殺戮の少女は平和を望む

@nekonohirune

第1話 殺戮の妖精

様々な種族が生きるこの世界は、世界を治める神の座を巡りとてつもない戦いが繰り広げられていた。

原因は運命を司る神が消滅したからだ。

運命を司る神は、神界、魔界、精霊界、妖魔界、天界、人間界それぞれの世界を繋げる力を有していた。

しかし、なぜか突然運命を司る神が消滅した。

それのせいで全ての世界を繋ぎ止めることが困難になり、融合してしまった。

それからこの融合してごちゃごちゃした世界を統治するための『神の座』を巡り戦が始まった。

時には同胞と戦い、時には卑怯な方法で、血も涙もない時代だった。

その時代の戦いの中で「殺戮の妖精」と恐れられていた者がいた。

その者の戦いは、美しい金髪が虹色の光を帯びては軽やかに空を舞うきれいな妖精のようだった。

中には戦いということを忘れて、見惚れる者も出るほどに。

しかし、そのこととは裏腹に、軽やかに振られた剣はとてつもなく重く、光り輝く魔法は触れば塵になってしまう。

その事を知る者は皆、「殺戮の妖精を見かけたらすぐ逃げろ」と口を揃えて言う。

そんな美しく、恐れられている者は『フリージア』という少女だった。

フリージアは天神族と呼ばれる詩や芸術を好む温厚な種族だった。

天神族は寿命が永く回復力が高い種族であり、戦闘を好まない種族だったため、戦闘を好んだり、戦闘が得意だったりする者を異端者として嫌い、迫害した。

フリージアもそれは例外ではなかった。

フリージアは昔から高い魔力と身体能力、何よりも天性の戦闘の才を持っているがために家族や同胞から数々のいじめを受けていた。

必然的にフリージアは戦闘力が高い天神族が入る団体に入った。

中にはフリージアと同じ境遇の者達もいた。

しかし、その者達はフリージアを嫌った。

なぜなら、そこにいる者達は自分の得意な戦闘でさえ勝てないものがあると思い知ったからだ。

たまにフリージアの陰口を言ったりと実害はないがとてもフリージアと仲良くなれそうにない者達ばかりだった。

しかし、そんな中でも、フリージアを理解し助けて合える数名の友達がいた。

一人は病弱だったがとても詩が得意で人一倍に頑張り屋で頭が切れる美しい少女。

一人は元気で活発で戦闘が得意で同じく嫌われていたが、ずっと真っすぐ前を向き共に歩んでいた少女。

一人は族長の息子でありながら戦いの才を持って産まれてしまった仲間想いの少年。

他種族との戦いは毎回友達とペアを組み、戦った。

ある日、4人は誓った。

『この4人で争いを終わらせ、争いのない綺麗で美しい世界を見て回る。』

しかしその誓いは虚しく、果たすことができなかった。

その友達はその願いを果たす前に戦死してしまった。

片方の、共に歩んできた少女はフリージアと別行動中に罠に嵌められ心臓を突き抜かれて。

もう片方の戦いの才を持った少年は仲間を庇い深い傷と致命傷を受け、2人共フリージアの前で息を引き取った。

そして何年も戦は続き、仲間の思いを背負ったフリージアが神の座を巡って行われた他種族との戦いに勝った。

世界最強の『殲滅の妖精』はこの戦いをすぐにでも終わらせ、もうこのようなことが起きないようにと、神の座に就こうとした時、戦いで疲れ切っていたフリージアは、ずっと仲間だと思い、共に歩んできた病弱だった友達に不意に後ろから刺されて殺されてしまった───。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る