第4話

「オレンジデコイ?」


高速のサービスエリアでわたしはエージェントから説明を受けていた。

食堂の隅にあるテーブルで、自販機のうどんを食べながら。


今回の配達でつかうルート・時間について細かい指示があった。

わたしは2分で興味をうしない、相づちだけ打っていた。


「そうだ。オレンジデコイ」エージェントは言った。


「え? ああ・・・」


「わかるのか?」


「わかりますよ」


「じゃあ教えてくれ」


「ドラッグでしょ。どうせ」


「ちがう。それ以上さ」


「なんだっていいですよ。金さえもらえれば」


エージェントはニヤけた顔でうどんをすすった。

こいつは末端の人間だ。わたしと同じ。においでわかる。


「今回の仕事は特別だ」


「どこらへんが?」


「特別というより、特殊なんだ」


「はあ・・・」


「気を引き締めろ。今回のクライエントは大物だ。しくじったら死ぬぞ」


「そうですか」


エージェントはわたしをにらみつけた。


「なんなんだおまえ、さっきからその態度。酔ってんのか?」


「まだ・・・」


「まだ? まだってなんだ。じゃあこれから酔うのか?」


「そうじゃなーーそんなわけないじゃないですか」


エージェントが去ったあと、わたしはトイレに寄ってから車に戻った。

空気はつめたく、雲の流れは速くて、あたりをハチが飛んでいた。

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