海は本当に綺麗だ。汚い心が洗い流されていく。


 それに波の音も心地いい。


 きっと今日は穏やかな日なのだ。


 海では船が走っている。


 見ているだけで気持ちよさそうだ。


 やがて、注文していたステーキもきた。


 「美味しそう」


 鉄板の上で、ジューッとステーキが音を鳴らしている。ソースのいい香りもしてきた。


「美味しいな」


 ジャックは、ステーキを味わいながら、ゆっくりと食べている。口の中で肉汁が広がった。


 時間をかけて、食事を楽しんだ直後だった。


 海を眺めたジャックは、海の異変に気がついた。


 綺麗だった海が濁っている。


 食事後に、また海見て癒されようと思ったジャックは、ショックを受けた。


 透き通った青だった海は、あっという間に赤く染まっている。


 ジャックは支払いを済ませた後、事情を話して、そのまま、海へと飛び出した。


 砂浜には誰かが倒れている。


 近づいてみると、そこには驚愕する光景が広がっていた。

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