北方の脅威
しかし、帝国の繁栄は永遠には続かなかった。
西暦161年、ハドリアヌス帝が死去し、マルクス・アウレリウス・アントニヌスが新たな皇帝に即位した。
「ルキウス、北方のゲルマン族が再び動き出した。彼らの脅威からローマを守るため、君に将軍としての使命を与える」
マルクス・アウレリウス帝は、ルキウスにそう告げた。
ルキウスは、皇帝の親衛隊から軍の将軍へと任命された。彼の任務は、帝国の北の境界線であるハドリアヌスの長城を越えてくるゲルマン族を食い止めることであった。
「ルキウス将軍、ゲルマン族の軍勢が長城に迫っています!」
部下の声に、ルキウスは長城の最上部に登った。そこには、長城の向こう側で軍勢を整えるゲルマン族の姿があった。
「我がローマの平和を乱す者は許さない! ゲルマン族を撃退せよ!」
ルキウスの号令と共に、ローマ軍の弓兵たちが矢を放つ。ゲルマン族の軍勢が崩れ、悲鳴が上がる。しかし、ゲルマン族も反撃を開始し、長城に迫る。
「盾を固めよ! 槍で敵を迎え撃て!」
ルキウスの命令で、ローマ軍の盾と槍が壁となり、ゲルマン族の攻撃を防ぐ。しかし、ゲルマン族の数は多く、ローマ軍は徐々に押されていく。
「ルキウス将軍、援軍はいつ来るのでしょうか?」
部下の不安げな声が響く。ルキウスは歯を食いしばりながら、遠くを見つめた。援軍の姿は見当たらない。
「援軍は来ないようだ。ここは我々だけでゲルマン族を撃退する! ローマの栄光のために、勇気を持って戦え!」
ルキウスの声が、長城の上に響き渡った。
ローマ軍は奮闘したが、ゲルマン族の勢いは止まらない。長城の壁は崩れ始め、ローマ兵たちの疲労は限界に達していた。
「ルキウス将軍!」
ルキウスの親友であるカエサルが、血まみれになりながら彼の前に倒れ込んだ。
「カエサル!」
ルキウスは親友を抱きしめた。カエサルの体は冷たく、すでに息絶えていた。
「カエサル......」
ルキウスの瞳から涙が溢れ出す。親友の死を悲しみながらも、ルキウスは立ち上がった。
「ローマの栄光のため、カエサルの無念のためにも、我々は負けられない! ゲルマン族を長城から追い返すのだ!」
ルキウスの声が、悲しみと怒りに満ちていた。ローマ兵たちは、親友を失ったルキウスの姿に奮い立ち、再びゲルマン族に立ち向かっていく。
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