当時、三十路の不思議ちゃん
崔 梨遙(再)
1話完結:1000字
当時36歳の不思議ちゃんが言った。
「崔さん、私、メッセージを受け取れるようになったんです」
「メッセージ? どこから来るの?」
「宇宙からです」
「……」
「私、温泉地で運命の出会いがあるらしいんです」
「誰がそう言ったの?」
「宇宙からのメッセージです」
「……」
「じゃあ、行ってきます!」
不思議ちゃんは旅立った。
「運命の出会い、ありましたよ」
「ふうん、付き合ってるの?」
「いえ、どこの誰かもわかりませんので」
「どういうこと?」
「お客さんやったんですよ。後になって、あの人が運命の人やったんやなぁと気付いたんです」
「アカンやん、どうするの?」
「別の温泉地で再会できるらしいです」
「誰がそう言ったの?」
「宇宙からのメッセージです」
「……」
「それじゃあ、いってきます」
当時39歳の不思議ちゃんが温泉地から帰って来た。
「出会いがありましたよ」
「運命の人と出会えたの?」
「ああ、あの人は諦めました」
「別の男性?」
「はい、22歳の男の子です」
「まあ、付き合えたのなら、良かったやんか」
「え? まだ付き合ってないですよ」
「どういうこと?」
「彼が副業をやめないと付き合えません」
「副業って何?」
「AV男優です」
「……」
不思議ちゃん39歳は、倉庫の事務をしていた。
「職場で好きな人が出来ました。きっと、彼も私のこと好きなんです」
「なんで、彼があなたのことを好きだってわかるの?」
「仕事中、めっちゃ私のこと見てくるんですよ」
「ふーん、まあ、好きな人が出来て良かったやんか」
「私、彼に手紙を書いたので、聞いてもらえますか?」
「聞くくらい、ええけど」
「私とあなたは、前世で深い関係でした、私とあなたが結ばれれば、きっとものスゴイ化学反応が起きると思います……」
「いやいや、それは重いやろ、やめた方がええで」
「もう、渡しちゃいました」
「渡したんかーい!」
「職場の彼、きっと私の魂の片割れです」
「ふーん、片割れと出会えて良かったね」
後日。
「彼、奥さんと子供がいました」
「片割れやったんやろ? どうするの?」
「別の片割れを探します」
「え、片割れって1人じゃないの?」
「何人もいますよ」
「片割れなのに……?」
片割れを探し、日本中を飛び回る元気な女性だった。彼女が幸せになることを祈る。あ、もう今頃は幸せになってるかなぁ……。
当時、三十路の不思議ちゃん 崔 梨遙(再) @sairiyousai
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