第5話「機熟す」
-同時刻、イタタ川付近-
ピジョルコ「ん?向こうにも変化が出たな。
こちらもそろそろ出るぞ。」
ピジョルコの両脇にいるヤマイ、タイエルはそっと頷いた。
ヤマイはピジョルコの双子の妹であり、
兄の様な恰幅の良さはないが
鍛え抜かれた身体は得意の二挺の斧を振り回すのに適している様に見えた。
もう一方のタイエルは、南のマプチェから援軍の代表者である。
鷲鼻で、目が見えないほど堀が深く、
肩幅が広く、微動だにしない様は
まるでトーテムの様だった。
-アルバラド軍本営-
エレロがアルバラドに戦況を伝えた。
アルバラド「ヤナクナの言っておった向こうの首領が前線に現れたか。」
アマル「はい、神様。奴は突っ込むことしか脳がありません。」
アルバラド「エレロよ、ヤナクナの精鋭500はここに残しておく。
お前は後方から、我らを援護しろ。」
エレロ「かしこまりました。」
アルバラド「あとは突撃だ。」
おおお!アラバラド軍が雄叫びを上げた。
-現在-
「今日はここまでだ。
この話の続きは、また明日。」
ラウタロの母リカラエンは話を終えた。
ツルクピチュン「あの時フタウエ様が異変に気づかなかったら、
この地も手遅れになっていたかもしれないね。」
リカラエン「緑の鳥が群れて羽ばたいているのを目撃した者は皆に知らせるんだぞ。
自然の知らせが我らを導いてくれる。」
ラウタロ「分かったよ。母さん」
リカラエン「ところでラウタロ、その傷はどうした?
それが今日の集まりに遅れてきた理由か?」
ラウタロ「そうだよ。」
ラウタロの顔を見るリカラエン。
リカラエン「その面持ちの感じからすると、取るに足らないことのようだな。」
ラウタロ「ああ。」
リカラエン「ただ川に入って、
身体を浄化する事を忘れるなよ。」
ラウタロ達の元から、リカラエンが去っていった。
ナウエル「しかしお前の母さんは、何というか凛々しいなぁ。
エプレフ達が言ってた事も満更でもないかもな笑」
ラウタロ「あんまり笑えない冗談だな。」
ナウエル「はは。でもさ、ラウタロ母さんの事に関してはあれは悪口でないでしょ。
ラウタロの父さんの事は、悪口だったけど。」
ラウタロ「確かにそうか。
どうやら俺は、家族の事を言われると少し感情的になる様だ。」
ツルクピチュン「家族かぁ・・」
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